2024年2月29日木曜日

2月の記事まとめ

金華山でのフィールドワーク
海洋ベントス学研究室 X より

2月は各コースでの卒業研究発表会、学科全体でのポスター発表会、そして大学院修士論文発表会など、学びの集大成を披露するイベントが行われました。

大学ホームページでも、生物科学科関連の記事が多く掲載されました。どうぞご覧下さい。 


金華山で41年ぶりに発見された
ミヤマダイコクコガネ


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入学者選抜情報




大学ホームページ記事からのピックアップ 


卒業研究発表会関連

 

教職関連 

  • 教職対策ゼミナール合宿を行いました  面接や集団討議の対策から合格者による講話まで、人間学部の先生方による教職対策合宿です。そこに意欲的な生物科学科の学生も参加。学部の垣根を越えて交流し、充実した体験になったようです。

人間学部の新鶴田助教(理科教育研究室)が指導
問題が発生したときの対処方法などをアドバイス


学科教員関連

石巻を舞台としたアート、音楽、食の総合芸術祭
「リボーンアート・フェスティバル」でのイベント

 


2024年2月27日火曜日

本学在学生が、41年ぶりの大発見!

ミヤマダイコクコガネ♂(イラスト:成田歩)
無断転載を禁ず


動物生態学研究室の4年生、成田歩君は、卒業研究としてニホンザルが排泄するフンに集まるコガネムシ(糞虫類)の生態を研究しています。

2023年5月、調査地である金華山島で落とし穴トラップのベイトとして使うサルのフンを探していたところ、成田君は見慣れない糞虫を捕まえました。

金華山島で糞虫を採集する成田君

サル糞を入れたプラスチックコップを埋めておくと、糞虫が落ちてくるので(ピットフォールトラップ)、これを採集します。 



成田君が採集した「謎」の糞虫類

捕獲個体は現在、
本学科の標本展示室に収蔵されています
 

この虫に興味を持った成田君は、2023年8月と9月に追加の調査を行い、さらに5匹の捕獲に成功しました。

昆虫の専門家に同定してもらったところ、この虫は全国的に分布が限られている希少種、ミヤマダイコクコガネ (Copris pecuarius) であることが分かりました。

実は金華山では1980年代に本種の採集記録がありますが、それ以降は記録が途絶えており、実に41年ぶりの発見となりました。

 

専門家の助言を得て、成田君はこの発見を昆虫専門の雑誌に報告することにしました。卒業研究と並行しての執筆作業となりましたが、2024年1月に報告文が掲載されました。

在学中の学生による専門誌への報告は、快挙と言えます。

雑誌に掲載された報告文
この原稿は、成田君がほぼ一人で執筆しました


「研究」というと、なんだか遠い世界のようなイメージがあるかもしれません。

しかし自然に対する愛情と「知りたい」という情熱、そしてちょっとした幸運が重なれば、たとえ学部生であっても科学の世界に貢献できるのだということを、成田君は示してくれました。

みなさんも、身近な自然に隠れている謎の解明にぜひチャレンジしてください。


ミヤマダイコクコガネは体長が約23 mmと、わが国では最大クラスの糞虫です。

オスにはカブトムシのようなかっこいい角があります。山間部に見られ、平地の牧場等に生息するダイコクコガネとの住み分けが見られるそうです。 




  成田君へのインタビュー
 

Q  珍しい昆虫の採集記録を報告した感想は? 大変だったことは?

A  大変だったのは標本の作製でした。展脚がうまくできず苦労しましたが、楽しみながら作業できたと思います。

また、近縁種のダイコクコガネ(C. ochus)は、駆虫剤の影響によって絶滅危惧種(絶滅危惧Ⅱ類, 環境省)に指定されており、本種も全国的に生息数が減少しつつあります。それでも本種が40年以上にわたって金華山で生息し続けることができたのは、この島が国立公園に指定されており、人間活動の影響が少ないためだと考えられます。

そうした観点から今回の発見は、生物多様性保全の意義を、改めて実感させられる経験になったと感じています。

 

Q 金華山の調査で印象的だったことは?

A 昆虫類をはじめとする小さな生き物が豊富で多様だったことです。こうした生き物たちは、多くの動物の食物となるだけでなく、サルやシカの生息環境を支えています。

私のように、生き物同士のかかわり・つながりを研究したいと考えるなら、金華山は最高の環境であると思います。


Q これから卒業研究に取り組む後輩へメッセージをお願いします

A 調査自体は一時的・肉体的苦労がありましたが、得られたデータが何を意味するのかについては、多くの時間悩みました。しかし、生き物たちのつながり(私の場合、糞虫類 × サル × 植物)が明快になるにつれ、自分の研究テーマが一番面白いのではと思うようになりました。

卒業研究に臨むにあたって、基礎知識や先行研究などの学習は不可欠ですが、さらに重要なのは自分の研究テーマを楽しむことだと思います。




2024年2月5日に開催された動物コースの卒研発表会で、成田君はメインの研究成果を発表。野外調査と室内実験を組み合わせた、完成度の高い研究でした!お疲れさま。





調査のひとコマ
 

金華山島は山小屋での生活となるので、基本的に自炊をします。小屋での語らいの時間も楽しいです。

さて…これは何をしているのでしょう?実は「トイレの汲み取り」です(食事中の方、ごめんなさい)。

山小屋のトイレはいわゆる「ぼっとん便所」です。山にはバキュームカーなど来てくれませんから、定期的にみんなで汲み取り汲み掃除をしなければなりません。小屋のメンテナンスも、調査のうちです。

野外調査では、自分の研究のことだけ考えていればいいわけではありません。共に過ごす仲間が気持ちよく過ごせるように、気遣いが大切なのです。




動物画家としての一面も

成田君は素晴らしいイラストの描き手で、本学科の各種イベントのイメージイラストの作成に活躍してくれています。

今回は、彼の卒業研究のパートナーでもあったオオセンチコガネと、彼が大好きなオランウータンのイラストを紹介します。


オオセンチコガネ(イラスト:成田歩)
無断転載を禁ず


タパヌリオランウータン(イラスト:成田歩)
無断転載を禁ず



「私立大学1・2・3」に取り上げられました




海洋生物ラボは完成済。フィールド調査で採集した生物の行動観察や飼育実験など、学生が主体となった取り組みが活発に行われています。
 

2024年2月17日土曜日

【卒業研究ポスター発表会】4年ぶりの対面開催! ご家族や卒業生の皆さま、奮ってご参加ください

 

2月の5、6、7日に、学内向けの卒業研究発表会が行われました。

それに引き続き、2月24日(には生物科学科恒例の「卒業研究ポスター発表会」が行われます。一般の方向けの発表会です。

コロナ禍では展示会のみ行ってきましたが、4年ぶり対面で開催! 来場者の皆さまによる投票で「ポスター賞」も決定します。

 

実施報告はこちら ↓↓↓





昼から開始・場所は学生ホール

場所は5号館3階の学生ホール。閉会式は、同じ3階にある5301教室で行います。

  • 11:30~ 開場・ポスター自由閲覧
  • 12:00~ 開会式(約10分、学生ホールにて)
  • 12:20~ 奇数グループ・ポスター発表(1時間半)
  • 13:50~ 偶数グループ・ポスター発表(1時間半)
  • 15:30  ポスター賞の投票〆切( → 集計・ポスター自由閲覧・歓談タイム)
  • 16:30~ 閉会式・表彰(約30分、5301にて)

 

ご家族や卒業生、他学部の学生・教職員など、生物を専門としない一般の方向けのイベントです。皆さま、奮ってご参加ください。

予約は不要です。直接、5号館の3階までお越し下さい。途中からの参加もOKです。

 


 

 

研究成果を1枚のポスターに

当日はポスターの前で、なるべく専門用語を使わずに説明。一方的なものではなく、会話を心がけながらポイントを絞って話をします。

ご来場の皆さまは、気になること分からないことがあれば、遠慮なくご質問下さい。学生は快く答えてくれるはずです。


 

過去の来場者コメント

  • 自身の研究を直接プレゼンする大変すばらしい機会だと思います。学生さんも皆さん一生懸命で感心いたしました。(ご家族の方)
  • 身近な問題から課題を見つけられたり、専門的な視点を持たれていたり、とてもおもしろかったです。(ご家族の方)
  • 対話することができて、充実した時間を過ごせました。(4年)


学生にとっては、様々な立場の人に正しく分かりやすく伝えるという、まさに社会人に必須のコミュニケーション能力を試す場。

ご家族にとっては、教員とも交流を深めることができる絶好の機会になると思います。

皆さまのご来場、お待ちしております!



【大学ホームページ関連記事】

  • 令和5年度学位記授与式について 3月20日(水)に挙行。全体での式のあとに学科ごとに分かれて、ひとりひとりに学位記が授与されます。久しぶりに「卒業を祝う会」も行われます。



【関連ブログ記事】学内向けの発表会の様子 #卒業研究


2024年2月16日金曜日

卒業研究発表会(植物コース) 知りたいことをどこまでも追究

2月7日(水)に植物コース5研究室16名の卒業研究発表会が行われました。

生物科学科卒研発表会の最終日ということで、2, 3年生も含め63名以上の参加者となりました。



卒業研究 発表タイトル

 

植物系統分類学研究室 (根本研) 

  • 西日本に生育するコマツナギ(マメ科)における外来集団の識別

  • カワラケツメイ(マメ科)の胚軸にみられる稜線は一体何か?

  • ジャヤナギ(ヤナギ科)の冬芽にできるヒビ筋の構造
  • マメ科植物の裂開果の果皮厚壁組織に見られる2層構造の解析

  • 鹿児島県サツマハギ(マメ科)集団における花粉染色性を用いた雑種判別の試み



  • 大学構内の芝生に発生するアガリクス属キノコの調査
  • ヒゲカビ塩素酸耐性株におけるグルタチオンの測定
  • 大学周辺に生育する植物数種の菌根について

  • ヒゲカビの有性生殖とグルタミン合成酵素遺伝子の発現解析



  • ミヤマオダマキの草丈に影響を与える環境要因

  • 清崎野生テンの果実食と種子摂食による発芽の影響



樹木生理生態学研究室 (依田研)

  • 野外調査において位置情報の把握に利用できるスマホ用GPSアプリの選択
  • 石巻専修大学演習林におけるヤブツバキの生育状況の調査
  • 樹木の3Dモデルの制作
  • クヌギとコナラの成長に伴う樹幹表面の構造変化の比較解析



  • 樹高成長の数理モデル:近畿地方のスギへの応用




最後は記念撮影

おつかれさまでした!

 

次はポスター発表会です。

今日の質疑応答を糧に、皆に理解してもらえる楽しい発表を目指してください。



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【関連ブログ記事】 #卒業研究


2024年2月15日木曜日

卒業研究発表会(海洋生物コース) 実験系からフィールド調査まで、多彩な研究内容


2月6日(火)に海洋生物コースの卒業研究発表会が行われました。

発表者は5研究室から23名。対象生物はプランクトン、ベントス、魚類、海藻、ニホンザルと様々、アプローチも実験系からフィールド調査まで、多彩な研究内容の発表が行われました。

当日は教員と4年生、来年に発表を控えた3年生や次の世代の2年生などの70名以上の参加者がありました。

太田先生(海洋浮遊生物学)から
開会の挨拶

 

 

卒業研究 発表タイトル


第1セッション

  • 重金属を除去したホタテ貝ウロを添加した飼料の投与がギンザケの成長と健康に及ぼす影響

  • 北日本太平洋沿岸におけるミミズハゼ属魚類の生息状況

  • メバルの稚魚は鏡の中の自分が分かるのか?

  • とあるカニの性的二型 ~クロベンケイガニのすね毛の雌雄差~

  • 小さい雄は大きくなるのか:フジツボ類における矮雄の成長モデル

  • 免疫刺激によるマガキ血球数の変動


第2セッション

  • 「海のダンゴムシ」はなぜ丸くなるのか? ~球体化による捕食回避機能の評価~

  • 酸性海水への曝露はアブラツノザメの鱗の形態にどのような影響を及ぼすか?

  • ホタテガイ血漿タンパク質の特性

  • ホタテガイ晶桿体タンパク質の量と特性

  • 未成熟トマトの投与がギンザケの摂餌行動、生理機能およびストレス応答に及ぼす影響

  • 金華山島の潮間帯における海藻群落の季節的および鉛直的変動の評価


第3セッション

  • カイアシ類はマイクロプラスチックをうまく摂食できない?

  • 舞根湾におけるDinophysis属渦鞭毛藻の昼夜鉛直分布について

  • 舞根湾で採集されたヒメタツの形態および遺伝的特徴

  • 舞根湾におけるミズクラゲ群集の昼夜鉛直分布について

  • スギ花粉は海洋細菌にどのような影響をもたらすか?

  • 国内に生息するHeteromastus属多毛類(イトゴカイ科)のDNA解析による分類学的検討


第4セッション

  • 飼育餌料の違いによるアルテミア の成長、生残、同化効率

  • 宮城県金華山におけるニホンザルの海岸利用

  • ホタテガイ血漿タンパク質の電気泳動像

  • ホタテガイ晶桿体タンパク質の抽出

  • 宮城県定川河口域で釣獲したスズキの胃内容物調査


  研 究 室  

2022年度から海洋生物コースは「海洋生物・環境コース」に。研究室も7つの研究室に拡充されました(研究室一覧)。




質疑応答も活発に行われ、どの学生もしっかりと質問に答えることができていました。

卒業研究を始めてから1年、堂々と発表し受け答えする4年生の姿に大きな成長を感じました。

 



最後はみんなで記念撮影

 

どれも素晴らしい発表でした!

お疲れさまでした!


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2024年2月14日水曜日

卒業研究発表会(動物コース) 自分の研究を「自分の言葉」でしっかりと説明

 2月5日(月)に、本年度の卒業研究発表会の第一弾、動物コースの発表会が行われました(2022年度から動物・植物コースに拡充・渡辺研究室は自然科学コース)。

学部生と教職員合わせて85名以上が参加し、4年生21名の研究発表を聞きました。

本年度の学生の研究テーマは、細胞性粘菌の形態・増殖、ゾウリムシの形態、シカの細胞や遺伝子、野生哺乳類の生態、さらに数理モデルなどさまざま。

研究対象やテーマの多様性の高さが、このコースの特徴と言えるでしょう。

 

最初のうちこそやや緊張気味の表情でしたが、一年間の成果を堂々と発表し、質問に対して「自分の言葉」でしっかりと説明していました。

初めのうちは先生に言われるままに作業していた人も多いかもしれませんが、一年の間に自分の仕事として取り組むことができるようになったのは、大きな成長だと思います。


発表が終わると、会場の学部生からたくさん手が上がりました。


今年は例年に比べて2年生の姿が目立ちました。先輩の研究は、来年度の研究室選びの参考になるはずです。

 

 

 学生からの質問の後は、先生からのコメント。


鋭い質問に緊張します…

 

動物コースの3年生は、会場係をしながら発表を聞いていました。お疲れさまでした。

先輩達のプレゼンを見て、一年後の自分の姿を想像できたでしょうか。

 

 

卒業研究 発表タイトル(一部)

 
  • 牡鹿半島周辺道路におけるニホンジカ(Cervus nippon)の衝突事故の発生要因

  • 細胞性粘菌(Polysphondylium violaceum)子実体の輪生子数は移動体サイズと相関するか

  • 宮城県北部と南部、北上川下流域のニホンジカのmtDNA解析
  • 糞虫類による二次散布がニホンザルに散布された種子の発芽に与える影響
  • 同所的に生息するアカギツネ(Vulpes vulpes)とニホンテン(Martes mlampus)の食性と活動時間の種間比較

 

  • 細胞性粘菌(Dictyostelium discoideum)栄養増殖細胞の増殖速度に対する培養温度の影響
  • 培養細胞から人工肉はできるか? ー物理刺激による筋細胞の増殖、分化と極性の制御ー
  • 低酸素低栄養環境で⻑期間培養された粘菌細胞は正常な子実体を形成できる
  • 塩溶液中でのゾウリムシの形態変化


  • 宮城県金華山島のヒメネズミ (Apodemus argenteus) の生態
  • 強度の異なる運動がROS関連遺伝子の発現に与える影響
  • 生息地回復モデルによる絶滅期限の予測
  • コスパの良いクモの巣形 〜エサ獲得効率の数理モデル〜


  • 二ホンジカ (Cervus nippon) が森林の景観構造及び下層植生に及ぼす影響
  • 低酸素低栄養環境で⻑期間培養された粘菌細胞の多細胞体内における細胞選別の検討
  • ニホンジカ幼角抽出液の脂肪前駆細胞に与える影響


  • 環境変化とワニの雌雄の個体数変動:営巣地の拡大縮小モデル
  • 大学敷地内からの細胞性粘菌の単離による季節変動の調査
  • 異なる地域に生息する細胞性粘菌の調査と気候との関連性の検討
  • 宮城県石巻市のニホンカモシカ (Capricornis crispus) の食性



  研 究 室  

 

 

栁先生による総評と閉会の挨拶

 

 

最後に4年生全員で写真を撮りました。

お疲れさまでした!

 

次はポスター発表会がんばってください!

(戦いはまだまだ続く…)

 



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