動物生態学研究室研究室の辻准教授は、2010年からインドネシア・西ジャワ州パガンダラン自然保護区で霊長類をはじめとする野生動物の調査を続けています。
今回、ボゴール農科学大や麻布大学の研究者とともに、インドネシア固有のシカであるルサジカ(Rusa timorensis)の1年間の食性を調べ、Austral Ecology 誌に報告しました(論文はこちら)。
ルサジカの野生個体群を対象とした食性評価は、世界初です。
ルサジカ (Rusa timorensis) |
「シカ」というと、私たちは奈良公園のシカをイメージしますが、「シカ」は正式にはニホンジカ (Cervus nippon) といい、東アジアの固有種で、シカの仲間はニホンジカ以外にもたくさんー世界中に30種以上ーいるそうです。
サンタのそりを引くトナカイ (Rangifer tarandus) や、大きな角を持つヘラジカ (Alces alces) もシカの仲間です。
シカ類の生態学な研究、そして最近では個体群の管理に関する研究は、欧米の研究者によって活発に行われています。
もともと温帯起源のシカ類ですが、 サンバー(Rusa unicolor)やアクシスジカ(Axis axis)といった少数の種は、例外的に熱帯地域に分布しています。
シカ類の生態適応を考えるうえで、「分布の南限」にいるシカの研究は不可欠ですが、シカ研究者の多くが欧米を拠点にしているため、これまで熱帯産のシカ類の採食生態に関する研究はあまり行われていません。
今回、ルサジカの糞を一年間集めて内容物を分析したところ、雨季の糞にはイネ科の草本が多く含まれていましたが、乾季の糞では果実の割合が増加しました。このことから、ルサジカは雨季よりも乾季のほうが食物に恵まれていると考えられます。
温帯地域に暮らすニホンジカの場合、夏は食物が豊富なのに対して、冬は樹皮などしょぼい物を食べています。熱帯と温帯では、シカたちの食糧事情がかなり異なっているようです。
さらに辻先生は、ジャワルトンというサルが樹上で食べているとき落とした葉を、地上にいるルサジカが食べるという種間関係『落穂拾い』についても報告しています。
『落穂ひろい』は辻先生がかつて金華山のニホンザルとニホンジカで報告した関係ですが、遠いインドネシアでも同様の種間関係があるというのは、非常に面白いですね。
辻大和 霊長類研究所助教の研究内容が、中学校国語の教科書の教材になりました。(2012年4月4日) (京都大学のホームページ)
写真の上のほうにいるのがジャワルトン。 ルトンが落とした葉をシカが食べる。 |
辻先生の動物生態学研究室では、今後もインドネシアの動物たち(サルの仲間、ヒヨケザルなど)の研究を継続します。
外国での研究に興味のある学生は、ぜひ大学院で海外調査に挑戦してください!
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取材を受ける辻研の富山さん |
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