5月~8月の期間に #海洋ベントス学研究室 から3本の新種記載論文が発表され、3種の新種の多毛類(ゴカイの仲間)が記載されました。
どのような経緯で新種が発見されたのか、三者三様の新種発見パターンをシリーズでご紹介します。
普通種なのに新種?「ヤッコカンザシ」
ヤッコカンザシは日本で古くから知られているカンザシゴカイ科の多毛類で、潮間帯の岩などに石灰質の棲管を付着させて生息しています。
ヤッコカンザシには、「平均海面付近の潮間帯に群生する」という性質があり、本州中部以南の岩礁域ではしばしば 10~20 cm 四方を埋め尽くすほどの高密度で生息しています。
潮間帯の岩に密着して付着するヤッコカンザシの棲管(撮影:小林元樹研究員) |
ヤッコカンザシはこれまで、Spirobranchus kraussii という世界に広く分布する種であると考えられていました。
しかし、世界各地で Spirobranchus kraussii と呼ばれていた種には、実はよく似ているいくつかの種が混じっていることが近年の研究で徐々に明らかになってきていました。今回の研究では、日本のヤッコカンザシの形態とDNA情報をこれまで知られている種と詳細に比較することで、他のどの種とも特徴が一致しないこと(つまり、まだ学名が付けられていない未記載種であること)を示し、Spirobranchus akitsushima という学名を命名して新種として発表しました。
水中で花開くヤッコカンザシの鰓冠(撮影:小林元樹研究員) |
このように、普通にみられてよく知られた生物であっても、他の生物種と混同されていたために名前が付けられていないままであり、実は新種だったというのは、新種発見のよくあるパターンの一つです。
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