2023年6月22日木曜日

野生のサルに餌をあげてはいけません(インドネシアでの研究指導を紹介)

野生の果実を食べるカニクイザル

辻准教授(動物生態学)は、インドネシアでの自身の調査と並行して、現地の学生(ボゴール農科大・アンダラス大)の研究指導もしています。

 

インドネシアには、オランウータンやテナガザルを始め、多くの霊長類が暮らしていますが、その多くが絶滅危惧種です。

「共同研究」という形でインドネシア人の研究者を育て、彼らが主導する調査・研究を後押しすることも、海外をフィールドとする研究者の仕事です。

インドネシアの大学で、生物学の講義をしています
学生さんたちはみな熱心です

 

指導学生の一人、修士課程のウバイ・ハサン君は、ジャワ島東部のアラス・プルウォ国立公園にて、餌付けされたカニクイザル (Macaca fascicularis、ニホンザルの近縁種) の生態に関する研究を行い、その成果をPrimates誌に公表しました(論文はこちら)。

ボゴール農科大学のウバイ君

 

ウバイ君は半年間にわたって現地に滞在し、カニクイザルの活動時間配分(一日の時間の使い方)、食性、行動圏利用(移動距離、利用した面積)について調査しました。

この国立公園のカニクイザルは、自然植物よりも人間由来の食物(もらった餌、ゴミ)に強く依存しており、国立公園への訪問者が多い月―つまりたくさん食べ物をもらえる月―は移動距離が短くなり、仲間同士の毛づくろいの時間が増え(食物を効率的に利用できるため余裕があるらしい)、そして行動圏が小さくなりました。

カニクイザルに餌を与える観光客
(アラス・プルウォ国立公園とは別の調査地です)

 

このように、餌付けはサルたちの行動のあらゆる側面に影響し、野生本来の行動をゆがめることが分かりました。

行政が主導して餌付けを禁じたり、あるいは周辺住民に対して餌付けの負の側面を紹介する環境教育プログラムを実施するなど、国立公園での「ヒトとサルの関係」のあり方を考え直す必要があります。

カニクイザルのオス
口ひげが特徴的なサルです



研究室HPのイラストは4年生の成田歩君によるもの。他の作品14点をこちらで紹介しています。

 

 

 

  辻准教授の研究が読売新聞に取り上げられました

野生動物の交通事故(ロードキル)についての研究が詳しく紹介されています。


  辻准教授がテレビ番組でコメント

ここ最近(5月~6月)、石巻市の市街地でサルが良く出没しています。その内容がテレビで放送され、専門家の意見として辻准教授がコメントしました。

 

  サル出没について、研究者としての見解と解説を公開(7月4日)

ニホンザルはどうして街にやってくるのか?―石巻市でのニホンザル出没の背景― [PDF]

  • このサルはいったい何者か?
  • このサルはどこからやってきたのか?
  • このサルに出会ったら、どうすればよいか?
  • このサルは今度どこに行くのか?
  • 石巻市の皆さんへのメッセージ

 

 

 

【関連ブログ記事】

#動物生態学研究室 #動物・植物コース #骨格標本