2024年10月25日金曜日

3年生の海洋生物・環境科学実習(海洋編)を行いました! 海洋観測・ベントス調査

 

夏休み期間中の8/21(水)に海洋生物・環境科学実習(海洋編)を行いました。別日に、伊豆沼で環境保全に関する実習も行っています。

この実習は、海洋生物と環境との関わりについての理解を深めることを目的としており、石巻市北上町十三浜の追波湾と大室磯浜で、2グループに別れて乗船による海洋観測実習と磯場でのベントス(底生生物)調査を実施しました。


大学に集合し、
バスに乗車して実習地に向けて出発



追波湾での海洋観測 

この実習のねらいは、船の上から直接自分の力で海洋観測を体験することで座学を通して学んだ海洋環境の理解を深めてもらうことです。

海洋観測には15名の3年生が参加しました。天気は晴れ。風、波のうねりも小さく、まずまずのコンディションの下、チャーターした2艘の漁船に分乗して10:30に相川漁港を元気に出発。

笑顔で観測点に向かう学生たち

この日は大潮で潮の動きが大きく、追波湾沖には沖の海水と河口からの汽水の境に浮遊物が集まったできた“潮目”がはっきりと見られました。
 

河川水の影響が強い新北上川の河口と三陸沿岸水の影響が強い追波湾沖に観測点を設定。

それぞれの測点で、様々な環境因子(水深、水温、塩分、密度、クロロフィル、酸素、水中光量子)の測定やプランクトン採集を行いました。


水中光量子計の説明を聴く学生

採水器で水深50mの海水を採取

水深50mの海水は表層より4℃低いので
大分冷たく感じます

白い透明度板を海に下ろして
見えなくなった深度を測ります

プランクトンネットで動物プランクトンを採集


 波に揺られる船の上での立ち仕事は足に力が入り、水深50mの海底まで観測機材を下ろしては引き上げる作業は体力を使います。

 

釣船と思いこみ、魚が揚るのを
待ち構えているたウミネコたち
 

観測で得られたデータは、大学に持ち帰って解析。2つの測点での鉛直的環境の変化や生物量にどのような違いが見られるかを調べ、海の環境理解を深めていきます。

揺れる足場、底層の冷たい海水、潮の香り、波しぶきの味、ロープを通して感じる海の流れや深さなどほとんどの学生にとっては初めての経験ばかり。観測結果の数値データからだけでは分かり得ない本当の海の環境を体感することができたことでしょう。


学生からのコメント

  • 実際に体験して、サンプル採取の大変さを実感できて面白かったです。
  • プランクトン学や海洋学で習ったことを実際に確かめられる良い機会になりました。
  • 船酔いであまり作業に参加できませんでしたが、海の青の濃さが違っていたり、潮目を見たりすることができて良い経験になりました。
  • 小さなころからフェリーのような船にはよく乗っていたため、船酔いはしないと考えていたが、いざ小型船に乗ってみるとよく揺れ、まったくの別物の乗り物だったのだと実感した。





大室磯浜のベントス調査

この日は大潮で最干潮位は10:47に16 cm。絶好の磯観察日和でした。

実習では4人でグループを組み、FランクからSSSランクまで順に、お題のベントスを探して見分けていく「ベントスクエスト」を行いました。

お題のベントスを探す学生達

ほとんどの学生にとって特定のベントスを探したり見分けたりするのは初めての経験で、どんなところに住んでいるのかイメージができなかったり、似ている種との区別で混乱したりと、苦戦している様子でした。

誰かがそれっぽいベントスを見つけると、
グループメンバーが集まってきます
 

グループごとに良さそうな場所を見つけて調査を行っていました。同じ磯場の環境でも、ベントスの種によって好みの場所が異なるので、くまなく探していく必要があります。

お題のベントスを見つけたら
写真を撮って記録していきます

飛沫帯の転石下に生息する
キントンイロカワザンショウを探す3年生たち

キントンイロカワザンショウ

 

一番進んだグループはSSSランクのクエストまですべてクリアしていました!

今回学生たちが見つけてくれたベントスたちは以下の通りです。
節足動物門
アカイソガニ
ヒライソガニ
イソガニ
オウギガニの仲間
オオヨツハモガニ
ホンヤドカリ
イワフジツボ
クロフジツボ
イソヘラムシ
ニセスナホリムシ
キタフナムシ
ヨコエビの仲間
軟体動物門
ヒザラガイ
ヒメケハダヒザラガイ
ウスヒザラガイ
ホソウスヒザラガイ
タマキビ
アラレタマキビ
クロタマキビ
イシダタミ
クロヅケガイ
クビレクロヅケ
イガイ
ムラサキインコガイ
レイシガイ
イボニシ
オウウヨウラク
アオモリムシロ
ムギガイ属の仲間
カラマツガイ
ベッコウガサ
コガモガイの仲間
アオガイの仲間
ホソスジアオガイ
キントンイロカワザンショウ
オオウスイロヘソカドガイ
ヤマトクビキレ
スカシガイの仲間
アオウミウシ
アカザラガイ
コベルトフネガイ
マガキ
ケガキ
環形動物門
イソゴカイ属の仲間
オイワケゴカイ
エゾカサネカンザシ
刺胞動物門
ヨロイイソギンチャク
ベリルイソギンチャク
ミドリイソギンチャク
棘皮動物門
イトマキヒトデ
ヒメヒトデ
バフンウニ
キタムラサキウニ
外肛動物門
コケムシの仲間
海綿動物門
ダイダイイソカイメン
ナミイソカイメン
脊椎動物門
ナベカ
アゴハゼ



イトマキヒトデとヒメヒトデ

アオウミウシ

「画像や本でしか見たことがなかった
アオウミウシを見つけて一番興奮した」
という学生も


実際にフィールドに足を運び生物が生息している様子を目の当たりにすることで、学生たちは多くの気づきを得たようでした。


学生からのコメント

  • 今回の実習で磯浜の範囲内で私が思っていたよりも多くの生物が発見出来てすごく驚いた。
  • レッドリストに載るような貴重な生物も発見することができてうれしかった。
  • 生き物の採集をしたことで、磯浜では狭い範囲の中でも種多様性の富んだ生態系が形成されていることがわかった。
  • SAの先輩がどの生物をもっていっても名前がすぐにでてくるのが本当にすごいと思った。※SA=Student Assistant
  • やみくもに探していた1年生の海洋実習とは異なり、この生物ならこの辺りにいるかもしれないと予想をたてながら探すことができた。





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#実験・実習 #海洋生物・環境コース #学生の声

 

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1年次の実習


生物科学科の実習について

1年次の「野外生物実習」は必修科目で、全員が3回の実習に参加します(海洋系、動物系、植物系)。

3年次の実習は選択必修科目で、コースに関係なく、「海洋生物・環境科学実習」「動物学実習」「植物学実習」「生命科学実習」からひとつを選ぶことができます。

海洋生物・環境コースの学生については、これらとは別に3年次の「潜水調査実習」も履修可能です(人数制限あり)。