海洋ベントス学研究室の大学院修士2年の大山雄太郎です。
私は、9/9~9/12に東北大学の青葉山新キャンパスで開催された「2025年日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会」に参加してきました。また、大会初日の「ベントス学会若手の会」の企画・運営も行いましたので、大会の様子について報告いたします。
ベントス学会はベントスに関する知識・情報の交換を通じて、研究者間の交流を深め、ベントス研究の総合的発展に寄与することを目的とする学会で、毎年、日本プランクトン学会と合同で大会を開催しています。
石巻専修大学からは海洋ベントス学研究室の大学院生5名と4年生4名,海洋浮遊生物学研究室の大学院生1名と研究室配属前の生物科学科3年生1名の計11名が参加し、大学院生6名と4年生1名が研究発表を行いました。
初日(9/9)は公開シンポジウム「日本の海産外来種の現在~アンケート調査結果と最新研究から」が開催されました。公開シンポジウムでは本学教員の阿部博和准教授が「多毛類の外来種の現状」という題で講演を行いました。
| 阿部博和准教授の講演「多毛類の外来種の現状」 |
公開シンポジウムのあとは、ベントス学会とプランクトン学会のそれぞれで若手の会が開催されました。
ベントス学会の若手の会はベントス研の学生が世話人を務め、会の企画と運営を行いました。学会が始まる何か月も前からどんな若手の会にしたいのか、開催場所やプログラムなどを一から話し合い、参加した方々に楽しんでもらえるような会にできるように試行錯誤しながら検討を進めました。
当日は会場の設営から食事・飲み物の準備、司会進行など様々な業務あり大変な部分もありましたが、参加者の方々から「とても楽しかった」と笑顔で言ってもらえ、世話人として大満足の若手の会となりました。
2日目(9/10)は学生会員の発表日で、ベントス学会側では3名がポスター発表を、プランクトン学会側では1名が口頭発表を行いました。
発表初日ということで、自分たちのポスター発表をどれだけ聞きに来てくれるか不安でしたが、いざ始まるとどの発表も絶えず人が集まっていました。口頭発表はポスター発表のわいわいとしたお祭りのような雰囲気とは対照的に落ち着いた雰囲気で行われましたが、雰囲気にのまれることなく研究成果を発表することができました。
また、自分の研究発表を行うだけではなく、他大学の学生の発表を聞いたり積極的に質問をしたりすることで、意見交換や交流を深めることもできました。
| 小田晴翔(ベントス研 修士2年) 「室内および野外におけるクロベンケイガニの 社会行動の観察」(ポスター発表) |
| 大山雄太郎(ベントス研 修士2年) 「金華山島のニホンザルにおける海岸利用頻度と 海藻類の利用可能性の関係」(ポスター発表) |
| 小林真緒(ベントス研 修士2年) 「Heteromasutus属多毛類における 主要系統の分類学的検討」(ポスター発表) |
| 畠山紘一(プランクトン研 修士2年) 「宮城県北部沿岸域における 下痢性貝毒原因藻Dinophysis属の消長原因 ―特にMesodiniumとの量的関係について―」(口頭発表) |
夜には仙台のアーカンジェル迎賓館で懇親会が開かれました。
宮城のおいしいお酒や食事をとりながら、学生・教員の垣根を越え、ベントスとプランクトンの学会員が入り混じって交流を深めることが出来ました。発表中とは打って変わってリラックスした雰囲気で会話ができ、楽しい時間を過ごすことが出来ました。
| 懇親会会場のアーカンジェル迎賓館 |
| ベントス学会員によるバンド演奏 特別研究員としてベントス研に 在籍していたことのある小林元樹さんがドラムを担当 演奏の様子はこちら(YouTube) |
3日目(9/11)は前日に引き続き学生会員の発表がありました。懇親会の翌日ということで、会場の緊張感もやわらいだ雰囲気があり、2日目よりも活発な意見交換が行われていたように感じました。
この日、石巻専修大学からはベントス学会側で2名が口頭発表、1名がポスター発表を行いました。学会初参加の学部生はもちろん、何度も学会での発表を経験している大学院生も発表直前まで練習と修正を繰り返し、研究内容がはっきりと伝わるような発表を心がけました。
| 大見川遥(ベントス研 修士2年) 「イソコツブムシ類の球体化機能および 刺激に対する反応性の検証」(口頭発表) |
| 高橋陽大(ベントス研 修士1年) 初めての学会口頭発表 「干潟の普通種が未記載種? コケゴカイの分類学的再検討」(口頭発表) |
| 甲地由樹(ベントス研 学部4年) 初めての学会発表 「汽水性多毛類ヤマトスピオ隠蔽種2種の 地理的分布の検討」(ポスター発表) |
4日目(9/12)は一般会員による口頭発表と学生優秀発表賞の授賞式がありました。
ベテラン研究者たちの発表は内容もさることながら、どの発表も貫禄と余裕があり、これから自分たちが目指すべき発表のお手本として良い目標となりました。この日は石巻専修大学からは太田尚志教授が発表を行いました。
学生優秀発表賞の授賞式では、なんと私のポスター発表が選出されました。
名前を呼ばれたときはうれしさよりも驚きが強く、壇上でも呆然としてしまいましたが、発表を聞いてくれた方や懇親会で話した方などにお祝いの言葉をいただくうちに徐々に賞をいただいた実感がわきました。
うれしさと同時に私の研究にご協力いただいた研究室のメンバーや、調査地である金華山島で様々な便宜を図ってくれた船会社や黄金山神社の職員の方々など、研究に携わっていただいた方々への感謝の気持ちがあふれてきました。
今回いただいた賞に恥じないよう、今後も研究活動に励んでいきたいと強く思いました。
学会と聞くと、敷居が高く、学生のうちから参加なんかできないと考えてしまうかもしれません。ですが、実際は学生こそ参加することに大きな価値があるように感じました。
学会では自分の研究を発表するだけでなく、多分野の専門家の方と交流を深めることが出来ます。様々な意見を聞くことで、物事に関する解釈を広げ、柔軟な対応や多角的な視点を身に着けることができます。これらの能力は今後の大学生活や研究活動に生かせるだけでなく、就職後にも役に立ってくれると私は考えています。
今年は研究室配属前の学部3年生の参加もあり、徐々に学会には誰だって参加していいんだという意識が浸透してきたように感じます。この流れに乗って、ぜひ皆さんも学会に積極的に参加してみてください!
ベントス研の甲地由樹さん(4年生)は今回が初の学会発表でした。初めて学会で発表を行った経験についてコメントをいただきました。
当日は多くの方に発表を聞いていただき、研究を発展させるためのアドバイスをいただくことができました。今後はいただいたアドバイスを整理し、研究方法や考察を深めていきたいです。
今回の学会を通して学んだことは、人との繋がりの大切さです。研究というのは個人での実験や解析が多いですが、サンプルを提供していただいたり、情報共有をしたりと複数人の力が結集して成果になっていると改めて気づきました。
私の研究は、サンプルを提供いただいたり、調査にご協力いただいたりと多くの方に支えられて進めることができています。今回の学会では、まだサンプルが得られていない地域で採集できそうな場所を教えていただくなど、ありがたい情報を多数いただくことができました。
年齢に関係なく研究相談をできたり、近況報告をしたりと、ベントス研究に携わる人達が全員でベントス研究を盛り上げていこうという雰囲気を感じました。また、若手の会や発表終了後の毎日の集いでは、他大学の学生の方々と進路や趣味など研究以外のこともお話ができ、とても恵まれている環境だと感じました。
この学会期間中に様々な方とお会いし、これまでにない環境に身を置いたことで、研究に対する新しいエネルギーを得ることができました。学会でのご縁を今後も大事にしていきたいです。
学会発表に向けて、ポスター作成やデータ解析など経験のないことに苦労したこともありました。しかし、興味深い研究結果に辿り着いた時や、結果から得られる考察を導いた時に、研究の面白さを知ることができました。
学会は準備の段階から始まっていて、学会の終了後は発表を振り返って自分の研究と向き合える特別な機会となりました。今後も研究の意義を考えながら前向きな姿勢で研究を進めていきたいと思います。
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- 【理工学研究科】海洋ベントス学研究室の大学院生が日本ベントス学会のポスター賞を受賞しました 大山さんのコメントも掲載
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