2025年4月30日水曜日

4月の記事まとめ

構内に約500本の桜
 

入学式、新入生オリエンテーション、大学院生の研究助成採択、水族館イベント、血管の数理モデルなどの記事をアップしました。

 

生物科学科ブログでは、学生・教員の様子から授業・研究の内容まで、学部と大学院の日常風景をお伝えしています。週1~2回程度で更新しています。ブックマークもよろしくお願いします。


新入生自己紹介

採択率11%の狭き門を突破した高橋さん(左)

左から
渡邊先生(漁業生産システム学)
藤原先生(昆虫行動学)
武藤先生(微生物資源学)


   記事をまとめたページはこちら(タグごと、月ごとで記事をピックアップしています。月ごとの一覧は #記事まとめ






















































 


大学ホームページ記事からのピックアップ

約18万冊を所蔵する図書館(大学HPより)



  • オープンキャンパス 情報公開中! こちら(大学HP)

    今年の夏のオープンキャンパスは、6/21(土)6/22(日)、6/29(日)、7/20(日)、7/26(土)7/27(日)8/9(土)8/10(日)、8/24(日)の全9回。このうち、オープンラボがあるのは太字の日程です!




2025年4月28日月曜日

【生物 × 数学】血管の分岐に法則性? 血管のカタチを数理モデルで探る(高校生、大学生向け解説)


私たちの体中に張り巡らされている血管。

全身の血管をすべてつなぎ合わせると、約10万km、なんと地球約2周半にもなると言われています。この血管ネットワークが全身の細胞に酸素と栄養素を運んでいます。

 

そんな血管の「カタチ」に注目してみましょう。

先に行くほど細くなりますが、どのくらい細くなっていくのでしょうか? 何か法則性はあるのでしょうか? 今回は、数理モデルで探る方法を(意欲的な中学生、)高校生、大学生向けに解説します。

 

以下、血管の法則性の説明とその導出の2本立です。少し長いですが、立ち止まりながらじっくり読んでもらえたらと思います。


目次

  • マレーの数理モデル
  • 「血管の3乗則」は何を言っている? 実験してみよう!
  • 付録 血管の最適分岐構造の導き方(興味がある人向け)



マレーの数理モデル

血管であっても、何かしらのパフォーマンスを良くする(省エネ)形態になっていると考えるのが普通です。

まず、血液は比較的ねばねば具合(粘性)が高いので、血管が細いと血液の流れの摩擦抵抗が高くなってしまいます。消費するエネルギーもそれに伴って高くなるでしょう。

また、血管が太く血液が多すぎると無駄になるでしょうし、少なすぎても支障をきたします。

 

その最適なバランスを「数理モデル」で考察したのが、著書『マレー数理生物学入門』で有名な J. D. Murray です。ある意味で最適な分岐の仕方を数学を使って導きました。

血液の流れを考えることから、流体力学という分野の「ハーゲン・ポアズイユの法則」というものを使います(興味がある人向けに、付録で紹介)。ちなみに、本学の3年次の実験で樹木の中の水の流れを扱うときに、ハーゲン・ポアズイユが登場します。

 

マレーのモデルによると、少し大胆な言い方をすれば、体に張り巡らせている血管の半径同士に「三平方の定理もどき」が成り立ちます。式で見てみると、次のような形です。

 
$r_0^{\,3}=r_1^{\,3}+r_2^{\,3}$

ここで、$r_0$ は入口側の血管の半径で、$r_1$、$r_2$ は分岐した出口側の血管の半径です。三平方の定理では2乗(平方)ですが、血管では3乗(立方)になっています。言うならば「三立方の定理」でしょうか。ここでは、「血管の3乗則」と呼ぶことにしましょう。


 
 
 

「血管の3乗則」は何を言っている? 実験してみよう!

この式がどんな意味を表しているのか具体的に見ていきましょう。三平方の定理とほとんど同じと考えると気が楽だと思います。

 

まずは、極端な場合を考えてみよう!

頭の体操として、極端に分岐しないとしてみます。たとえば、$r_2=0$ だとします(出口の片方の半径がゼロ、つまり出口がひとつ)。血管の3乗則 $r_0^{\,3}=r_1^{\,3}+r_2^{\,3}$ に代入すると $r_0^{\,3}=r_1^{\,3}$ となるので、$r_0=r_1$ が得られます(入口の半径と出口の半径が同じ)。これは単に、分岐しなければ、ずっと同じ太さの血管が続くことを意味しています。同様に、$r_1=0$ とすれば、$r_0=r_2$ が得られますね(文字が変わっただけです)。

分岐しない場合($r_2=0$ のとき)
 

それでは、今度は入口の方から考えて、$r_0=0$ とするとどうでしょう(入口の半径がゼロという意味ですが…)。血管の3乗則より $r_1^{\,3}+r_2^{\,3}=0$ となります。$r_1$、$r_2$ は半径でプラスですので、3乗したものもプラスです。足してゼロになるには、両方ゼロである必要があります。つまり、$r_1^{\,3}=0$ と $r_1^{\,3}=0$ が得られ、$r_1=0$、$r_1=0$ となります。入口の半径がゼロなら、分岐した出口の半径もゼロという当たり前な?結果が出てきました。

いかがでしょうか。「血管の3乗則」の雰囲気が少しつかめてきたでしょうか。

 

具体的な数を代入してみよう!

文字のままでは少し分かりづらいかもしれませんので、いろいろと具体的な数を代入してみて、$r_0$、$r_1$、$r_2$ の関係性を見てみます。

分岐した出口の半径をどちらも1にしてみます($r_1=1$、$r_2=1$)。長さの単位は何で考えても一緒になりますので、式をシンプルにするために、ここでは考えないことにします。血管の3乗則より、

$r_0^{\,3}=1^3+1^3=1+1=2$

となります。$r_0^{\,3}=2$ ということは、$r_0$ は3乗して2になる数、つまり $r_0=\sqrt[3]{2}$ です(3乗根2と読みます)。$\sqrt[3]{2}$ の値は具体的にいくつでしょうか。

少し復習:$\sqrt[3]{□}$ は「3乗して□になるもの」という意味ですので、たとえば、$\sqrt[3]{8}=2$(3乗して8になるものは2)、$\sqrt[3]{27}=3$ です。

それでは、3乗して2になるものは… 電卓をたたくと、約 1.26 となります。$1.26\times 1.26\times 1.26$ が約 $2$ ということです。

$r_0=1.26$、$r_1=1$、$r_2=1$

いろいろ試してみると分かってくることがありますので、次は $r_1=1$、$r_2=2$ としてみます。3乗則より、

$r_0^{\,3}=1^3+2^3=1+8=9$

となり、$r_0=\sqrt[3]{9}$ が得られます。電卓をたたくと、$r_0=2.08$ と出ます。

$r_0=2.08$、$r_1=1$、$r_2=2$
先ほどの形と比べてみましょう
  
iphoneの場合(OSによりますが)、電卓を横にすると「関数電卓」に
9を押してから、赤の $\sqrt[3]{x}$ を押すと $\sqrt[3]{9}$ の計算
(関数電卓は新入生全員に配布します。講習会もあります。)
ちなみに、なぜ電卓をたたくと答えが出るのかというと、大学で習う「テイラー展開」というものが背景にあります。展開と言えば、$(1+x)^2=1+2x+x^2$ といったものですね。このように、関数を$x,\ x^2,\,x^3,\,\cdots$ にばらして「分かりやすい、計算しやすい」形にすることをテイラー展開と言います。テイラー展開は、本学では1年次の後期に勉強します。


他にも自分で試してみると面白いと思います。$r_1=1$、$r_2=3$ とするとどうなるでしょうか。同じように、計算と図をかいてみましょう。さらに片方の出口を大きくしていくと、どうなっていくでしょうか。

実際の血管を観察した研究によると、2乗でも4乗でもなく、3乗に近い値であることが分かっています。私たちの体に、$r_0^{\,3}=r_1^{\,3}+r_2^{\,3}$ という「三立方の定理」が隠れていて、生命を維持してくれていると考えると面白いかもしれませんね。 


 

困ったら具体例で実験! 数学を勉強するときのコツです

数学で困ったときは、このように具体的な数で地道に考えてみると分かることがあります。最初から文字式の計算だけで(本当の意味で)理解できる人は少ないです。初めて3乗則の式 $r_0^{\,3}=r_1^{\,3}+r_2^{\,3}$ だけを見たときと、具体例を扱った今、理解度が違うのではないでしょうか。

 

中学生、高校生がこの記事を読んでいるとしたら、新しい公式が出てきたら、とりあえず数を代入して実験してみると良いでしょう。

公式はすぐに役立ちますが、忘れてすぐに役立たなくなります。公式暗記を繰り返して(定期テストで一瞬点は取れるものの、模試では)成績がなかなか上がらない…そんな経験がある人も多いのではないでしょうか。

一方で、数の代入実験で得られた経験は、地道で少し手間?はかかるものの、忘れにくく、身になります。体験って大切です。同じような「考え方」を応用できるメリットもあります。ぜひ、意識してやってみてください。


 

 

 付 録  血管の最適分岐構造の導き方

エネルギーを最小に

半径 $r$、長さ $\ell$ の血管を考えましょう。この血管内を流れる流量を $f$ とします(単位時間当たりの血液の体積)。

血管で消費されるエネルギーは血液を流すためのエネルギー(機械的エネルギー)と血液を新鮮に保つためのエネルギー(化学的エネルギー)のふたつがあります。 このふたつのエネルギーの和 $E$ を考えて、これを最小にする構造を最適なものと考えます。

$E=$(流すエネルギー)$+$(保つエネルギー)

 

長さ $\ell$ と流量 $f$ を一定にして、半径 $r$ を変化させてみます。

流すエネルギー:血液の粘度の高さから、半径 $r$ が小さいと、摩擦抵抗が高くなります。同じ流量 $f$ を流すためには、流速を上げて流すエネルギーを大きくする必要があります。逆に、半径 $r$ が大きくなると、摩擦抵抗が小さくなり、流すエネルギーも小さくなります。反比例のような関係ですね。

保つエネルギー:血液を新鮮で活動的に保っておくためにエネルギーが必要です。血液の量が多いほど維持が大変ですので、エネルギーは血液量に比例すると考えられます。単純に、半径 $r$ が大きいときは、血液も多く、保つエネルギーは大きくなります。半径 $r$ が小さいときは、血液は少なく、保つエネルギーは小さくなります。

血液を流すためのエネルギーと血液を保つためのエネルギーの和 $E$ が、半径がどのようなとき最小になるかを計算で導きます。

 


エネルギーを半径の式で

それぞれのエネルギーを半径 $r$ の式で表すことを考えます。

保つエネルギー:計算が簡単な方の保つエネルギーから。血液量 $V$ に比例することから、比例定数を $k$ とすれば、(保つエネルギー)$=kV$ となります。体積は $V=$(底面積)$\times$(高さ)$=\pi r^2\times \ell$ ですので、

(保つエネルギー)$=\ kV=k\pi r^2\ell$

となります。半径 $r$ の式で表すことができました。ちゃんと半径 $r$ を大きくするとエネルギーが大きくなる式になっていますね。

流すエネルギー:続いて、流すエネルギーは、血管の入口と出口の圧力差と血液の流量の掛け算になります。

(流すエネルギー)$=$(圧力差)$\times$(血液流量)$=$ $\Delta p\times f$

$\Delta p$ は圧力差を表します。デルタ $\Delta$ は Differrence(差)のDで、$\Delta p$ は $p$ の差と読めばOKです。上の式は、圧力差があるほど、流量が多いほど、血液を流すエネルギーが必要だ、と読めます。

ハーゲン・ポアズイユの法則:流量 $f$ と半径 $r$ には次のような関係があります(本学では3年次の実験で登場)。 

流量 $f=\dfrac{\pi}{\,8\mu\,}\dfrac{\,\Delta p\,}{\ell}\,r^4$

なんだか難しそう!と思うかもしれませんが、ひとつひとつ見ていけば大丈夫です。$\mu$ はねばねば具合(粘性係数)です。ねばねば具合が大きくなると、分母が大きくなって、流量 $f$ が小さくなります。ねばねばすると流れにくい、と読んでおけば良いでしょう。$\pi/8\mu$ は定数ですので、今はあまり気にしなくて良いです。

大事なところは、流量 $f$ が半径 $r$ の4乗に比例していることです。半径が大きくなると流量は多くなる訳ですが、4乗に比例するということは、たとえば、半径が2倍になると2の4乗で流量は16倍になるということです。半径が2倍なら流量も2倍どころか、16倍にも増えるのですね。

ハーゲン・ポアズイユの式を $\Delta p$ について解いて、代入すると次のようになります。

(流すエネルギー)$=\Delta p\times f=\dfrac{\,8\mu f^2\ell\,}{\pi r^4}$ 

 

以上より、エネルギーの和は

$E=\dfrac{\,8\mu f^2\ell\,}{\pi r^4}+k\pi r^2 \ell$

となります。文字は多いですが、半径 $r$ に注目すれば、$1/r^4+r^2$ の形になっています。

 

 

半径がいくつのときエネルギーの和が最小に?(少し計算あり)

あとは、半径がいくつのとき、エネルギーの和 $E$ が最小になるかです。ここで微分の出番です。山の谷のように最小になるときは、グラフの接線の傾きはゼロになります。微分によって接線の傾きを求めることができますので、微分 $=0$ を解けば何か結論が出るはずです。グラフがかける人はかいてみると理解が深まるでしょう。

計算してみると、$f=c\times r^3$ という関係式が導かれます($c$ は定数)。

 

少し復習:微分は傾きです。たとえば、$y=2x$ を微分すると $y^{\prime}=2$ です。変に公式を使うのではなく、これは「直線 $y=2x$ の傾きは $2$ です(1進むと、2上がる)」と答えただけの話と考えましょう。 

直線以外になると計算する必要はありますが、定数乗の場合は、$(x^2)^{\prime}=2x$、$(x^3)^{\prime}=3x^2$ と同様にできます。たとえは、$1/x^2$ の微分は $1/2x$ ではなく、$1/x^2=x^{-2}$ として、$(1/x^2)^{\prime}=(x^{-2})^{\prime}=-2x^{-2-1}=-2/x^3$ となります。

 

エネルギーの和は $E=\frac{\,8\mu f^2\ell\,}{\pi}\,r^{-4}+k\pi \ell \,r^2 $ と書けるので、微分すると

 $\dfrac{\,dE\,}{dr}=\dfrac{\,8\mu f^2\ell\,}{\pi}\,(-4r^{-4-1})+k\pi \ell \cdot 2r $

となります。$dE/dr$ は$E$ を $r$ で微分するという意味です($r$ を変化させたとき、どのくらい $E$ が変かするか?)。難しく考えずに、$E^{\prime}$ と思って問題ありません。

ここで、$\dfrac{\,dE\,}{dr}=0$(傾きがゼロ)としてみましょう。$f$ と $r$ に注目して整理していくと、$\dfrac{\,f^2\,}{r^6}=\dfrac{\,k\pi^2\,}{16\mu}$ となります(少し紙で計算してみましょう)。これから、$\dfrac{f}{\,r^3\,}=\dfrac{\,\pi\,}{4}\sqrt{\dfrac{k}{\,\mu\,}}$(一定)が得られます。書き換えることで、$f=c\times r^3$ が得られます(定数部分を $c$ とおきました)。

 


 

「血管の3乗則」まであと一歩!

入口の流量を $f_0$、分岐した出口の流量を $f_1$、$f_2$ とします。入口と出口の流量は同じはずですので、

$f_0=f_1+f_2$

が成り立つことが分かると思います。上の計算結果から、$f_0=c\,r_0^{\,3}$、$f_1=c\,r_1^{\,3}$、$f_2=c\,r_2^{\,3}$ となります(定数 $c$ は同じ!)。これを代入すれば、

$c\,r_0^{\,3}=c\,r_1^{\,3}+c\,r_2^{\,3}$

両辺 $c$ で割って、

$r_0^{\,3}=r_1^{\,3}+r_2^{\,3}$

これで「血管の3乗則」が得られました。流量 $f$ を半径 $r$ の式に表すことさえできれば、あとは $f_0=f_1+f_2$ から出てくる訳ですね。

 

全体を良く見返してみると、流すエネルギーの4乗と保つエネルギーの2乗が効いて、3乗が出てきています。今回は半径に注目しましたが、分岐の角度についても考察ができたりします。

血管の「カタチ」に興味がある人は、文献・ネットを調べてみたり、下記の参考書に当たってみると良いでしょう。


 【参考書】

  • 伊能教夫『生物機械工学:数理モデルで生物の不思議に迫る』コロナ社(第4章:血管の分岐)



おわりに 


生物と数学の結びつき、いかがでしたでしょうか。

高校までは、国語、数学、英語、物理、化学、生物など、バラバラに勉強する時間がほとんどだと思います。いわば、手だけ、足だけを筋トレをしている状態です。

大学では、分野関係なく知識が結びつきます。いわば、手足を使ってスポーツをしている訳です。

「知識の使い方」を学んで、知識を使えるような頭を育てること、これが大学で学ぶことの意味のひとつだと思います。何を専攻して学ぶかは自由です。知識を使うことは教養と言っても良いでしょう。


この記事で、少しでも学問に興味を持つ人が増えたら嬉しいです。今後も「数学の使い方」を紹介できればと思っています。



【関連ブログ記事】

 #大学院 #数理生物学研究室 #自然科学コース

大学院の授業では、今回紹介した「血管の3乗則」を扱いました。流体力学における「ハーゲン・ポアズイユの法則」の勉強も。

 

2025年4月22日火曜日

仙台うみの杜水族館の「深海ナイト水族館」に出展しました! 深海魚の触れ合い体験、深海魚ガチャ、透明骨格標本の展示など


3月15日(土)、仙台うみの杜水族館で開催された「深海ナイト水族館」に、地域水産利用学研究室(鈴木英勝教授)が出展しました。3年連続での出展で、今年は研究室の4年生6名が参加しました。

子供たちが深海魚にタッチ!
 

深海魚の触れ合い体験コーナーでは、サメガレイ、アカドンコ、ココノホシギンザメの実物を展示し、来場者の方に触ってもらいました。学生が深海魚の生態などの説明を加えるなどして対応しました。

また、無料の深海魚ガチャ、深海魚の透明骨格標本、深海魚で作成したプラスチックの展示なども行いました。プラスチックは卒業研究で作成された生分解性プラスチックで、微生物の働きで分解されて自然に還る性質を持っているものです。

研究室の4年生が来場者の方に説明


仙台うみの杜水族館の発表によると、「深海ナイト水族館」の来場者は約700名とのこと。

来館者の方は、普段では見ること触れることのない、深海魚の標本に触れる体験を楽しみました。子供たちにとっては、貴重な体験となったことでしょう。

ココノホシギンザメ

アカドンコ

サメガレイ




無料の深海魚ガチャも人気!

鈴木研究室では、毎年、ガチャガチャ大会を来館者向けに開催しています。今年は、次の商品をプレゼントしました。

  • ユメカサゴの透明骨格標本
  • アニサキスをグリセリンに閉じ込めたボールペン
  • 寄生虫アニサキスを樹脂に封じ込めた特製ストラップ
  • 深海魚のオニヒゲとムネダラのウロコのキーホルダー

ガチャガチャの商品

アニサキスペン

深海魚や未利用魚の食品化、深海魚の薬品・サプリメントへの応用、環境に優しいプラスチック作成など、深海生物の多様な利用方法についても紹介しました。

来館者の中には毎年この企画に来られている方や、新入生として生物科学科に入学される方(3月時点)、在学生、そして本学OB・OBの方も来られ、興味深く出展ブースを見学していました。


 

参加した4年生のコメント
久保田 悠真 さん
今回、仙台うみの杜水族館で開催された深海ナイトでは、ココノホシギンザメやサメガレイ、アカドンコの触れ合い体験で実際に触ったり、来場者の方々に名前や生態の特徴を説明したりと、貴重な体験ができました。

鳥山 蒼太郎 さん
私はガチャガチャの係をやりました。子供たちにコインを渡したら、ありがとうと言ってくれたり、その子の保護者の方が微笑んでくれたりと、嬉しい気持ちになりました。忙しかったですが、様々な人達と触れ合う良い体験になりました。

及川 雪水 さん
イベントでは、生き物に触れることができる展示を担当しました。開館直後から多くの方々に立ち寄っていただけて、とても嬉しかったです。同時に、深海の生き物に興味を持っている人が多いことを肌で感じました。

桑高 颯良 さん
イベントは大盛況!特に当研究室のガチャガチャは大人気で、お子さんたちが列を作 って楽しんでいただけたので良かったです。参加できてとても嬉しく、次回もぜひ参加したいと感じました。

板野 陽菜 さん
想像していたよりも多くのお客さんに参加していただき、幅広い年代の方に深海魚の魅力、面白さを伝えられるお手伝いができたので良かったです。また機会があれば参加してみたいと思いました。

黒澤 修 さん
実際に水族館を訪れたお客様に骨格標本の作り方や仕組み、研究室での研究内容などを分かりやすく伝えることができたのではないかと感じています。特に、大学のプレゼン発表の授業で身に付けた簡潔に伝える力や、小学生向けに伝える力を発揮できたのではないかと感じています。また、水族館のスタッフの方や研究室のメンバーなどと協力してイベントの設営を行い、コミュニケーションやチームワークなどを主体的に行えたのではないかと考えています。
地域水産利用学研究室のメンバー



【リンク】仙台うみの杜水族館のホームページ

 

【関連ブログ記事】

 

#地域水産利用学研究室 #海洋環境・生物コース #深海魚の紹介

 

2025年4月16日水曜日

採択率11%の狭き門を突破! ベントス研の大学院生の研究が水産無脊椎動物研究所の研究助成課題に選ばれました

 

海洋ベントス学研究室に所属する大学院修士課程1年の高橋 陽大さんが、公益財団法人 水産無脊椎動物研究所の「2025年度育成研究助成」の助成対象者に選ばれました。

 

水産無脊椎動物研究所の育成研究助成は、昆虫類を除く水棲無脊椎動物の形態・発生・生理・分類・系統・生態・行動・水産などに関するフィールドでの生物学的な調査研究を行っている大学院生の研究を2年間継続して支援する研究助成制度です。

大学院生が応募できる研究助成制度は限られていますが、その中でも、水産無脊椎動物研究所の育成研究助成は大学院生の研究を2年間継続して支援するという数少ない研究助成制度です。

今回の育成研究助成の申請件数は27件で、そのうち3件が採択されています。採択率は11%であり、高橋さんは狭き門を突破して採択に至りました。2025年度の研究助成課題一覧


昨年度はベントス研の大学院生2名(小田さん、大見川さん)が公益財団法人日本科学協会の笹川科学研究助成に採択され、研究助成に応募した経緯について紹介しました。

 

 


研究室配属から採択に至るまでの活動

202310月:研究室配属直後の授業でクロベンケイ探し
身近なキャンパス周辺にもクロベンケイガニが
たくさん生息していることを学びました

3年後期

  • 2023年10月 研究室に配属
  • 2023年11月 研究に対する熱意と大学院への進学を表明
  • 2023年12月 卒業研究のテーマが決定、ベントス研で2ヶ月に1回実施している金華山調査に初参加
  • 2024年1月 松島湾コケゴカイ調査を開始(これ以降毎月、7・8月は月2回実施)

4年前期

  • 2024年5月 東京港野鳥公園(東京都)や宮城県レッドリストの干潟調査に参加
  • 2024年6月 環境省モニタリングサイト1000干潟調査の松川浦サイト(福島県)の調査に参加
  • 2024年7月 大学院修士課程の学内推薦入学試験を受験し合格
  • 2024年8月 牡鹿半島ビジターセンターの夏休み自由研究企画「縁の下のちからもち、ふしぎな海のいきもの ベントスのヒミツを探ろう」にスタッフとして参加、仙台うみの杜水族館で学芸員実習
  • 2024年9月 島根で行われたベントス学会でポスター発表。久々子湖(福井県)で調査を行う

4年後期

  • 2024年10月 2026大学案内の巻頭特集のモデルに選出される
  • 2024年11月 大学院で活発な研究活動を実施するために研究助成の申請を決断
  • 2024年12月 1ヶ月かけて水産無脊椎動物研究所 育成研究助成の申請書を作成し、提出
  • 2025年1月 卒業研究の追い込み
  • 2025年2月 卒業研究口頭発表会、ポスター発表会で卒業研究の成果を発表
  • 2025年3月 有珠湾(北海道)でコケゴカイ調査を行う。札幌で行われた生態学会でポスター発表。水産無脊椎動物研究所 育成研究助成の採択決定
  • 2025年4月 大学院進学


2024年1月から松島湾のコケゴカイ調査を開始。

大学院進学の意向があったため、一足先に卒業研究に着手しました。初回の調査は吹雪に見舞われ大苦戦。雨の日も雪の日も夏の暑い日も毎月地道に調査を継続しました。

 

2024年5月:ベントスの同定作業中の様子
南三陸高校 自然科学部との合同の
志津川湾松原干潟の調査に参加

2024年8月:イベントスタッフとして参加
牡鹿半島ビジターセンターの夏休み自由研究企画
「縁の下のちからもち、ふしぎな海のいきもの ベントスのヒミツを探ろう」


2024年5月以降、毎月の松島湾コケゴカイ調査だけではなく、様々な調査に参加して干潟の環境や生態系に関する見識を深めました。

2025年3月には北海道有珠湾のコケゴカイ北限個体群の調査も行い、研究テーマの幅を広げました。

 

2024年9月:ベントス学会(島根)でポスター発表

2025年3月:生態学会(札幌)でポスター発表


大学案内の表紙に!
巻頭特集のインタビュー記事にも登場しています

大学案内はこちら(デジタルパンフレット)



採択された研究課題の内容も簡単にご紹介します。

 

「干潟の普通種コケゴカイの謎に迫る:生活史・繁殖生態・分類の再検討」
コケゴカイのサイズを測定する高橋さん
コケゴカイは日本に広く分布する多毛類(ゴカイの仲間)で、各地の干潟で優占して出現することから、日本の干潟の代表種ともいえます。

しかし、干潟という身近な環境に数多く生息していながらも、これまで研究対象として扱われることが少なく、まだまだ分からないことの多い生物でもあります。このような干潟の代表種に関する知見の不足は、干潟の生態系を理解する上で大きなピースが欠けている状態だといえるでしょう。
コケゴカイ
今回の研究課題では、文献調査と情報収集、そして観察によって得た知識をもとに、コケゴカイの生活史・繁殖生態・分類に従来の知見とは異なる「謎」の部分があることを提示し、これらの再検討を行う研究計画を立案しました。

これから実施する研究ですので詳細は伏せますが、コケゴカイのような普通種の中にまだこれほど大きな「未知」が残っていたのかという部分には意外性があり、独自の着想に基づく仮説を見出したこと、そしてその真相を確かめようとしていることに今回の研究の意義と新規性があるといえます。



指導教員:阿部博和准教授のコメント

高橋陽大さんは日本三景の一つとして有名な海沿いの町 松島で生まれ育ち、幼少のころから地元の海で海洋生物とふれあってきたそうです。そんな高橋さんでも松島湾にコケゴカイがたくさん生息していることは知らなかったようで(知っていたらびっくりですが)、研究室に配属されてコケゴカイの話をするとすぐに興味を示してくれました。

コケゴカイの研究は地元の海を知ることにもつながるということで卒業研究のテーマとして選択し、まだ3年生の時期である2024年1月から調査を開始しました。毎月の定期的な調査とその後のサンプル処理にはかなりの労力が求められますが、研究室のメンバーの力も借りながら根気強く研究に取り組んでくれています。

地道な努力から得られた成果は、4年生のうちに2度も学会で発表を行っており、強い熱意と意思で自ら進んで研究に取り組む姿が印象的な学生です。今回の水産無脊椎動物研究所 育成研究助成の採択は、これまでの高橋さんの努力が認められたようで、そばで見てきた私としても大変嬉しく思っております。

高橋さんはもともとおとなしい性格の学生でしたが、これまでの研究活動や学会発表を通して、自己表現やコミュニケーションをはじめとした様々な力を大きく成長させてくれました。2年間の育成研究助成の支援を受け、今後はますます研究の幅を広げて自分の思い描いた研究を納得のいくものに仕上げてくれることを期待するとともに、また大きな成長を見せてくれることを楽しみにしていたいと思います。



【リンク】


 【関連ブログ記事】

#大学院 #海洋ベントス学研究室 #海洋生物・環境コース