海洋ベントス学研究室の学部4年(令和6年度)の高橋陽大と遠藤祐人です。私たちは3/15~18に札幌で開催された「第72回日本生態学会大会」に参加し、発表を行ってきましたのでご報告します。
学会の看板の前で記念撮影 左から高橋陽大さん、遠藤佑人さん 大見川遥さん(海洋ベントス学研究室 大学院修士1年) 畠山紘一さん(海洋浮遊生物学研究室 大学院修士1年) |
生態学会に参加してみて
植物も動物もベントスも含む様々な生物の生態に関する研究発表があり、大会の規模の大きさに驚きました。
生態学会は国際交流に力を入れて取り組んでおり、発表者は日本全国からだけでなく海外の研究者の方も参加していました。そのため、英語での口頭発表や英語で書かれたポスター発表などがあり、研究で世界がつながっていることを実感しました。
ポスター発表では、思わず足を止めてしまうようなインパクトのあるポスターや、話の流れがすっと入ってくるようなポスターなど、他分野の方々が集まる学会だからこそ、初めて発表を聞く人にも伝わるように意識した丁寧なポスターが多くありました。
会場となった札幌コンベンションセンター |
ポスター発表をしてみて 高橋陽大(大会3日目に発表)
私は「宮城県松島湾におけるコケゴカイの個体群動態」というタイトルでポスター発表を行いました。昨年のベントス学会に続いて2回目の学会発表だったため、余裕を持った発表ができました。
生態学会では様々な分類群を扱う方々が集まるため、植物や陸上動物など今まで交流がほとんどなかった方々とお話しするきっかけになりました。そのような専門外の方々にも海洋ベントスの魅力を伝えられるように工夫して発表を行いました。
研究対象とする分類群が異なっていても、個体群生態学など研究分野が近かったり,似ている手法を使っている方々が聞きに来てくださり、貴重なご意見をいただくことができました。
発表内容:宮城県松島湾におけるコケゴカイの個体群動態
コケゴカイは日本の干潟の代表種ですが生態についての研究がほとんどされておらず、不明な点が多くあります。
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コケゴカイ |
九州で行われた先行研究によって寿命は1年であることが示されていました。しかし、東北の個体群では体サイズが大きい個体がみられることから、寿命が異なっているのではないかと考え、宮城県でコケゴカイの個体群動態を調べることで寿命や繁殖期について考察しました。
その結果、松島湾のコケゴカイの寿命は最大で2年あることが明らかになり、九州と環境温度の違いが寿命に影響している可能性が考えられました。
私は陸生等脚類の捕食回避戦略について発表しました。
学生として最後の大イベントで、等脚類の魅力を多くの方に知ってもらうべくポスターデザインや説明の仕方を工夫しました。その結果、行動分野において優秀賞(ポスター賞)をいただくことができました! ポスター賞受賞者一覧はこちら
また、私と研究室同期の鈴木優香さんが描いたダンゴムシやコツブムシ(等脚類)のイラストをポスターに使用したところ大変好評で、多くの方からお褒めいただきとても嬉しかったです!
学部生の最後にこのような大きな学会で発表でき、多くの方々とお話出来て大変貴重な経験となりました。
発表内容:陸生等脚類の肉食性土壌動物に対する捕食回避行動
ダンゴムシが丸くなるのは捕食回避のためと言われていますが、どんな捕食者に対して、どの程度防御として有効なのかを示した研究はほぼありませんでした。
また、丸くなるダンゴムシと丸くならないワラジムシは同所的に生息しますが、競争によって一方が排除されずに共存が果たされていることについても合理的な説明はなされていません。
オカダンゴムシ |
ワラジムシ |
そこで本研究では、ダンゴムシの球体化が捕食回避にどれだけ寄与しているか、ダンゴムシとワラジムシで捕食回避戦略に違いはあるのかを考察しました。
その結果、球体化は捕食者であるハサミムシに対する捕食回避として有効であること、ダンゴムシは防御型、ワラジムシは逃走型の捕食回避戦略をもつことが明らかとなりました。
おまけ
学会参加前には、コケゴカイの北限生息地である有珠湾でコケゴカイ調査も行いました。
ソーティングの様子 |
また、昭和新山クマ牧場やサンピアザ水族館など、北の大地を少しでも味わおうと時間を見つけて色々な場所を巡りました。
煙の立つ昭和新山 |
飼いならされたクマ牧場のヒグマ |
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札幌市にあるサンピアザ水族館にも行ってきました! |
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