懐かしのセミナー室にて |
6月のある日。中学校の先生をしている卒業生が遊びに来てくれました。
北角田中学校教諭の今園椋太さんです(令和4年度卒業、福島県出身、数理生物学研究室)。
生物科学科では、世の中の流れと逆行して? 以前と比べて教員を目指す学生が増える傾向にあります。
そこで、地域を支える「未来の先生」に現場の声を伝えるべく、教員2年目の今園さんにインタビューしてみました。
生徒や同僚、他の学校の先生と一緒に
初任は2年生の担任を持ちました。慌ただしかったものの、生徒から笑顔や元気さをもらいながら1年間を駆け抜けました。
最初の頃は、出席簿書きや学級の生徒とのこまめなコミュニケーションなど、担任の仕事に追われ、教材研究を進めることができず時間だけが過ぎていきました。
しかし、すべてを自分でどうにかしようとするのではなく、生徒たちや同僚の先生に協力をお願いすることで余裕が生まれて、やりがいを感じるようになってきました。
授業作りも最初は指導書を見るばかりで、板書が多い面白みのない授業だったかもしれません。
そんな中、他の小中学校の先生たちと授業を見て検討する研修会に参加する機会がありました(年3~4回)。それから、1人1台タブレットの有効な活用の仕方や、生徒主体での授業作りが何となくできるようになってきました。
生徒主体の授業作りという視点で見えてきたのは、生徒一人一人のポテンシャルの高さや個性でした。
久しぶりの母校 ペデストリアンデッキ(2階のデッキ部分)が 変わったのを見て少しびっくり |
「怒る」と「叱る」の違い
夏休み中に同僚の先生から「自分の中でここだけは譲らない部分を決めて学級経営する」と教えてもらいました。
それからは怒るのではなく、生徒たちに自分の思いを伝えるようにしました。
何人かはそこから心を開いてくれるようになり、保護者の方との連携が取れ始めた気がしました。
毎日やることに追われて大変ではありますが、しっかりと生徒を見て、向き合い、自分の思いを伝えるのは大切なのだと学びました。大げさでもいいので生徒を褒めるのはすごく大切だとも気付きました。
予想以上に大変だったのは、席替えと部活動指導。
席替えは年5回くらい行いましたが、人間関係で考慮すべきことが増えていき、大変でした。そうならないためにも普段からの学級経営や生徒を良く見てこまめに声をかけることと、問題は小さいうちに察知・対処することが大切になると感じました。
部活は地域移行が進み、部活動指導員の方に入っていただいたので、いくらかは楽になりました。ただ、放課後に仕事を始められる時間が遅くなるという点でつらい部分がありました。
現在1年生が教職の勉強を行っている場所にて |
1年目はあっという間
同じタイミングで教員になった佐藤裕介君(宮城県出身、矢本第一中教諭、細胞生物学研究室)とは何回か電話で話はしましたが、残念ながらお互い忙しくてあまり話をすることができませんでした。
それでも同じ職業で働く友達がいるというのは精神的に助けになりました。
1年目は初任者研修も多く、あっという間に過ぎました。
冷静になって考えると授業力も上げなければいけませんが、働き方の改善のためにも学級経営の力もつけなければいけない、常に気を抜けない仕事なのだと今は感じています。
「生物科学科×人間教育学科」で手厚い対策
生物科学科では、私の指導教員でもあった渡辺先生が独自に主催している「教職セミナー」に参加して勉強を続けました。平行して、人間教育学科で独自に行っている講座にも参加していました。
1次試験の対策は、なかなか1人ではやる気になれません。生物科学科の方では理科を中心に、集中できる環境で勉強をすることができました(※教職セミナーでは、物理の勉強会、地学の勉強会、直前対策講座、模擬授業、面接・集団討議の練習などを幅広く行っています)。
人間教育学科では、実際に教育現場で活躍されていた先生方がたくさんいらっしゃって、手厚く面接練習をしていただきました。教育法規の勉強も継続して行いました。
学年を超えて、学び合い (教職セミナーの風景) |
4年間をとおして、同じ目標を持つ学生たちと切磋琢磨しながら試験対策を行うことができました。
アルバイト・ 授業・研究室での思い出
大学時代はアルバイトで家庭教師と塾講師をしていました。
一人一人に合わせた問題の難易度設定や時間設定などは、個に応じた指導を現場でも行わなければいけないので生かすことができています。
研究室のプレゼン大会で 「伝える力」を鍛えました |
大学の授業で印象に残っているのは、教職志望の仲間と受けた授業と数理生物学研究室でのセミナーです。
教職志望の仲間で受けた授業は、少人数ということもあり気軽に先生に質問ができたのでとても楽しく受けることができました。
研究室のセミナーでは、卒業研究のために新しい数学を勉強したり、論文を読み解いたりと新しいことの連続でした。
脳をフル回転させて考える経験は久しくしていなかったので、学ぶことの楽しさを再認識できる有意義な時間でした。
執筆した卒業論文の一部 「クモの巣形と頭の向き:採餌行動の数理モデルによる解析」 |
この学ぶことを楽しいと再認識できた経験を、是非、学校でも生かせるようにしていきたいです。
ここぞというときに頑張る経験を
大学4年の頃は周りが内定をもらう中、決まるのも遅く一発勝負ということもあり、とても不安でした。
そこを耐えて教職セミナーで仲間と切磋琢磨した経験や、その先に掴んだ合格の喜びは何にも代えがたいものです。是非、目指すことを辞めないで頑張ってほしいと思います。
チームISUで切磋琢磨 卒業生を交えた集団討議の練習に参加 |
教職以外を目標としている学生さんも、社会に出てからは、最初はきっと忙しすぎて頑張り方を思い出す機会などないと思います。
自分の人生を楽しく充実したものにするために、何でもいいので頭を使う経験、ここぞというときに頑張る経験は今のうちにたくさん積んでおくと良いと思います。
【関連ブログ記事】
- ニュース専修2023年2月号[PDF] には、今園さんへのインタビュー記事が掲載「教員採用試験合格の目標を達成」