野生の果実を食べるカニクイザル |
辻准教授(動物生態学)は、インドネシアでの自身の調査と並行して、現地の学生(ボゴール農科大・アンダラス大)の研究指導もしています。
インドネシアには、オランウータンやテナガザルを始め、多くの霊長類が暮らしていますが、その多くが絶滅危惧種です。
「共同研究」という形でインドネシア人の研究者を育て、彼らが主導する調査・研究を後押しすることも、海外をフィールドとする研究者の仕事です。
指導学生の一人、修士課程のウバイ・ハサン君は、ジャワ島東部のアラス・プルウォ国立公園にて、餌付けされたカニクイザル (Macaca fascicularis、ニホンザルの近縁種) の生態に関する研究を行い、その成果をPrimates誌に公表しました(論文はこちら)。
ウバイ君は半年間にわたって現地に滞在し、カニクイザルの活動時間配分(一日の時間の使い方)、食性、行動圏利用(移動距離、利用した面積)について調査しました。
この国立公園のカニクイザルは、自然植物よりも人間由来の食物(もらった餌、ゴミ)に強く依存しており、国立公園への訪問者が多い月―つまりたくさん食べ物をもらえる月―は移動距離が短くなり、仲間同士の毛づくろいの時間が増え(食物を効率的に利用できるため余裕があるらしい)、そして行動圏が小さくなりました。
このように、餌付けはサルたちの行動のあらゆる側面に影響し、野生本来の行動をゆがめることが分かりました。
行政が主導して餌付けを禁じたり、あるいは周辺住民に対して餌付けの負の側面を紹介する環境教育プログラムを実施するなど、国立公園での「ヒトとサルの関係」のあり方を考え直す必要があります。
研究室HPのイラストは4年生の成田歩君によるもの。他の作品14点をこちらで紹介しています。
辻准教授の研究が読売新聞に取り上げられました
野生動物の交通事故(ロードキル)についての研究が詳しく紹介されています。
- 石巻 3年間で動物と車接触事故3395件 専修大と市多発地点分析へ (読売新聞オンライン、6月23日)
辻准教授がテレビ番組でコメント
ここ最近(5月~6月)、石巻市の市街地でサルが良く出没しています。その内容がテレビで放送され、専門家の意見として辻准教授がコメントしました。
- 石巻市市街地でサルの目撃相次ぐ 専門家は群れから離れたサルの可能性を指摘(宮城) (Yahoo!ニュース、6月22日)
- またもサルが出没 宮城・石巻市 住民から不安の声(khb東日本放送、6月28日)
サル出没について、研究者としての見解と解説を公開(7月4日)
- このサルはいったい何者か?
- このサルはどこからやってきたのか?
- このサルに出会ったら、どうすればよいか?
- このサルは今度どこに行くのか?
- 石巻市の皆さんへのメッセージ
【関連ブログ記事】
- 糞から探る、何食べてる? インドネシアでのマレーヒヨケザル研究について紹介
- 生態学の発展に大きく貢献 辻准教授が日本生態学会「大島賞」を受賞しました
- 猪突猛進! 有志の学生で全身骨格標本を作成。教材としても活用しています。