2022年11月16日水曜日

狂暴そうな肉食深海魚を解剖しました

 

いきなりですが、問題です。この魚は何でしょうか?(正解は後ほど)

  1. クロムツ
  2. 本ムツ
  3. アカムツ
  4. 銀ムツ

 

鰓(えら)を解剖してみました。

鰓は水中の酸素を取り込む呼吸機能のほかに、餌を獲る機能もあります。

 

鰓の中の「鰓耙(さいは)」という部分を観察しました。

画像左側の白い部分です。鰓耙が密になっている魚は、小型のプランクトンを食べます。鰓耙が長く密でない魚は、魚のような大型のものを食べます。

今回解剖した魚の鰓耙は長く、密ではないので、魚食性です。

 

胃袋を見なくても鰓で食性が分かる良い例でした。

このような鰓の観察は、3年次の海洋生物学実習でも行いました。実習の様子を紹介した記事はこちら(動画あり)

 

 

 

 

さて、最初の問題の答えは・・・ 1番の「クロムツ」でした。

 

目玉が大きく、歯が非常に鋭く、口に指を入れると切れてしまうことがあります。

今回、#地域水産利用学研究室 で入手したのは小型のサイズですが、歯は鋭いです。深海魚であるため、身に脂を蓄え、浮力調整に使用しています。上質な白味に脂が乗った非常においしい魚です。

 

ちなみに、2番の「本ムツ」はムツ、3番の「アカムツ」はノドグロ、4番の「銀ムツ」はマジェランアイナメまたはメロという名前で販売されています。銀ムツの生息海域は南極付近です。



#地域水産利用学研究室 からピックアップ


2022年11月9日水曜日

【新種記載】度重なる奇遇。「イリエノギスピオ」

 

ヤッコカンザシ」「ホヤノポリドラ」に続いて、新種記載シリーズ第3弾。

 

初めてこの種と出会ったのは毎年夏に恒例としていた岩手県の小友浦での調査のときで、2017年8月のことでした。

初めて見つけたときは1個体しか発見されず、体も途中からちぎれていたので、スピオ科の一種であることしかわからなかったのですが、見慣れない形をしていたのでずっと気にかかっていました。

翌年2018年の8月の小友浦調査でも1個体が見つかりましたが、再び体が途中からちぎれていて正体はわからないままでした。

 

しかし、2019年の1月に新たな出会いがありました。

三重大学の先生から送っていただいた三重県英虞湾(あごわん)のサンプル中に岩手のものと同じ種であると思われる標本を発見したのです。

 

新種として記載されたイリエノギスピオ

 

このときに、この種はこれまで日本から記録されていなかった Atherospio 属に含まれる種であることがわかりました。

Atherospio 属の種はこれまでに世界から2種しか知られていなかったため、この2種と形態を比較してみたところ、いずれの種とも一致せず、まだ名前が付いていない種であることが判明しました。

 

2019年8月の小友浦調査では本種を見つけることができませんでしたが、その翌年の2020年8月には小友浦でまた1個体が採集されましたので、DNAの情報を取得するための解析を行いました。

しかし、この時点で、岩手県と三重県で発見されたものが本当に同じ種であるかどうか疑問が残りましたので、2021年10月には英虞湾での調査を行い、調査の最終日ギリギリに採取された Atherospio 属の標本からDNA情報を取得した結果、岩手と三重で同じ種であることが確認できました。

そして翌月の2021年11月、別件の調査で訪れていた鹿児島県屋久島でも本種を思いがけず発見し、最も状態の良い標本を得ることができました。

 

このように、小友浦、英虞湾、屋久島と奇遇が続いたことで本種の標本やDNA情報、生息場所などに関する様々な情報を得ることができ、今年の8月25日に新種として発表することができました。

 


 

本種は、粘土・シルトと礫に富む静穏な入り江状の浅海域を好んで生息していると考えられることと、特徴的な芒(のぎ、イネ科植物の小穂の先端にある棘状の突起)状の剛毛をもつことから、和名は「イリエノギスピオ」、学名は Atherospio aestuarii(入り江の Atherospio 属という意)と名付けました。 

 


:イリエノギスピオの体前部側面(左が頭)。腹側に芒状剛毛が垂直に2列並ぶ(矢印)。

: 頭から5節目の断面。腹側の剛毛束に芒状剛毛がある(矢印)。



日本の海にはまだまだ多くの名前の付いていないゴカイの仲間が生息していると考えられます。

よくみかけるあの種も、「実は新種だった」ということがあるかもしれません。

国内の生物相や生物多様性を把握するために、そして、身近な海の生態系と生物多様性を守っていくためにも、今後も地道な分類の整理を進めていきたいと思います。

 

 

 

 新種記載シリーズ 

 

ベントス研ツイッター(写真や動画で研究室の様子を伝えています)

#海洋ベントス学研究室

 

ヤッコカンザシ

ホヤノポリドラ

イリエノギスピオ
 


2022年11月7日月曜日

二枚貝の持つ体を守るしくみの解明をめざして(東北大学、高橋計介氏による講演)

 

10月27日(木)に、第89回のライフサイエンスセミナーを開催しました。

今回は、東北大学大学院農学研究科・水圏動物生理学分野の高橋計介氏をお招きしました。

講演タイトルは「二枚貝の持つ体を守るしくみの解明をめざして」です。

講演後には、積極的に質問する学生の姿が見られました。

3年生は授業の一環として講演を聴講しました。そのときに書いてもらったコメントを3つ紹介します。 #学生の声


 学生のコメント 

  • マガキゲノムが解明されていて、しかも全遺伝子中32%が特有なものであるということが驚きでした。環境ストレスや感染応答に関する遺伝子がヒトより多く、それらを利用し生体防御機構を解明することでより良い養殖につながっていくのだなと学べました。
  • 牡蠣が病気に強くなれば、養殖が安定するためとても良いと思いました。応用すれば、逆に牡蠣を病気に弱くし、干潟での牡蠣床を防いだり、減らせたりするのではと思いました。牡蠣だけに限らず、魚類や植物においても健康の定義とは何なのか考えてみたいです。
  • どんな研究でも最初は小さな疑問点から始めて、そこから次の研究に繋げていき、研究の幅を広げていくことを学びました。




【関連ブログ記事】



2022年11月2日水曜日

深海魚の秘めた可能性 鈴木准教授が出演したテレビ番組がYouTubeにアップされました

 

 

鈴木英勝准教授(#地域水産利用学研究室)がミヤギテレビに密着取材されました。

10月25日、ミヤギ news every. 内の「情熱Labo」というコーナーに出演。深海魚の世界に情熱を傾ける様子が放送されました。

 

先日、その番組が日テレのYouTubeチャンネルにアップされました。町おこしへの可能性も秘めた深海魚研究、ぜひご覧下さい。

 

 【関連ブログ記事】 #動画 #深海魚の紹介

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