「ヤッコカンザシ」に続いて、新種記載シリーズ第2弾。
石巻専修大学 ISUムービー
ホヤノポリドラは伊豆大島のダイバー星野修さんが発見したホヤ類と共生するスピオ科の多毛類です。
星野さんの著書『海の寄生・共生生物図艦』で初めて紹介され、その後、『海の極小!いきもの図艦』で「ホヤノポリドラ」という和名が付けられました。
ホヤから黄色い触手を出すホヤノポリドラ |
2016年に始めて星野さんからホヤノポリドラの話を聞いたときには、半分疑ってしまうほど驚愕したことを今でも覚えています。
というのも、ホヤ類と共生する種はスピオ科ではこれまで全く知られていませんでしたし、多毛類全体でも非常に珍しいものだったからです。
しかもこの種は、ホヤ類とただ共生するだけではなく、被嚢(ひのう)と呼ばれる硬い繊維質(セルロースが主成分)の殻の部分に穴をあけてその内部に生息するという変わりようです。
始めて星野さんから写真を見せてもらったその瞬間に、「新種」であることを確信しました。
ホヤから取り出したホヤノポリドラ |
その後、CTスキャンによって被嚢内部の弘道(巣穴)の状態の撮影を行ったり、この種がセルロースを分解する酵素であるセルラーゼをもつことを明らかにしたりという実験を行い、だいぶ時間がかかってしまいましたが、今年になってようやく、世界で2例目の被嚢穿孔性多毛類の新種として発表することができました(学名は Polydora tunicola :被嚢に住むポリドラ属という意)。
この種が発見されたのは水深 5~40 m の岩礁域であり、潜水調査を行わない限りは容易に観察・調査できない場所です。
星野さんという類い稀なる観察者による小さな生き物たちに注目した日々の潜水調査観察が本種の発見につながりました。
研究者とダイバーがタッグを組むことで、身近な海からも興味深い海洋生物がまだまだ発見されると思います。
【大学ホームページ関連記事】
- 【研究】世界2例目となる被嚢穿孔性のゴカイ類を発見~ホヤ類が作る水流を利用して餌を採るゴカイ類としては世界初の報告~ より詳しく知りたい方は、リンク先の「詳細資料」をご覧下さい
【参考文献】
- 星野修(2020)海の極小!いきもの図艦.築地書館 築地書館のサイトへ
- 阿部博和(2020)書評「海の極小!いきもの図艦:誰も知らない共生・寄生の不思議」.日本ベントス学会誌、75: 73-74. こちら で読むことができます
- 星野修・齋藤暢宏・長澤和也(2016)海の寄生・共生生物図艦.築地書館 築地書館のサイトへ