2026年10月9日金曜日

【3年次・動物学実習】組織を厚さ3 μmに 組織標本作製からRNA抽出までを体験

 

7月21日(火)、22日(水)の2日間、奈良英利教授(動物機能組織学)の担当で「動物学実習〜組織学〜」が実施されました。

今回の実習では、組織標本の作製からRNA抽出まで、実際に手を動かしながら基礎技術を体験しました。 

1日目の組織標本作製、2日目のRNA抽出の様子と、参加した学生の声をお届けします。 

 


1日目 組織標本作製実習

動物組織の標本作製は「切り出し→固定→脱水→包埋→薄切→染色」 という手順で行われます。

今回の実習では、組織を包埋してあるパラフィン(ロウのような物質)のブロックから、厚さ3 μmに切り出しプレパラートに貼り付ける実験と、既に貼り付けてある組織片に染色液で色をつける染色実験が行われました。



ニホンジカの骨格筋

最初にパラフィンを溶かす通称「脱パラ」という作業を行います。

キシレン、アルコールと順番に漬けていくことで、徐々にパラフィンが溶け、組織が水に馴染みやすくなります。染色液は水溶性ですので、この過程をいい加減にすると、染色液が組織の中に入っていきません。

 

「脱パラ」が終わったら染色です。

染色実験では、厚さ3μmに薄切されたニホンジカの筋肉組織が、あらかじめプレパラートに貼り付けてある状態からスタートしました。これはSAの大村 優翔くん(4年生)が準備してくれました。 

奈良研のスーパーエース
大村くんの日常の実験風景


今回は最も一般的な ヘマトキシリン-エオジン(H-E)染色を行いました。ヘマトキシリンで核を染色し、エオジンで細胞質を染めます。

しかし、それで終わりではありません。その後、脱水を行い、「透徹」という作業をします。これにより組織がよりクリアにはっきりと見えるようになります。もし、脱水がうまく行っていなければ透徹用のキシレンが白く濁り、最初からやり直しです。

 

そして最後に封入です。

ここまで頑張って作ったプレパラートを保護するためにカバーガラスを掛けて終了です。皆さん、せっかく染色したプレパラートですので、慎重に封入をしてくれました。観察は翌日です。

染色したプレパラートにカバーガラスをかけて封入する作業

田口育くん(左)、真剣そのもの
福田萌夏さん(右)の恐る恐るといった雰囲気
いいですねぇ〜 

はい、終了です
最初の無色透明のものと比べてみてください

 

染色では待ち時間が結構生じます。その間、同じ班の人に染色の作業は任せて「薄切」の体験です。

ミクロトームを軽やかに?
扱う及川美紀さんと見守る佐藤和歩さん

ミクロトームは数μm単位にスライスする機器
(いわば、超高精度なカンナ)

薄切なんて朝飯前の大村くん(右)に見られて(見つめられて)、
緊張気味に薄切を行う田口晃那さん(左から2番目)


この過程は完全手作業であり、いわゆる技術がものを言います。今どきのタッチパネルで自動的になどという甘い世界ではありません。みなさん四苦八苦しながらプレパラートを作ってくれました。

なお今日の染色実験のために大村くんはこれを40枚ほど準備してくれました。感謝です。



2日目 RNA抽出実習

昨今、なんでもキット化され、簡単な英語さえ読めれば(さらに日本語に訳してあれば)、動物の組織からRNAを取り出す作業は比較的簡単です(「如何に昨今のキットが優れているか」という意味)。ですが、それでは授業になりません。

 

今回はTrizolという試薬を使い、全てマニュアルで作業することに挑戦しました。

正確なピペット操作が求められ、さらに安全性を考慮に入れる必要があります。そうです、Trizolは劇物指定を受けた試薬です(さらに高価!)。この試薬をドバッと使えるのが少人数で実施する動物学実習の醍醐味です。皆が安全に実験できるよう厳重に注意を促した上、ゴム手袋を支給しました。

 

また今回は最後にRNAの純度を測定します。

RNA抽出は如何にピペットを上手に使えるかも重要になります。その結果、最終的に得られたものの純度が変わってきます。RNAの場合、吸光度(どれくらい光を吸収したか)の比率260/280が2.0前後なら純度は合格です。

次の行程を予習する?三宅穂波さん(手前)

通常キットを使ってRNA抽出を行っている
鈴木麻弥先生(右、宮城県食肉衛生検査所 所属)も
Trizol法を習得するために特別参加

 
レジュメを見ながら丁寧に作業をする橋本航くん


細かい過程は割愛しますが、最終的にみなさん吸光度260/280が1.9〜2.0の間となり、高純度のRNAを抽出することができました。

なお余談ですが、吸光度260/280の値が最も2.0に近かったのは、特別参加の鈴木麻弥先生でした。流石!



参加した学生の感想


青野夢生さん

一番難しかったのはミクロトームを使った切り出し(薄切)。先輩にコツを教えてもらっても中々うまく行かず、早くすると丸まってしまうし、ゆっくり過ぎると途中で刃が止まってしまうので、そのちょうど良い塩梅を見つけるのが難しかった。最終的にプレパラートに貼り付けられる1枚ができたのでよかった。

 

菅原実咲さん

組織標本の薄切は綺麗に薄く切るのは難しかったけど、うまく切れたので嬉しかった。RNAの抽出は純度が低く出たので(タンパク質やTrizol中のフェノールの混入が原因で起こる)、しっかり作業できるようになりたいと思った。



細胞生物学実習も実施!

3年次の動物学実習は、同じ日程で細胞生物学実習も行いました。ある物質が細胞や組織のどこに存在しているのかを可視化するために使われる「間接蛍光抗体法」を体験しました。

ゾウリムシの大核と小核が発光
 

野外実習も実施! 

7月30日には石巻市内の2カ所の森林での野外実習を実施しました。シカの生息密度の違いが森林に与える影響について理解することが目的です。

昨年度の様子 ↓↓↓


金華山のニホンジカ(撮影:高槻成紀氏)



生物科学科をもっと知る

生物科学科では、生き物を観察するだけでなく、組織・細胞・遺伝子などさまざまなレベルから生命現象を学びます。



【関連ブログ記事】

#実験・実習 #動物・植物コース 

 

2026年10月6日火曜日

磯の生き物を探せ! 3年生が「ベントスクエスト」に挑戦(海洋生物・環境科学実習)

 

7/11(土)の地曳網実習に続き、8/12(水)に「海洋生物・環境科学実習」の第2弾として、大室磯浜でベントス(底生生物)に関する実習を行いました。

実際にフィールドに出て、さまざまな生物とそれらが棲息する環境の特徴を実際に目で見て把握することで、海洋生態系に対する理解を深めることが目的です。

ただ観察するだけではなく、無脊椎動物学や海洋生態学などの講義で学んできた様々な知識を有機的に結びつけて、理解を深めます。

 

大室磯浜へ 

ベントス実習は、石巻市北上町十三浜にある大室漁港の外側に位置する磯場(通称:磯浜)で実施しました。

この日は台風が過ぎ去った直後で波の高い日でしたが、磯浜を囲う岩礁域が天然の防波堤としてはたらき、外洋からの波を和らげてくれました。


 

「ベントスクエスト」に挑戦! 

実習では、学生たちが4~5名に分かれて8つのパーティーを組み、FランクからSSSランクまでのミッションを順にクリアしていく「ベントスクエスト」を行いました。

 

ミッションは、特定のベントスの種類を見つけたり、紛らわしい種類を見分けたり、複数の動物門を探したり、同じグループに属する種を指定の数だけ見つけたりと、3年生にとってはどれもこれまでに経験したことの無いような内容でした。

お題のベントスがみつからず苦戦する学生たち

Eランククエストをコンプリート!
タマキビ、アラレタマキビ、クロタマキビ

磯のどこにいる? 

種類によって生き方や生活場所が当然違ってくるので、目的の生物を見つけるためには、どのような場所に生息しているのかを理解していく必要があります。

波打ち際を探したり…

海面よりもだいぶ高い位置を探したり…

4年生・大学院生がサポート 

3年生だけではクリアすることが難しいミッションは、各班を担当するSA(4年生)とTA(大学院生)の学生がヒントを出しながらサポートを行いました。

4年生の二階堂優和さん(手前の帽子の学生)は
昨年の本実習と1年間の研究室での学びの経験を活かして
立派にSAをこなしてくれました

大学院博士課程に在籍する
非常勤助手の小田晴翔さん(手前)は
本実習のTAは今回で4回目
完璧に仕事をこなしてくれました

みつけたベントスはバケツに入れてキープ

台風の後だったので
打ちあがったマボヤもみつかりました

飛沫帯の転石下深くに生息する巻貝類を探す3年生たち


SSランク・SSSランクのベントスを発見!

SSランクのオオウスイロヘソカドガイ
(手前の個体:宮城県レッドリストで準絶滅危惧)と
キントンイロカワザンショウ(奥の個体)を発見!
 
SSSランクのヤマトクビキレ
(宮城県レッドリストで絶滅危惧II類)も発見!
宮城県では希少な種ですが
生息場所が分かれば比較的容易に見つけられます

今回はほとんどのパーティーがSSSランクのクエストまでクリアしてくれました!

学生たちは磯場に生息する生物の多様性に興味津々で、クエストの対象となったベントス以外にもさまざまなベントスたちを観察してくれました。



磯にはこんなにたくさんの生物が!

学生たちが見つけたベントス 


節足動物門

アカイソガニ
ヒメアカイソガニ
ヒライソガニ
イソガニ
イワガニ
オオヨツハモガニ
シワオウギガニ
ホンヤドカリ
ケアシホンヤドカリ
ホシゾラホンヤドカリ
ケブカヒメヨコバサミ
イソカニダマシ
イワフジツボ
クロフジツボ
イソコツブムシ属の一種
ニセスナホリムシ
キタフナムシ
ヨコエビの仲間

ヒメアカイソガニ

軟体動物門
ヒザラガイ
ヒメケハダヒザラガイ
タマキビ
アラレタマキビ
クロタマキビ
イシダタミ
クビレクロヅケ
レイシガイ
イボニシ
アオモリムシロ
オハグロシャジク
マツバガイ

マツバガイ

ベッコウガサ
ヨメガカサ
コガモガイの仲間
アオガイ
クサイロアオガイ
キクノハナガイ
キントンイロカワザンショウ
オオウスイロヘソカドガイ
ヤマトクビキレ
ヒラスカシガイ
アメフラシ
アカザラガイ
イガイ
ムラサキインコガイ

環形動物門
イソゴカイ属の仲間
オイワケゴカイ

刺胞動物門
ヨロイイソギンチャク
ミドリイソギンチャク

棘皮動物門
イトマキヒトデ
ヒメヒトデ
バフンウニ
キタムラサキウニ
イシコ

イトマキヒトデ

ヒメヒトデ

外肛動物門
コケムシの仲間

海綿動物門
ダイダイイソカイメン

尾索動物門

マボヤ

脊椎動物門
ナベカ
アゴハゼ

ダイダイイソカイメン



実習での気付き 学生コメントより
採集クエストを実際に行ってみると、比較的小さな範囲であっても、さまざまな種類の生物が生息していることに気づきました。
普段は何気なく見ている場所でも、注意深く観察することで多くの生物を発見することができ、身近な環境にも多様な生物が存在していることを実感しました。


今回の実習を通して最も印象に残ったことは、一見すると何もいないように見える磯にも、実際に詳しく探してみると非常に多くの生物が生息していたことである。
実習前は、磯で見つけられる生物としてカニや大きな巻貝などをイメージしていた。しかし、岩の表面や隙間、転石の下などを注意深く観察すると、小型の巻貝やヒザラガイなど、普段は気づかないような生物を数多く確認することができた。


同じ磯の中でも生息場所が少し変わるだけで確認できる生物が変化したことから、生物の分布には水分、波、乾燥、岩の形状など複数の環境要因が関係していると考えた。特に転石の下には表面とは異なる生物が見られたため、小さな環境の違いが生物多様性を生み出していることを実感した。
特に印象に残ったのは、外見が似ている生物でも、細かく観察すると異なる特徴を持っていたことである。
例えば巻貝類では、殻の形だけでなく、殻表面の模様、色、殻の高さなどに違いが見られた。単に「巻貝」として見るのではなく、形態的な特徴を比較することが種を判別するうえで重要だと感じた。
今回の採集を通して、ベントスを発見するためには、生物そのものの特徴を知るだけでなく、「その生物がどのような場所を好むのか」を考えながら探すことが重要だと学んだ。
クエスト形式で採集することで、普段なら見落としてしまうような小型の生物にも注意を向けることができ、磯には想像していた以上に多くの生物が生息していることを実感した。
今回の実習によって、ベントスの種類を覚えるだけではなく、生物の形態、生息場所、生活様式を関連付けて観察することの重要性を学んだ。
今後、生物を観察するときには、単に種類を確認するだけでなく、「なぜこの場所にいるのか」「その体の特徴が環境の中でどのような役割を持つのか」という視点を持って観察したい。
  

 

3年生は後期からいよいよ研究室配属(研究室一覧)。

実習で学んだ自然の見方・考え方を、卒業研究にもぜひ活かしてもらえればと思います。

 

 

次は伊豆沼へ! 

9/26(土)には、海洋生物・環境科学実習の第3弾(湖沼編)「伊豆沼の生物資源保全に関わる野外実習」が行われました。

※ 2026年度(令和8年度)入学者から「海洋生物・環境科学実習」は「海洋生物学実習」と「環境科学実習」に分かれています。

過去の様子はこちら!


生物科学科をもっと知る

 

【関連ブログ記事】 

#実験・実習 #学生の声 #海洋生物・環境コース

 


2026年10月2日金曜日

専修大学北上高校の1年生約300名が「石巻専修大学見学会」に参加 新たな興味を見つける

ハチミツの試食は大人気!
 

9月17日(木)、専修大学北上高校の1年生約300名が「大学見学会」のため、石巻専修大学を訪れました。

生徒の皆さんは、学生食堂での昼食体験や、理工学部・経営学部・人間学部の各ブースを見学。さらに、大学教員による模擬授業にも参加しました。

大学ではどのようなことを学ぶのか、どのような研究をしているのか、高校とは違う「大学での学び」を、一足早く体験する機会となりました。

理工学部では、実際の研究・教育で扱っている標本などを紹介するブースを用意しました。

生物科学科 ミズクラゲ、ベントス、魚類標本 / 細胞、ミツバチ、ゾウリムシ、樹木 / 電池、固体酸、ソフトマター

創造工学科 AI、コンピュータウィルス、ロボコン、水中ドローン、3D地形模型、自動車

 

生徒の皆さんは、興味を持ったブースで足を止め、学生や教員からの説明を聞いたり、実物を観察したりしながら、大学での学びに触れました。


4年生や大学院生が
体験談を交えながら解説


ブース見学に続いて、模擬授業が行われました。

今回は、生物科学科からは2名の教員が講義を担当。大学ならではの生物科学の学びの広さを体験してもらいました。 

  • 渡邊 一仁「海水温上昇で変わる海と漁業・養殖」
  • 武藤 清明「微生物がつくる地球、微生物がつくる未来」

 

今回の大学見学会では、大学生活や授業だけではなく、その先の進路についてもイメージしてもらえるよう、本学を卒業した先輩も紹介しました。 

 

卒業生の紹介 風間玲緒奈さん

専修大学北上高校出身で、石巻専修大学を卒業。卒業時には、成績優秀者に授与される川島記念学術賞を受賞。その後、地元に戻り、北上市役所に就職しました。

動物機能組織学研究室でニホンジカを研究 
 
大学祭では団子屋さんを出店

大学案内にも協力してくれました

北上からのサポートバスを利用
(本学には 学生寮 もあります)


1年生の段階では、まだ進路が決まっていない人も多いと思います。「生物が好き」「海が好き」「地域産業について学びたい」ちょっとした興味が、大学での専門的な学びにつながっていきます。

今回の大学見学会が、高校生の皆さんにとって新しい興味を見つけるきっかけになったとしたら嬉しく思います。

 


【リンク】

  • 専修大学北上高校 岩手県北上市、普通科・グローカルビジネス科・メカニックエンジニアリング科

 

生物科学科をもっと知る

 

2026年9月30日水曜日

9月の生物科学科|野外生物実習・わくわくサイエンス探検・教員採用試験対策

 

生物科学科ブログでは、学生・教員の様子から授業・研究の内容まで、学部と大学院の日常風景をお伝えしています。ブックマークよろしくお願いします。 

9月は、1年次「野外生物実習」の海洋・動物・植物、それぞれの実習を紹介。大学祭での科学イベントや教員採用試験対策などの記事もアップしました。


1年次「野外生物実習」 

  








   記事をまとめたページはこちら(タグごと、月ごとで記事をピックアップしています。月ごとの一覧は #記事まとめ) 



「生物愛好会」の取り組みが新聞で紹介されました(河北新報オンライン)



「科学のたね」教室を開催 

10月から2月にかけて、本学で小中学生向けの科学イベントが開催されます(担当:人間教育学科、齊隆特任教授)。 ご参加、お待ちしています! 

  • 10月25日(日)ヒゲカビの生活を見てみよう(宮嵜厚)
  • 11月29日(日)ぐにゃぐにゃ算数・ぐにゃぐにゃ数学(渡辺正芳) 

 







大学ホームページ記事からのピックアップ


 

  •  ニュース専修2026年9月号[PDF] 海洋ベントス学研究室・骨格標本愛好会 特別展「石巻化石トラベラー」に協力。生物科学科1年生の女子チームが、石巻川開き祭りの船のレースに初参戦したというニュースも掲載。