2023年7月31日月曜日

7月の記事まとめ


 

オープンキャンパスが始まりました。ブログでは、当日の様子を紹介しています。 その他にも、サル・シカ研究や、教職セミナーの様子などをアップしました。

おまけで、大学ホームページ記事からのピックアップや夏休み情報も。ぜひご覧下さい。



   記事をまとめたページはこちら(タグごと、月ごとで記事をピックアップしています)





大学ホームページ記事からのピックアップ

水族館で働く夢を叶えた鈴木さん。沖縄のDMMかりゆし水族館で、哺乳類・爬虫類チームに所属して元気にやっているようです。

 

「活躍する卒業生」のページ で、鈴木さんのコメントが紹介されています。 後輩に向けたメッセージを一部抜粋します。

「夢や目標に近づくためには、大学での頑張りが重要です。(中略)自分の武器を持つことができれば、どんな場所でも活躍できると思います。諦めなければ夢は叶います!頑張ってください。」

大学HPより





今年のオープンキャンパス開催日は 7/23、7/30、8/19、9/3

 









夏 休 み 情 報
  • 夏休みは、8月5日~9月20日です。21日、22日のオリエンテーションから後期がスタートします。
  • 前期の成績は、9月14日からの公開

 

 
 
 
 

2023年7月27日木曜日

【画像29枚】オープンラボから模擬授業まで 今年初となるオープンキャンパスを開催!

学生も熱心に説明
 

7月23日(日)に、今年初となるオープンキャンパスを開催しました。

 

大学全体としては、同伴の方を含めての270名程度の参加がありました。

岩手、山形、福島、秋田、青森など、4割程度(!)が県外からの参加者でした。生物科学科だけで見ると、割合はもう少し多いかも?(例年、入学者の半数以上が県外出身の学生です)

学生・教員と直接対話することで、学科の雰囲気を感じ取ってもらえたでしょうか? 

 

(大学HPへ、2023年9月に公開)
キャンパス内の20ヶ所を360°見ることができます
(学科関連では標本展示室と海洋ベントス学研究室を公開)


 

 

 

当日の様子を写真で紹介していきます!


生物科学科では、各研究室を公開する「オープンラボ」のほか、「学科説明会」「生物科学科まるわかりツアー」「模擬授業」を実施しました。

 

学科説明会
・カリキュラムの紹介
・地域に根ざして世界に尖った研究の紹介
・資格(教員免許、学芸員、自然再生士補)


生物科学科まるわかりツアー
・海洋生物ウェットラボ、養殖施設の見学
・「生物科学科ではこんな研究が行われています」
 と、フロアを回りながら各研究室を簡単に紹介


模擬授業1
菌類を知ることから始めよう!
 

模擬授業2
理科の先生を目指してみませんか?
~自主ゼミ紹介&在学生トーク~


 

 

  海洋生物・環境コース

プランクトンから深海魚まで

海のいきものの生態や生息環境について学ぶ

 

できたばかりのウェットラボは人気!

「見慣れないヒトがたくさん来てるみたい」

クラゲの赤ちゃん(エフィラ、右下)も



ベントス研の学生が
かわいいイラストを描いていました

奇妙で不思議な「ベントス」の世界
(海洋ベントス学研究室)


自然環境を守る仕事をしませんか?
(沿岸環境生態工学研究室)

身の回りに潜む海産寄生虫と少しずつ出てきた深海魚
(地域水産利用学研究室)





  動物・植物コース

生態系から遺伝子まで

いきものの営みを時空間スケールで理解する


動物の交通事故について考えてみよう
(動物生態学研究室)

入口ではシカの標本がお出迎え
有志の学生で、標本作成をしています


知っているようで知らないゾウリムシの世界
(細胞生物学研究室)


めざせ歩く植物図艦
(植物系統分類学研究室)

千変万化-えっ?これが同じ植物なの?
(植物発生遺伝学研究室)



  微生物・生命分子コース

微生物からヒトまで

多様な生物の発生、生理、進化、

そして生命分子について幅広く学ぶ


野菜からDNAを取り出そう
(ゲノム構造解析研究室)


巨大なかび「ヒゲカビ」を紹介します!
(菌類発生生理学研究室)




  自然科学コース

サイエンスを幅広く、生物・化学・物理・数学を学ぶ

理科の教員への道をサポート


電池になってみる
(電気化学研究室)


「におい」の分子認識
(分子認識化学研究室)

どうしてクモは頭を下にしてエサをまちぶせるの?
~数理のチカラで生物をカガクする~
(数理生物学研究室)
 
自然科学コースのカリキュラムを紹介
実際の授業ノートなども展示しました

 

 


ランチタイムにキッチンカーも出ていました

暑い中のご来場、ありがとうございました!
 

 

 

【関連ブログ記事】 #オープンキャンパス

今年の開催日は、7/23、7/30、8/19、9/3 です。


生物科学科は4コース、21研究室
DNAからフィールドまで、生物科学を総合的に学びます



2023年7月25日火曜日

石巻市街地に現れたサル 辻准教授による見解と解説を公開

 

 

ニホンザルはどうして街にやってくるのか?

―石巻市でのニホンザル出没の背景―

 

ご存じの通り、2023年5月上旬から石巻市の市街地でニホンザル(Macaca fuscata、以下サル)の出没が相次いでおり、不安に感じている方が多いと思います。

日本各地でサルの生態を研究してきた私のところに各種メディアから取材の依頼が相次いでおりますが、これまでの報道内容の一部には不正確な情報、あるいは視聴者の誤解を招きかねない表現が散見され、私は誤解に基づく行動によるトラブルの発生を懸念しています。

サルの正しい知識を提示し、適切に対処していただく助けになればと考え、今回の事例について、研究者としての見解と解説を述べたいと思います。皆さんの不安解消の手助けになれば幸いです。


 


  Q1 このサルはいったい何者か? 

お答え

今回石巻市で確認されたサルは、若いオスザルです。生まれた群れから離れて一人で旅をしている『離れザル』だと考えられます。

 

解説

サルは、30~50頭ほどの群れを作って生活する動物です。群れは、複数のオスと複数のメス、そして彼らの子供たちから構成されます(辻, 2020)。

ニホンザルの群れ

メスが生まれた群れで一生を過ごすのに対して、オスはある程度大きくなると(3~7歳くらいとされています)ほぼすべての個体が生まれた群れを出て、単独で、あるいは、オスだけのグループを作って行動します(福田, 1982; Sprague et al., 1998; Kawazoe, 2006)。

この状態のオスを『離れザル』といいます。『離れザル』は数年ほど山を放浪したあとで別の群れに移籍し、そこのメスと後輩して子を成しますが、数年もたつと、またその群れから消失します。オスは、いろいろな群れに出入りを繰り返して生涯を過ごすと考えられています。遺伝子の視点では、『離れザル』は出身群の遺伝子をほかの群れに運ぶ「運び屋」として機能します。

つまり、今回石巻市に出現してサルは「旅の途中の若いオス」だということです。

交尾するサル

サルの新生児

さて、石巻市で目撃が相次いでいるサルは、これまでの目撃情報から、一頭だけで行動しているようです。映像からは、3~5歳程度と推測されます。

目撃された場所の範囲は石巻駅周辺・山下・渡波・女川と比較的広範囲ですが、おそらく同一個体でしょう。人間に積極的に近づいてこない様子から、ペットとして飼育されていた個体が逃げ出した可能性は低いと思われます。


 

 

  Q2 このサルはどこからやってきたのか?  

お答え

県⻄部から移動してきた可能性が⾼いと思います。 


解説

2022 年現在、宮城県県内には、約3000 頭のサルが生息していると推定されています(宮城県環境生活部自然保護課, 2022)。

県内の分布は、県の⻄部(加美・大崎・仙台・川崎)と南部(七ヶ宿・白石・丸森)、そして牡鹿半島沖の離島・金華山島に限られます(宮城県環境生活部自然保護課, 2022)。県の北部に群れは分布しておらず、岩手県の五葉山まで北上しなければ隣接集団はいません。

したがって、今回のサルは県⻄部の群れ出身の個体であり、東へ東と旅をして、石巻市にたどり着いた可能性がもっとも⾼いと私は考えています。金華山島から海を渡ってやってきた可能性は、島と本土の間の海流の強さを考えれば、非常に低いでしょう。

サルが海を泳いで⻑距離を移動したという事例は、研究者の間では知られていません。離れオスの生活についての研究はあまり進んでいないのですが、元の群れから数十キロ離れた場所で見つかったケースも知られており(福田, 1982)、移動能力はかなりあるとみてよいでしょう。


 

 

  Q3 なぜ石巻の市街地に現れたのか?なぜとどまっているのか? 

お答え

石巻市にやってくること自体は、珍しいことではありません。ただ、市街地にとどまっているのは珍しいケースです。

解説

環境省が平成12 年度〜14 年度にかけて実施した生物多様性調査によると、県内の『離れザル』の目撃情報は県下全域に及んでいます。

県北地域では気仙沼市、栗原市、大崎市、登米市、南三陸町で目撃情報があり、石巻市では牡鹿半島で目撃されたことがあります。県内での『離れザル』は、7 月〜12 月に目撃回数が多いようです (伊沢, 2004)。


このように、県の東部でのサルの目撃は散発的に報告されており、石巻市でのサルの出現自体は、驚くべきことではありません。ただ、今回のように一か月以上にわたって市街地にとどまっているのは、珍しいケースといえます。

このサルが人の姿を見てもすぐには逃げないこと、そして家庭菜園の野菜を食べたという目撃情報から「恒常的に農作物被害を起こしている群れからやってきた個体」の可能性があります。だとすれば、食べ物が入手できる期間、市街地付近にとどまる可能性は、否定できません。野生のサルの夏の食物は、若葉・花・キノコ・昆虫などですが、春や秋に比べて食物事情が悪いため、食物がたくさんある場所は彼らにとって居心地が良いのです。


マスメディアの注目を集めてしまったことも、このサルが市街地にとどまっている要因だと、私は思います。連日、大勢の人にスマホのカメラを向けられ、さらにもっと大きなテレビカメラを何台も向けられたら、サルがどう感じるか、想像してみてください。巨大な怪獣に取り囲まれているかのように感じるのでないでしょうか…。

このような状況では、このサルは市街地から立ち去ろうにも移動しづらくなっているのかもしれません。ここはひとつ、サルへの接し方や報道各社の取材の在り方を考え直していただければ…と思います。


宮城県内のニホンザルの分布
(宮城県環境生活部自然保護課, 2022)

色のついた線は群れを表す

 

 

  Q4 このサルに出会ったら、どうすればよいか? 

お答え

このサルにばったり出会った場合は、目をそらして知らん振りをしてください。にらみつけたり、撮影しようと携帯のカメラを向けたりすると「威嚇している」と認識し、飛び掛かってくる恐れがあります。

若い個体なので⽝⻭はまだ鋭くないですが、それでも噛まれたり引っかかれたりするとケガをします。野生のサルは人間に感染する病気や寄生虫を持っていることがあり、噛まれたときにそれらに感染する危険もあります。

くれぐれも、脅かしたり捕まえようとしないでください。こちらが何もしない限り、向こうが襲ってくることはありません。


ここ数日は、集合住宅のベランダに出現したケースが報告されているようです。このサルが日常的に畑荒らしをしている群れからやってきた個体である場合、人の食べ物の味を知っているため、部屋の中に食べ物を見つけると侵入しようとする可能性があります。カーテンを閉め、部屋の中が見えないようにするのがよいでしょう。


なお、チンパンジーなどの大型のサルが、人間の赤ん坊を連れ去った事件があるのですが、ニホンザルではそのような事例は一度も発生していません。ましてや、今回出現した「離れザル」は体重5 kg 程度の比較的小型の個体と思われますから、人間の赤ん坊を抱きあげるのは不可能ですので、この点については、ご心配は無用です。


サルが立ち去ったあと、目撃した場所やサルの行動を、市の担当者や警察に連絡してください。



 

  Q5 このサルは今後どこに行くのか? 

お答え

サルの今後の進路を予想するのは非常に難しいのですが、①県⻄部にU ターンする可能性、②渡波を経由して牡鹿半島に入り込む可能性が考えられます。③市街地で交通事故にあって死亡する可能性もあるでしょう。

サルに限らず、生き物の究極的な目的は「自らの子孫を残すこと」ですから、この『離れザル』にとっては、他の群れが連続して分布する奥羽山脈に戻る①が、一番良いシナリオです。②の場合、サルが定着したとしても交配する相手がいませんので、牡鹿半島内で将来サルが増加することはないでしょう。

辻研の成田歩君による作品

 


おわりに ― 石巻市の皆さんへのメッセージ ―

ここ数年、クマやイノシシ、カモシカといった野生動物が市街地に出没することがたびたびニュースになっています。今年は北海道でヒグマによる凄惨な事故が発生しました。

野生動物に対する関心、そして不安が⾼まっていることも、今回の石巻市でのサルの出現が大きく報じられた背景にあるのでしょう。


ただ、動物の市街地への出没を「異常事態だ」「野生動物の反乱だ」などという構図で報じるメディアが一部あり、これに対するネット上の匿名の書き込み―客観的なデータや根拠に基づかない無責任なものです―が、市⺠の不安を煽っているように思います。

ここは少し、冷静に問題を分析してみましょう。今回ご説明したように、オスザルが群れを離れて放浪すること、そしてサルが石巻にやってくること自体は、決して異常なことではありません。これは、野生動物としてのサルの自然の姿なのです。

故郷を出て旅をしている若いサルが、石巻で一休みしているのだと理解してください。また、彼らが理由もなく襲ってくることはありませんので、過剰に恐れる必要もありません。ただし、興味本位でのサルの撮影はお止めください。


今回の一件は「野生のサルがときどき訪問してくるほど、石巻は自然豊かな場所である」ということの証しでもあるのですから、おおらかな気持ちで「おらが町のサル」を見守ってあげてください。そのうち去ることを願いましょう。

 

 

 

参考文献

  • 福田史夫 (1982) ニホンザルのオスの年齢と群間移動との関係. 日本生態学会誌 32: 491-498.
  • 伊沢紘生 (2004) 宮城県における群れ外オスの出没状況とその特性. 宮城県のニホンザル 16: 44-51.
  • Kawazoe T. (2006) Association patterns and affiliative relationships outside a troop in wild male Japanese macaques, Macaca fuscata, during the non-mating season. Behaviour 153: 69-89.
  • 宮城県環境生活部自然保護課 (2022) 宮城県特定鳥獣保護管理計画検討・評価委員会資料
  • Sprague D.S., Suzuki S., Takahashi H., Sato S. (1998) Male life history in natural populations of Japanese macaques: migration, dominance rank, and troop participation of males in two habitats. Primates 39: 351-363.
  • 辻大和 (2020) 与えるサルと食べるシカ. 地人書館, 東京.



本学はこれからも地域の問題解決に積極的に取り組みます。

 

令和5年7月3日
理工学部生物科学科 辻大和

動物生態学研究室のホームページはこちら

 

 

【関連ブログ記事】

#動物生態学研究室 #動物・植物コース #地域×大学 

学生が調査結果を地域の皆さんに報告
(牡鹿半島ビジターセンター)

 

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開放講座で講演(大学HPより)