海洋ベントス学研究室4年の甲地由樹です(写真前方、左から3番目)。
私たち海洋ベントス学研究室は、7月21日に南三陸町の総合体育館「ベイサイドアリーナ」で開催された「南三陸子ども自然史ワークショップ」に参加し、独自のプログラムの企画・運営を行いました。
本ワークショップは南三陸地域にある自然を学べるプログラムをテーマにし、自然を知ることの入り口を作りたいという開催の意図があります。子供たちと同じ目線で大人も楽しめるプログラムが魅力のイベントです。
ベントス研は今年で3年連続の参加で、昨年に引き続きプログラムの企画と運営を行いました。
今回はベントス研の他に、岩手大学 自然史探偵団さんの動物の「あしあとマグネット」、東北大学 みちのく博物楽団さんの「地層ジオラマ」、東北大学 野鳥の会さんの「一緒にやろうよ!バードウォッチング!」などのプログラムが行われました。
海洋ベントス学研究室が企画したのは「めざせ!ベントスマスター!」というプログラムです。
この企画はベントス(海の底に生息する生物)の魅力を知って欲しいという思いから始まり、企画を通してどんなところにどんなベントスがいるのかを子供たち自らの手で探して知ることで、海の自然に興味を持つきっかけを作りたいという目的がありました。
このプログラムは干潟や磯などの自然が再現された室内フィールド内にイラストで描かれたベントスが隠されており、屋外に出ずとも生物採集体験ができるのが特徴です。
干潟や磯が再現された室内フィールド |
見つけたベントスはビンゴカードに記録していき、ビンゴが完成したら景品としてベントスシールをプレゼントしました。
ベントスビンゴカード |
景品のベントスシール |
子供たちの様子を見ていると、最初は戸惑いながらも、いろいろな石をひっくり返してみたり、隙間を覗いてみたりと次第に手や足を動かすようになり、最終的には各エリアを隅々まで探し回るほど夢中になっていました。
1つビンゴができても25マス全部埋めたい!とベントス探しに熱中になる子もいれば 、見つけたベントスを自慢げに見せてくれる子もいて、楽しんでいる姿がとても印象的でした。
今回のワークショップを振り返ると、子供たちと同じ目線になって考えることの重要性を実感しました。
説明の仕方やベントスをフィールドに隠す仕組みなどを考える際に、どうすれば興味を持ってもらえるのか、ベントスが隠れている場所のヒントをどこまで教えていいのかなど、表現の仕方も考えながら実行できたため、私たち自身もワークショップを通して勉強することができました。
干潟に形成されたベントスの巣穴の再現 巣穴の中身はどんなベントス? |
U字状の棲管の両端が干潟から 突き出たツバサゴカイの棲管 |
Y字状のベントスの巣穴の再現 扉を開くとアナジャコの姿が セジロムラサキエビも巣穴内に共生しています |
海辺の岩の再現 マガキや海藻類(緑藻と紅藻) が付着しています |
室内にフィールドを作るというとても大掛かりな作業でしたが、ベントス研メンバーで意見交換を大切にしていました。
段ボールや新聞紙などを用いた岩やベントスの巣穴の製作や、ベントスを知らない学生の協力のもと行ったデモンストレーションを通して、ビンゴの仕組みやベントスを見つける難易度の改善点を反映させていくといった試行錯誤を繰り返しながら、納得できるものを作り上げることができたことを嬉しく思いました。
子供たちだけではなく他のワークショップのスタッフの方も興味を持ってくださり、子供も大人も楽しめるプログラムになったのではないかと考えています。
今回のワークショップを通して、ベントスやベントスが生息する海の自然に興味を持ってくれる人が一人でも増えることを期待しています。
「めざせ!ベントスマスター!」の企画・運営スタッフの中心となった、ベントス研4年生メンバー7名からのコメント
今回、初めて南三陸町ワークショップに参加させていただきましたが、子ども達の好奇心や活発な姿勢に驚かされました。
私の所属しているベントス研究室では冒頭でもある通り、「めざせ!ベントスマスター」を題に、磯や干潟、河川のフィールドを室内に再現し、海の生き物や環境の魅力を学んでいただけるようなプログラムを研究室の学生みんなで作成しました。私はその中で磯場を担当し、子どもたちへ磯やそこに住む生き物の魅力について説明しました。
また、子どもたちの安全を配慮しつつ、あまり生き物を見つけられていない子どもにはヒントを出すなど活動を支援しました。その際、子どもたちが夢中になって小さなベントスを探し、「見つけた!」と喜ぶ姿やビンゴを完成させた瞬間の輝く表情がとても印象に残っています。
こうした体験を通じて、子どもたちが自然や環境に対する関心を深め、海の生き物や自然環境を大切にしてくれたら嬉しいです。今後も研究室の活動や地域のイベントを通して、子どもたちが夢中になれるような体験の場づくりに貢献していきたいと考えています。
私は、今回のワークショップで磯・砂浜ゾーンの製作に携わりました。
準備期間には主に岩作りや海藻作りを担当し、安全面やリアルさを意識して製作に励みました。本物に似せて作ることがとても難しかったですが、実際に色々と試作をしながら皆で力を合わせて取り組むことができ、できる限りのものが作れたのではないかと思っています。
ワークショップ当日は多くの子供たちに参加いただき、ベントスを見つけて喜ぶ姿を見たときにこれまで準備に取り組んできた成果を実感できました。子供たちがベントスを探すのに苦戦しているときは積極的に声をかけ、できるだけ簡単な言葉でヒントを出すことを意識しました。すると多くの子供たちがビンゴを達成することができ、私も大きなやりがいと達成感を得ることができました。
今回の活動を通して研究室のメンバーと深く関わり、とても充実した時間を過ごすことができました。このような貴重な機会をくださったワークショップの運営スタッフの方々に感謝を申し上げます。今後の研究室の活動も、皆で協力し合いながら頑張っていきたいと思います。
私は「めざせ!ベントスマスター!」プログラムのリーダーという立場でこのワークショップに臨みました。
当初はメンバーをまとめることに難しさを感じていましたが、準備に取り組むみんなの前向きな姿勢や積極的な協力のおかげで「私も頑張ろう」と力をもらうことができました。ベントス研全員の知恵と発想が形になり、ベントスマスターが数多く誕生したこのプログラムでリーダーを務めることができ、とても光栄に思います。
このワークショップは子供たちをはじめ多くの方にベントスを知ってもらう良いきっかけになったと共に、私自身もベントスをさらに勉強し広めていきたいと思う貴重な機会となりました。
今回、私は干潟エリアのステージ作りを担当し、干潟に住むベントス達の住処を段ボールやトイレットペーパーの芯などを用いて作成していきました。
私達が研究しているベントスの魅力を子供達に伝えることが出来るように、面白さと学びを深められる部分の2つを意識して子ども達が遊ぶ仕掛けを作っていきました。この2つの要素を取り入れて作るのは難しく、最初はうまくいくかとても不安でした。しかし、研究室のメンバーと相談していきながら最終的には満足のいくものを作り上げることができました。
当日も、普段あまり関わる機会のない子供たちを相手にうまく接することができるのか不安がありましたが、いざ本番を迎えると、みなベントスに対して興味津々で、子ども達と接する中で自分も楽しんでスタッフの仕事を行うことができました。
私の卒業研究では、一般の方々に対してベントスの魅力を発信していくということも目標の一つにしているので、今回の活動でどうすればベントスの魅力をより伝えられるのかを考える良い機会になりました。
この経験を通して、自分の卒業研究もより良いものにしていきたいと思います。今回のワークショップに参加したスタッフの皆さん、ワークショップに参加してくれた来場者の皆さん貴重な経験をさせて頂き本当にありがとうございました。
私はベントスのイラストを担当しました。
子供たちにベントスへの親しみを持ってもらうため、ベントスのかわいさ、かっこよさ、ユニークさを引き出すようなイラストを目指し、様々な工夫を凝らしました。
最初はどうしても図鑑をそのまま絵にしたような、動きのない、つまらないイラストになってしまいましたが、納得がいかず何度も描きなおしました。親しみを持ってもらうために、目をかっこよく、かわいく描くことでキャラクター性を出すことを意識しました。
また、頭やハサミといった特徴のある部位を実際より大きく描き印象付けしたり、手前に飛び出してくるような構図にしたりと、一枚一枚試行錯誤しながら作成しました。
今回のワークショップでは主に磯・砂浜エリアの製作に携わりました。
準備期間中、磯・砂浜担当のメンバーでうまく時間を合わせられないといった困難もありましたが、それぞれの役割をしっかりと果たしていった結果、当日には良いワークショップ運営が出来たのではないかなと思っています。
準備の終盤には、文芸愛好会のサークルメンバーにも協力していただき、より良いものに仕上げることができたと感じています。協力してくださった皆様には感謝申し上げます。
当日、子供達との接し方に四苦八苦してしまった点は、少々心残りではありますが、少しでも、ほんの少しでも楽しんでもらえたのであればとても嬉しく思います。
今回のワークショップでは、協働の意義や、人との関わりの大切さを学びました。今後においても、学んだことや経験を存分に活かしながら人と関わり、協働し、大きく成長していければと思います。
今回「めざせ!ベントスマスター!」の干潟ゾーンの制作に携わりました。
制作をしていく中で小学生以下の子どもたちをメイン層として、子どもたちが喜ぶギミックを考えることが難しい課題でした。ギミックの面白さだけでなく安全性や、実際の干潟での調査と同じような再現性も考える必要がありました。
長く熟考した分、本番を迎える際は子どもたちが喜んでくれるのかどうか不安と緊張でいっぱいでした。しかし、いざ始まってみると元気な子どもたちが学びながら楽しんでくれている笑顔を見ることができ、大きな達成感を感じることができました。
私も制作していく中で干潟の生物の知識を得ることや、メンバーとの絆を深めることができたと思います。この様な貴重な機会をくださったワークショップの運営スタッフの方々に感謝を申し上げます。今後機会があればブースのスタッフだけでなく、参加者としても参加してみたいと思いました。
10月の大学祭でも教室企画として「めざせ!ベントスマスター!」のリメイク版を準備しています!皆様のお越しを心からお待ちしております!
最後になりましたが、室内フィールドを再現するための舞台装置の作成の過程で、段ボールや新聞紙、トイレットペーパーの芯などの材料集めに多大なるご協力をいただきました清掃員や図書館職員の方々、本学学生の皆さんに厚く御礼申し上げます。
【リンク】
- 第16回 南三陸子ども自然史ワークショップ2025(南三陸ネイチャーセンター友の会)
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