皆さんこんにちは。三角池調査班、広報担当の八木澤(やぎさわ、新4年)です。
今回は、三角池に生息している外来種のチュウゴクスジエビを食べてみた、という人が現れたので体験レポートをお届けします!
三角池調査班って何?という方は こちら(三角池調査班の紹介)
- はじめに…チュウゴクスジエビとは?
- 調理編……チュウゴクスジエビをかき揚げに
- いざ実食…果たしてそのお味は?
- おわりに…外来種問題へ
- おまけ
はじめに
チュウゴクスジエビ(Palaemon sinensis)は、中国、韓国などに生息する淡水性エビ類である。
本種は「シラサエビ」あるいは「モエビ」といった呼び名で釣り餌として販売されていたエビの一種で、2005年に静岡県で発見されて以降、宮城県をはじめとする各地で確認されており、生態系への悪影響が懸念されている。
今回は、三角池にも生息しているこのチュウゴクスジエビを食べてみて、食材として利用できそうか考えてみよう。
※ 淡水性の寄生虫は危険なものが多いので、淡水の生物を食べるときは絶対に生で食べないように!!
チュウゴクスジエビ(Palaemon sinensis)とスジエビ(Palaemon paucidens)の違い
まずは2種類のエビを見比べてみよう。
展示用のグリセリン標本 |
違いがわかったかな?
上がチュウゴクスジエビ(外来種)で、下がスジエビ(在来種)。
チュウゴクスジエビとスジエビは、頭胸甲(写真の赤丸で囲んだ部分)側面の縞模様で見分けることができる。チュウゴクスジエビ(写真上)は上端がかぎ状に曲がるのに対して、スジエビ(写真下)は直線的になっている。
また、大顎に生える触覚の有無で見分けることもできるが、スマホのカメラでは上手く撮れなかったので今回は省略。実際に見てみたい人は三角池調査班へ参加しよう。
調理編
今回は泥抜きをしたチュウゴクスジエビをかき揚げに、ついでに網に入った国内外来種のモツゴ(Pseudorasbora parva)を天ぷらにして食べることにした。
ちなみに、下の写真が東北地方でも生息が確認されているモツゴ。東北地方に生息するシナイモツゴという淡水魚の生息地に侵入すると、交雑してシナイモツゴを絶滅させてしまうといったことが報告されている。
何度か水洗いした上で水を切り、チュウゴクスジエビが完全に浸かるまで日本酒(料理酒でも可)を注ぐ。こうすることで臭みを取りつつ糞を出させることができるのだ。
デナガエビで同じことをやると結構暴れるので、飛び跳ね防止にラップを被せてみたがチュウゴクスジエビには必要ないみたいだ。
日本酒を吸って動かなくなったら、ざるに出して再度水洗いし、天ぷら粉に入れ、少量ずつ水を足して水分量を調整する。
180℃ぐらいに熱した油に入れて揚げていく。
IHコンロが汚いのはご愛嬌 |
なかなかいい感じじゃないか? |
試しに少し食べてみたところ、分厚い場所はもったりとしていてサクサク感が足りない。欲張って厚くしすぎたみたいだ。
という訳で、包丁で切って二度揚げ。
「モツゴの天ぷら」と「チュウゴクスジエビのかき揚げ」完成!!!
手前:モツゴの天ぷら 奥:チュウゴクスジエビのかき揚げ |
いざ実食
なかなかそれっぽくなったじゃないか。まずはモツゴの天ぷらから食べてみよう。
「あ、普通に美味いわこれ」
なんというか、モツゴの天ぷらはワカサギやホンモロコの天ぷらに比べ、味や香りにほとんど特徴がないので「普通に美味い」という表現が一番妥当なのではないだろうか。
食卓の主役にはなれずとも、名脇役としてのポジションなら十分狙えるんじゃないかな。
さあさあお待ちかね、かき揚げも頂こう。
果たしてそのお味は・・・!?
「か、殻の味しかしない・・・!?」
辛うじてエビの味は感じられるが、超薄味なのである。
というか、個体の大きさに対して殻が厚いのか小型の個体ではエビフライの尻尾の部分についている殻だけを食べているような感覚になるし、大型の個体ではエビ特有のぷりぷり感が非常に弱い(小型な上に止水域に生息しているのが原因?)ので、ぶつんぶつんと口の中で弱々しくちぎれていく割に、殻はいつまでも口の中に残るという状態であまり気持ちの良いものではないのだ。
記憶を頼りにエビ類の殻の硬さを並べると、サクラエビ<スジエビ<テナガエビ≦チュウゴクスジエビ<ホッコクアカエビ(アマエビ)といったところだろうか。
チュウゴクスジエビはサクラエビより少し大きいぐらいにもかかわらず、殻は比較的硬い方らしい。
ここまで味が薄い、殻が厚いなどとかなり酷評したものの、チュウゴクスジエビは食感の悪さが主な課題なので、原型が残るかき揚げよりもミキサーで粉砕してペースト状にしたものに上新粉と藻塩を混ぜて揚げてみたら結構美味くなるんじゃないかと思う。
とはいえ、手間を考えると食材としての活用はあまり期待できなさそうではあるのだが・・・
おわりに
チュウゴクスジエビは、在来のスジエビに非常によく似た姿をしていることから水面下で置き換わりが起きていてもほとんどの人が気が付かない可能性がある(実際、三角池調査班もしばらく気が付かなかった)。
水圏の外来種問題は人と生活圏の異なる水中で起こる以上、異常に気付くまでにどうしてもタイムラグが発生してしまう。
水域での異変に気付くには多くの人が水辺に関心を持つことが重要だ。
そこで、今この記事を読んでいるそこの君、今年から三角池調査班に参加して三角池の保全に携わってみないか?
活動を通じて「生物多様性」「外来種問題」「環境保全」といったテーマについて少しでも興味を持っていただければ幸いだ。
おまけ
チュウゴクスジエビを食べた結果、食材としての活用はあまり期待できないと考えられたので、本来の使い方である釣り餌として石巻の海で使ったら、10cmぐらいの小さいアイナメが釣れた(小さいので逃がした)。
チュウゴクスジエビについてもっと知りたい方は、以下の参考資料をどうぞ。
- 斉藤英俊・鬼村直生・米谷公宏・清水識裕・小林薫平・児玉敦也・河合幸一郎(2017)、外来釣り餌動物チュウゴクスジエビ Palaemon sinensis の出現状況、広島大学総合博物館研究報告9、33-39
- 長谷川政智・森晃・藤本泰文(2016)、淡水エビのスジエビ Plaemon pausidens に酷似した外来淡水エビ Plaemonetes sinensis の宮城県における初確認、伊豆沼・内沼研究報告10、59-66
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