2022年4月28日木曜日

不漁のイカを救う底引き網のイカ(分析センターを少し紹介)

 

2010年代から、集魚灯を利用して漁獲するイカの不漁が全国で報告されています。

 

原因ははっきりしていません。温暖化による水温の上昇、回遊経路での乱獲などが挙げられています。

イカは有用な水産加工原料ですが、ここ石巻でもイカを加工する加工場があり、原料の確保に苦労しています。

 

 

鈴木研究室(地域水産利用学)では、宮城県の沖合底引き網漁業協同組合から提供された深海魚(200メートル以深)を使って、「深海魚の有効利用」に関する研究を行っています。

底引き網の関係上、200メートルより浅いところで漁を行う場合もあります。そのとき獲れたのがヤリイカです。深海魚ではありませんが、200メートルより深いところでも漁獲されるときもあるため深海魚にもなります。

なじみのあるスルメイカとの違いは、エンペラ(魚でいうヒレの役割)が大きいところです。スルメイカは上部の先の方に小型で付いています。

 

解剖してみました。

外部の体形では雌雄の判別は困難ですが、真ん中と右側の個体の上部には、白色の細い糸状のものが束になっています。これは生殖器で、精莢(せいきょう)と言います。

精莢の中には精子塊を包むカプセルがあり、交接時、雄個体が雌個体に渡すと受精が成立します。この部位を食べると口腔内や胃に突き刺さり、痛みを感じることがあります。

 

 

 
食感試験機 棒を押し込んで硬さを計測

 

分析センターにて、食感試験機で硬さ、色差計で明るさ、鮮度計で鮮度を計測し、刺身でどのくらいの期間食べられるかの調査を行いました。

押し込んだときの、力の強さがグラフ化されます

分析センターは2号館の1階にあります

 

実は、底引き網は時期や水深を考慮するとイカの魚群にあたり、それらを漁獲することでかなりの量のイカを石巻魚市場に水揚げしてきました。集魚灯を利用して漁獲するイカ漁の不漁を陰でカバーしています。



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