2026年7月7日火曜日

博士1年・小田晴翔さんが笹川科学研究助成に2度目の採択 カニの「巣穴」から進化の謎に迫る

 

採択率19.8%という狭き門を突破

海洋ベントス学研究室に所属する大学院博士後期課程1年(D1)の小田 晴翔さんの研究課題が、「2026年度笹川科学研究助成 学術研究部門」に採択されました。

研究対象は、大学周辺に数多く生息するクロベンケイガニ。今回は、学部時代から続く研究内容と、小田さんのコメントを紹介します。 

研究課題は「新仮説×進化説
 ―巣穴から考える半陸生イワガニ類の性的二型の進化―」

 

小田さんは2024年度にも同研究助成に採択された経験があり、助成対象者として選ばれるのは2度目となります。1度目の採択の記事はこちら

※笹川科学研究助成は、若手の研究を支援するために公益財団法人日本科学協会が実施している研究助成制度



学部から一貫してクロベンケイガニを研究

半陸生のカニ類は、水中から陸へと進出し、干潮時の干潟や河口域などの水辺付近など陸上において活動するカニ類の総称で、スナガ二類(スナガニ上科)とイワガニ類(イワガニ上科)に代表されます。

スナガニ上科(ハクセンシオマネキ)

イワガニ上科(ハマガニ)

 

石巻専修大学のキャンパス周辺に数多く生息しているクロベンケイガニは、半陸生のイワガニ類の仲間で、小田さんは卒業研究から一貫してクロベンケイガニの研究に取り組んでいました。

クロベンケイガニを採集する小田さん

 

「脚タップ」から「巣穴」へ

前回の助成対象課題「すね毛×脚タップ=クロベンケイガニ:形態から考える社会行動の進化」では、半陸生のカニ類の中でもクロベンケイガニで極端に発達している歩脚の剛毛(すね毛)に疑問を持ち、クロベンケイガニで頻繁に行われることが報告されているleg-tapping(脚タップ)という社会行動との関連性について検討を進めました。

クロベンケイガニの「すね毛」

脚タップ行動

 

今回の研究課題では、以前の研究課題の過程で得られた「半陸生のイワガニ類でみられる性的二型が従来の性淘汰の理論では説明できない」というアイデアをもとに、自身の観察結果から性的二型の進化を駆動した要因として「巣穴」に着目した研究へと発展させました。

クロベンケイガニの巣穴


小田晴翔さんのコメント

この度、クロベンケイガニの巣穴と性的二型の進化に関する研究内容で、2度目となる笹川科学研究助成に採択していただきました。

性的二型の進化は、主に性選択(配偶者を巡るあらゆる競争に作用する選択圧)によって駆動されるとされており、従来の定説では、求愛行動などの繁殖に関わる社会行動に選択圧が「直接」作用することで性的二型の進化が駆動されるとされてきました。

今回採択された研究課題では、クロベンケイガニの雄が“雌にモテる“巣穴を形成することで、その巣穴を介して「間接的」に選択圧が作用するという、新たな性選択モデルの提唱を目指しています。

前回採択された研究の結果から新たに着想を得て、さらに発展させた内容となっています。チャレンジングな研究内容で、取り組むべき実験も多い研究計画ですが、良い成果を挙げられるよう精進していきたいと思います!

巣穴実験中の小田さん



石巻専修大学は、海・川・山などの身近なフィールドを活用した研究活動が数多く行われています。

地方の大学ではありますが、世界にチャレンジする環境があります。在学生の皆さん、そして未来の仲間となる高校生の皆さんの挑戦を期待しています。 


 

【リンク】

 

【関連ブログ記事】

#海洋ベントス学研究室 #海洋浮遊生物学研究室

#学生の声 #大学院 #海洋生物・環境コース 

小田さんは学部時代から学会発表をしたり、海外でも発表を行うなど、精力的に研究活動を行っています。今年度は本学の非常勤助手も務めています。

       

2026年7月3日金曜日

「伝える力」が今に活きる 東仙台中学校で活躍する卒業生・大宮さんにインタビュー

卒業生の大宮洸平さんが大学に遊びに来てくれました。

大宮さんは現在、仙台市立東仙台中学校で理科の教諭をしています(社会人2年目)。

「教えることが好き」「子供が好き」という大宮さんに、中学校での仕事や大学時代の思い出についてお話を聞きました。

 

 

  「中学校の先生」になってみていかがですか?

生徒と過ごす時間がとても楽しいです。授業、部活、生徒指導など大変なこともありますが、その分やりがいも大きく、楽しく過ごしています。

最近は、脊椎動物・無脊椎動物の分類を学ぶ授業で解剖の実験をしました。生徒たちは楽しみながらしっかりと実験に取り組み、共通点や相違点にういて考えることができていました。

これからはさらに経験を積んで、生徒たちから信頼される先生になりたいです。

大宮さん提供写真

 

  大学時代の思い出は? 

フットサルサークルで活動していました。当時は人数も多く、とても楽しかったです。仲良かった友人たちとは今でも飲みに行ったりしています。

最近、サッカー部ができたとのことで、後輩たちが活躍するのを楽しみにしています。

イメージ写真

 

  授業や卒業研究で学んだことが今に活きていますか?

卒業研究では、数理生物学研究室で数理モデルの研究に取り組んでいました。

漁獲によりクロマグロの個体数がどのように変動するか、生息地を回復させることと絶滅がどのような関係にあるか、といったテーマを数学を使って研究していました。

卒業研究ポスター発表会にて
ポスター発表会の様子を見る

 

現在の教員生活で特に生きているのは、相手に「伝える力」です。

卒業研究やレポート作成をとおして、相手に分かりやすく伝える力を養うことができました。その経験が中学校での授業作りに活かされています。

教員採用試験に向けて勉強中…

「理科を専門的に学べることと、
教員志望の学生への支援が手厚いことが
学科の良いところです」と話してくれました



  後輩へのメッセージをお願いします

辛いことから逃げずに、やり切ってください。必ず将来活きてきます。そして、大学生活を思いっきり楽しんでください。

「学生時代カレーをよく食べていたので、
食べて帰ります」と学食へ

 

卒業後に母校を訪ねてくれることは、教職員にとって大きな喜びです。 

現在は1年生の担任をしていて、忙しくも充実した日々を送っているようでした。

これからのさらなるご活躍を期待しています。ぜひまた遊びに来てください!

 

 

【リンク】

 

【関連ブログ記事】  

#卒業生(卒業生インタビューなどを紹介)

#教員採用試験(自主ゼミなどの学習支援や授業の様子を紹介)

 

 

卒業生が多方面で活躍しています 

 


現在は「アクアマリンふくしま」で解説員
理工学部の特設サイトでインタビューが掲載


卒業後、オープンキャンパスのときに来学
(妹さんも本学に在学)



2026年6月30日火曜日

6月の生物科学科|新設「生物資源コース」とは?・海洋生物ラボ・潜水調査実習レポート

構内のアジサイが見頃です

花びらのように見えるのは萼(がく)で
真ん中の小さいものが花
 

生物科学科ブログでは、学生・教員の様子から授業・研究の内容まで、学部と大学院の日常風景をお伝えしています。ブックマークよろしくお願いします。

6月は、2027年4月に新たに誕生する「生物資源コース」の紹介や、海洋生物ラボの生き物たち第2弾(タツノオトシゴの仲間、ヒメタツ)などをアップしました。



伊藤孝亮さん
(動物生態学研究室)


 

石巻専修大学生まれのヒメタツが
仙台うみの杜水族館に展示されています

 

 

   記事をまとめたページはこちら(タグごと、月ごとで記事をピックアップしています。月ごとの一覧は #記事まとめ) 

  









































































大学ホームページ記事からのピックアップ



取材を受けて、テレビにも出演
 

会場で捕まえた芋虫を子どもたちに披露

  

 

 

 

 

オープンキャンパス情報公開中!

 



「体験型」の 6月27日28日、7月18日19日、8月8日9日 はオープンラボ(研究室紹介)があり、オススメです。当日参加も可能です!
 
 
学科の学生たちもスタッフとして活躍!
ご来場、お待ちしております!

 




2026年6月24日水曜日

タヌキのしたたかな生き残り戦略を世界で初めて解明!―国際誌に研究成果を掲載―

 

卒業生の伊藤孝亮さんは、身近な野生動物であるタヌキの採食戦略を世界で初めて明らかにしました。今回は、論文の概要と伊藤さんからのメッセージを紹介します。 

イラスト:成田歩さん(本学の助手)
 

人里に暮らすタヌキは、漢字では「けものへん」に「里」と書く「狸」で表されるくらい、私たち日本人にとって身近な存在です。しかし、その一方で野生動物としてのタヌキの生態、とくに採食行動には未解明な点が多いのが現状です。

伊藤さんの研究はタヌキの採食行動を詳細に分析し、食物環境と関連づけることにより、彼らの柔軟で戦略的な採食行動を明らかにしました。

 

研究成果は、国際学術誌 European Journal of Wildlife Research において2026年3月10日付で オンライン公開 されています。



【論文の概要】

  1. タヌキの食性と食物の現存量との関連性を分析して、彼らの採食戦略を明らかにしようと試みました。
  2. 2020年から2024年の間に宮城県石巻市で採取したタヌキの糞(n = 138)を分析し、食物構成を評価しました。いっぽう、フェノロジー調査とトラップ調査を実施して、各月の果実と昆虫の現存量を評価しました。
  3. タヌキの食性は、主に果実(面積比60%)、昆虫(22%)、葉(11%)の3カテゴリで構成されていました(図1)。①果実の採食割合は春・秋・冬に高い、②昆虫の採食割合は夏に高い、③セキツイ動物(哺乳類・鳥類)と人工物の採食割合は冬・春に高い、という季節性がみられました。
  4. 果実の現存量とセキツイ動物の採食割合および食物多様性との間には、負の相関関係がみられました(図2)。
    → 果実が少ない季節にはネズミ・鳥を含む多様な食物を利用する!
  5. 昆虫の現存量と昆虫類の採食割合には、正の相関関係がみられました(図3)。
    → 昆虫が多い季節には昆虫を食べる!
  6. 昆虫の現存量と人工物の採食割合には、負の相関関係がみられました(図4)。
    → 昆虫が少ない季節にはゴミ漁りをする!
  7. タヌキは周囲の環境に応じて自分の食べ物を切り替える、日和見的な摂食戦略を採っていました。


【この研究の意義】

1. タヌキが自らの食物環境に応じて主食を切り替えている仕組みを世界で初めて明らかにした点。

「食物に対する柔軟性」を持ったことが、タヌキが都市環境を含む多様な生息環境で生き延びることができた理由と考えられます。



2. タヌキの採食行動が、多様な生物(動物・植物)と結びついていることを明らかにした点。

この点は、タヌキの生態学的役割(例:種子散布など)や同所的な動物や植物との種間相互作用(捕食者と被食者の関係など)を理解する上でも重要です。


 

図1. 糞分析に基づく、宮城県石巻市のタヌキの食性の月変化(平均値±標準偏差)。

a) 果実、b) 昆虫、c) 人工物、d) 葉、e) 哺乳類、f) 鳥類、g) その他。果実の採食割合は春・秋・冬に、昆虫の採食割合は夏、セキツイ動物と人工物の採食割合は冬・春に高い。

 

図2. 果実の現存量(フェノロジー点数)と哺乳類の採食割合の関係。果実が少ない季節に、哺乳類の採食割合が増加する。


図3. 昆虫の現存量(トラップの平均捕獲個体数)と昆虫の採食割合の関係。昆虫が多い季節に、昆虫の採食割合が増加する。


図4. 昆虫の現存量(トラップの平均捕獲個体数)と人工物(ゴミ)の採食割合の関係。昆虫が少ない季節に、ゴミの採食割合が増加する。




伊藤さんからのメッセージ


  論文公開に当たって

まさか自分の卒業研究がこのような形で、しかもこんなにも早く公開されることになるとは思ってもいなかったのでとても嬉しいです!

卒業後に辻先生から度々論文公開への進捗のメッセージが来るたびに、とても待ち遠しく感じていました(笑)。

論文公開に当たり研究に協力してくださった辻先生をはじめ、当時の研究室のメンバーに感謝しています。

 

  学生時代の思い出は?

やはり3年生後期から大学卒業までの研究室での出来事全てが一番の思い出です。

当時は最低でも週に1回は演習林へ行きサンプルを集め、研究室に帰ったら分析・解析等を行うという作業をひたすら繰り返していました。今思うとこんな作業よく1年も続けられたなあと思います..。

ただ、この作業を継続できたのも当時の研究室メンバーとの日常会話やしょうもない雑談が良い息抜きになっていたんだと思います。

時には雑談だけで1日過ぎたこともありましたが、おかげで仕事と遊びのメリハリが身につきました(笑)!

 

  現在の仕事は?大学での学びが今の仕事にどう役立っている?

現在はペットショップで働いています。

野生動物とは真逆で無関係に思うかもしれませんが、研究室で培ってきた、「報告・連絡・相談」や「コミュニケーション能力」といった力が接客業である今の仕事にすごく役に立っています。

就職して約1年が経ち、それでもまだまだ覚えることが多くて大変ですが、研究室で鍛えた能力を発揮して今後も頑張ります!

 

  後輩へのメッセージ

これからの大学生活や将来何かをしようとするときに一番重要なのは「準備」と「コミュニケーション」だと思っています。

就職活動も内定をもらうために試験勉強・資料作成などの準備が必要ですし、面接では試験官とのコミュニケーションが必要です。

卒業研究も自分のやりたい研究を行うにあたって何が必要か、分析はどのように行うのかなどの準備や、研究室のメンバーとのコミュニケーションを通して研究のクオリティが上がっていくと思います。

もちろん残りの大学生活を悔いの残らないように遊び尽くすためにもこの2点は必須です!

これから様々な出来事があると思いますが、この2点を頭に入れて生活してみてください。皆さんのこれからの活躍を期待しています!

 
 

【リンク】

  • 参考映像1 参考映像2 石巻専修大学演習林で撮影されたタヌキ(動物生態学研究室インスタグラム)

 

【関連ブログ記事】

#卒業生   

伊藤さんは「卒業研究ポスター発表会」においてポスター賞を受賞

 

 

2026年6月16日火曜日

海洋生物ラボの生き物たち (2) ~ ヒメタツ ~

1号館1階にある「海洋生物ウェットラボ」は、研究に用いる生物を飼育・維持する場です。

前回はミズクラゲと海産等脚類を紹介。 今回は「ヒメタツ」を大学院生の畠山さん(2025年度時点)に紹介してもらいました。

学会の懇親会で談笑する畠山さん(右)
そのときのブログ記事はこちら


今回紹介する生き物は、タツノオトシゴの仲間「ヒメタツ」です。

ヒメタツは2017年に新種として登録されたタツノオトシゴの仲間で、学名はHippocampus haemaといいます。大型で15 cm以上になるクロウミウマなどとくらべると小型で、最大でも10 cm程度の大きさにしかなりません。

ウェットラボではこのヒメタツの繁殖と、ヒメタツ稚魚を健全に成長させるために飼育実験を行っています。

現在飼育しているヒメタツは宮城県で採取されたもので、5月に70匹以上の赤ちゃんを出産しました。タツノオトシゴはメスがオスの育児嚢(卵から稚魚まで成長させる袋状の構造)に卵を産み付け、オスが卵を孵化するまで抱えます。

 

ヒメタツの出産シーン

 

飼育に関しては、仙台うみの杜水族館で飼育員をされている石巻専修大学OGの佐藤光優さんから、餌の栄養強化の仕方やヒメタツが繁殖行動を行えるような水槽の形状など、非常にためになるご指導をいただきました。



小型のヒメタツは大型のタツノオトシゴの仲間と比べて、生まれる稚魚のサイズが大きく、生まれた直後から着底(尻尾で何かに巻き付くこと)します。初期餌料には休眠卵から孵化させたアルテミア幼生を与えました。

稚魚の飼育は比較的簡単でしたが、稚魚が成長するにつれて餌をアルテミア幼生からより大きなイサザアミ(アミ類)へと餌を変えていかなくてはいけません。

生きたイサザアミを常時確保することは難しいので、基本的には冷凍のイサザアミを代用しますが、ヒメタツは動くものにしか反応しないため、冷凍イサザアミを食べてもらう一工夫として、アルテミア幼生も同時に与えました。

冷凍イサザアミは水槽の水をひどく汚してしまうのでろ過装置を使いたいところですが、そうするとアルテミア幼生までが吸われてしまいます。そのため、良い餌環境を保つのに頻繁に水替えを行わねばならず、安定してヒメタツを成長させるには労力とともに根気と愛情が必要でした。

仙台うみの杜水族館にて
 

そんなウェットラボで生まれたヒメタツも、親とほぼ同じ大きさになりました。次の世代の繁殖を目指してこれからも奮闘していきます!

また、仙台うみの杜水族館さんでもウェットラボで生まれたヒメタツ達が展示されているので、ぜひ足をお運びください!!



【リンク】


【関連ブログ記事】

#ISU生物図鑑 #海洋生物・環境コース #大学院