海洋ベントス学研究室の大学院修士1年の高橋陽大です(学年は2025年度、当時)。
12/6~12/7に開催された「日本生態学会東北地区第70回岩手大会」で口頭発表を行い、なんと最優秀賞を受賞することができました!
今回は受賞の報告も兼ねて、これまでの研究の過程について紹介させていただきます。
| 学生発表31件の中から、最優秀賞を受賞 |
身近なのに謎が多い「コケゴカイ」を研究
私は、学部3年で研究室に配属してから、身近な海にたくさん生息しているのにあまり生態が知られていない「コケゴカイ」という生き物に興味を持ち、研究対象にすることに決めました。
コケゴカイは海に生息する環形動物である多毛類(ゴカイ類)に分類される種で、日本各地の干潟でよく見られる普通種ですが、これまであまり研究が行われておらず、謎が多く残されている生物です。
卒業研究では、コケゴカイの基本的な生態情報として寿命や成長、繁殖期などを明らかにするために、地元の松島湾で個体群動態を追跡する調査を開始しました。
この調査は2024年1月の吹雪の夜から始まり、現在まで毎月の定期調査を継続しています。
![]() |
| 初めての調査は吹雪の夜 |
「自分の殻を破りたい」 学部時代から学会発表に挑戦
日本プランクトン学会・日本ベントス学会合同大会
初めての学会発表は学部4年時(2024年)の9月に行われた日本プランクトン学会・日本ベントス学会合同大会でした。
この時の学会のイメージはベテラン研究者が集まって高度な議論をするというものであったため、学会発表はとてもハードルの高いものだと思っていました。発表に申し込んでからはとても不安な日々でしたが、自分の殻を破りたいという思いで準備や発表練習を重ね、無事に初めてのポスター発表を成功させることができました。
日本生態学会
その後、2025年3月に開催された日本生態学会札幌大会でもポスター発表を行いました。
初めての学会ポスター発表では、結果や考察を単調に話すだけになりがちで、研究の面白さを十分に伝えることがでなかったのではないかという反省があったので、2回目の学会発表ではなるべく相手を見て話し、双方向のやり取りであることを意識して発表を行いました。
前回よりは緊張もせずに自信をもって発表することができたと思いましたが、さまざまな分野の研究者が参加する学会であったため、ベントスのことを詳しく知らない方々にも研究の面白さを伝えるには、まだまだ発表の仕方に工夫が必要であると感じました。
どちらの学会でも発表を通して様々な気づきや学びがあり、他大学の学生や研究者の方々と交流することで研究の世界の広がりや研究分野の多様さを実感するとても貴重な経験ができました。
採択率11%の研究助成金も獲得!
私は早い段階で大学院への進学を決めていたため、大学院での研究活動を充実させるために、研究計画を練り上げて2024年12月に水産無脊椎動物研究所の育成研究助成に応募しました。
翌年3月には助成対象者に採択していただき、4月から大学院での研究をスタートさせました。
調査フィールドを広げ、意欲的に活動
大学院では、毎月の松島湾での個体群動態の追跡調査は継続しつつ、コケゴカイの分類学的再検討や繁殖生態の解明に向けた研究も新しくスタートさせました。
また、松島湾以外でのコケゴカイの生息状況や個体群動態を調べるために、県外の調査にも積極的に参加したりと、意欲的に楽しく活動に取り組んでいます。
松島湾で行っている個体群動態の調査を3月と11月に北海道のコケゴカイ北限の地(有珠湾)でも行いました。
![]() |
| 3月 北海道、有珠湾(コケゴカイ北限の地) |
![]() |
| 11月 |
![]() |
| 松川浦サイト(福島県)での 環境省モニタリングサイト1000干潟調査 |
日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会
2025年9月に開催された2025年日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会では、コケゴカイの分類の再検討の成果について口頭発表を行いました。
私はもともと大勢の前で話すのが苦手であったため、学会での口頭発表は私にとっては非常に大きな挑戦でした。初めての口頭発表の会場はとても広い部屋だったので、とても緊張してしまいましたが、何度も発表練習を重ねて本番に臨んだため、言葉に詰まりつつも無難に発表を終えることができたと思います。
この発表の内容は、コケゴカイの分類は1940年に国内で初記録されてからの長い間曖昧なままであり、見直す必要があるというものでした。私の研究の結果、コケゴカイは日本の干潟の普通種ですがまだ学名のない未記載種であることが示唆されましたので、今後は新種記載を目指して頑張りたいと思います。
80年以上謎だった「生殖群泳」の謎を解明!
コケゴカイの繁殖生態の研究では、コケゴカイが「生殖群泳」を行うのかどうかについて調べました。
「生殖群泳」とはゴカイ科の多毛類に広く見られるもので、遊泳に適した体に変態した雌雄の個体が繁殖のために同調して一斉に水中に泳ぎだし、放卵放精を行うという繁殖行動です。コケゴカイの生殖群泳はこれまでまったく確認されておらず、本種は生殖群泳を行わない種であると考えられていました。
しかし、これまでの調査によって生殖変態をしたコケゴカイの個体が採集されていたため、実はコケゴカイも生殖群泳を行うのではないかと思い、2025年の夏の夜中に頻繁に干潟に通ってコケゴカイの生殖群泳を捉えるための調査を始めました。
![]() |
| 夜中の調査 |
初めのうちは何の成果もなく、「大変な研究を始めてしまった」と後悔が頭をよぎることもありましたが、それでもあきらめずに遊泳のタイミングを予測しながら干潟に通い詰めました。
その結果、ついにコケゴカイの生殖群泳の観察に成功しました!!!
これは、国内初記録から80年間以上わたって謎であったコケゴカイの繁殖生態の核心部分を解明する初めての発見です!!!
日本生態学会 ベントス研から学生15名が参加
そして、この研究成果を2025年12月に開催された日本生態学会 東北地区大会(岩手大会)で発表を行いました。
今回で学会発表は4回目、口頭発表は2回目の挑戦です。今までの経験と反省を生かして、「どうすれば今回の発見の面白さや重要性を伝えられるか」を考えながら準備を進め、発表に臨みました。
![]() |
| コケゴカイ(環形動物門:ゴカイ科)における 生殖群泳と生殖変態の初記録 —長年知られなかった繁殖生態の解明— |
これまでの経験や念入りな準備のおかげで、今回は声のトーンやテンポ、表情にまで意識を行き渡らせ、研究成果を思う存分に発表することができました。
発表が終わってからも多くの質問をいただき、たくさんの人に興味を持っていただけたことが実感できました。
この大会では、ベントス研から15名の学生が参加し、私のほかに以下の5名も発表を行いました(学年は当時)。
- 大見川遥(M2)行動観察による海産等脚類の球体化の捕食回避機能および乾燥耐性機能の評価
- 大山雄太郎(M2)金華山島のニホンザルにおける海藻採食行動はどんな時に多く見られるのか —各海藻類の利用可能性からのアプローチ—
- 小田晴翔(M2)クロベンケイガニにおける性的二型の進化要因の検討 ―社会行動からのアプローチ―
- 甲地由樹(B4)汽水性多毛類ヤマトスピオの地理的遺伝構造
- 谷川涼太(B4)宮城県石巻市渡波海岸における海岸ベントス相
![]() |
| 東北地区大会(岩手大会)に参加したベントス研メンバー |
そして発表の翌日、学生発表賞の表彰がありました。
学生の発表31件の中から2件の最優秀賞と4件の優秀賞が選出され、なんと、私も最優秀賞を受賞することができました!!!!!
そして、同じ研究室の大見川先輩(修士2年)も優秀賞を受賞しました!
![]() |
| 大見川先輩とダブル受賞! |
大学ホームページでも取り上げられました
さらなる研究へ
長くなりましたが、受賞の喜びを噛みしめつつ、私の研究の軌跡を紹介させていただきました。
これまでたくさんの貴重な経験をさせてもらい、さまざまな力を身に着けてくることができました。しかし、まだまだやるべきことは残されていますので、慢心してはいられません。今後も研鑽を積み重ねさらなる成果が上げられるよう、頑張ります!!!
【リンク】
【関連ブログ記事】














