大学キャンパスで撮影されたキツネの幼獣
※キツネが写っているのは最初の15秒のみ
(撮影:宍戸直登)
生物科学科の卒業生、高橋佑太朗君(R5年度卒業)は牡鹿半島でキツネとテンの生態の比較を行いました。
調査を担当した高橋佑太朗君 |
2022年から2023年にかけての一年間、月に一回調査地を訪問してキツネとテンの糞を採集。
彼らの食物構成を評価するとともに、調査地にセットしたセンサーカメラの映像解析から、両者の活動時間や土地に対する執着の程度を評価しました。映像の解析については、先輩の八木澤凌君(R4年度卒業)が集めた映像もデータセットに加えて解析しました。
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林内にセットしたセンサーカメラ |
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センサーカメラの補足データを提供した八木澤凌君 |
キツネの糞 白っぽい色をしています 新鮮なものは鼻をつく匂いがします |
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テンの糞 鉛筆と同じくらいの太さです 果実が多く含まれ、甘酸っぱい匂いがします |
糞から出現した食物の残渣
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果実 |
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昆虫 |
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鳥類 |
分析の結果、以下の3つが明らかになりました
- キツネの食物は哺乳類が中心だったのに対して、テンの食物は果実と節足動物が多く含まれていた ➡ 食べ物が異なる
- キツネはどの時間帯でも撮影されたのに対して、テンは明け方と夕暮れに頻繁に撮影された ➡ 活動時間が異なる
- キツネは春の撮影頻度が低かった(≒調査地をあまり使わなかった)のに対して、テンは調査期間を通じて撮影された ➡ 調査地に対する執着が異なる
肉食獣であるキツネとテンとが同じ場所で共存できる要因には、このようなニッチの分割が作用していると考えられます。食肉類の行動は、げっ歯類や植物への影響を通じて、森林生態系に影響します。
地元の学生が、石巻の生き物の暮らしや生態系のメカニズムを自らの手で解明していく。地域に根ざした研究活動に、本学の存在意義があると思います。
この成果は、日本哺乳類学会の英文誌 Mammal Study に掲載されました。
- Takahashi Y., Yagisawa R., Tsuji Y. (accepted) Niche separation of sympatric carnivores—red foxes (Vulpes vulpes) and Japanese martens (Martes melampus)—in northern Japan. Mamm. Study
大学での思い出として特に印象に残っているのは、研究室で行った動物の解剖(クマやキツネ)です。さまざまな動物を間近で観察する貴重な機会となり、初めてクマを見たときはその大きさに衝撃を受けました。
卒業研究ではテンとキツネのデータを収集しましたが、キツネがカメラに一枚も映らないなど苦労が多く、研究の進捗に大きな不安を感じていました。そのため、発表と卒論を無事に終えたときは心から安堵しました。
研究は大変でしたが、調査で野生動物と関われたことは動物好きの私にとって素晴らしい経験でした。さらに、この研究が学術的に認められ、広く発信されたことは大変嬉しく思います。大学で生態系や動物と人間の関係性について深く学び、計画力、遂行力、文章力を鍛えることができたと感じています。
大学ではサークル活動や課外実習など、様々な活動を行いました。中でも卒業研究が思い出として残っています。卒業研究では収集したデータをもとに分析し、より良い結果にするために「責任感」が身につきました。今のシステムエンジニアの仕事でも大いに役立っています。
研究室で辻先生とコーヒーを飲みながら研究の話をしたことも思い出です。自分の考えとデータ照らし合わせて過去の研究をもとに辻先生に話したら勉強が足りないと言われたのはいい思い出です(笑)ちなみに毎回コーヒー淹れていたのは僕です。
卒業研究から分析力、思考力、伝達力といった力が鍛えられましたが、中でも責任感が最も身に付きました。自分の研究を世に発表するということは生半可な内容ではいけないので、それなりの責任を伴う仕事だと思います。石巻専修大学での研究を通して、そのような仕事を全うするという良い経験をさせて頂きました。
(撮影:高橋佑太朗、八木澤凌、岩淵友哉)
【関連ブログ記事】
【リンク】
- 石巻の島から考える、「サルと生き物」の関係性(辻大和教授) GATEWAY探究百科