2024年12月4日水曜日

野外調査に尖る研究者、久米准教授へのインタビュー「フィールドそのものが先生」


久米 学(くめ まなぶ)

魚類生態学研究室

准教授 博士(水産科学)

主な担当科目:魚類生態学、水環境学


 

 

今年度(2024年度)から新たに生物科学科に加わった久米准教授に、ご専門のことについて詳しく聞きました。

  石巻専修大学は「多頂点に尖る」が最近のコンセプト。先生にとっての「尖り」は何でしょうか?

私は基本的に面白いと思った研究テーマは何でもやろうとする人です(ただし、後で冷静になった時に、やっぱり無理、ってなりお蔵入りすることが多い)。

そんな私ですが、私の「尖り」を強いて挙げれば、野外調査にこだわっている点でしょうか。

生き物の生活史や生態を明らかにする研究は根気が必要で、時間も掛かります。

そのせいでしょうか、昨今、研究者の中でもフィールドワーカーは減ってきているように思います。

ただし、生き物の生活史や生態は、応用研究の基礎となる重要な知見になります。ですので、敢えて野外調査にこだわった生活史や生態の研究をしています。


 

 

 

  魚類研究の面白さや魅力は何でしょうか?

これは魚類に限った話ではありませんが、野外研究の魅力は、フィールドで見て感じたことが、具体的な数値となり表現できたとき、達成感ではないかと思います。

時には、直感が外れることもありますが、それもそれで私に驚きを与えてくれ、何で違ったのかを考えるのは楽しい作業です.

最近では、ニホンウナギの研究をしていますが、本種の減少要因の1つは河川横断構造物による河川の連続性の喪失だと言われています。

そこで、どのくらいの体サイズ(全長)のニホンウナギが、垂直の落差工を登ることができるのか?という疑問を持ち、実際の河川に赤外線ビデオカメラを設置して調べてみました。

研究をはじめる前の予想では、20~30 cm程度個体が登るのではないかと思っていましたが、予想以上に小さい全長15 cm以下の個体が登っていました。

当初の予想は半分当たり半分外れと言ったところでしたが、そもそも自然界で起こっていることは複雑に要因が絡み合っていて、その予測は非常に難しいものです。

このように予想外のことが起こるところも、野外研究の面白さであり、魅力・醍醐味だと思います。



 

 

  最近、大学ホームページに『 地域そのものが「先生」だ。』というサイトがオープンしました。先生の研究における「先生」は何でしょうか?

調査地(フィールド)そのものが、「先生」と言えるのではないかと思います。

フィールドには様々な学びの要素があって、身近な自然の中で何かを発見する力も、コミュニケーションの力も磨かれる場だと思っています。

私は野外調査を中心に据えて研究しているので、調査をしている最中に、「こんなことできないかな?」とか「これやったらすごい楽しい研究になりそう」とか次の研究に繋がることや、魚の採れ具合や採れてる場所を見ながら「こんな傾向がありそうだな」とか「これが効いてるのでは?」なんて調査結果から言えそうなことを妄想しています。

本当にフィールドって研究に対するインスピレーションを与えてくれるんです。


また私の場合は、川で調査することが多いのですが、地元住民の理解が不可欠になります。

理解を得るためにお話しするのにはコミュニケーション能力が試されますし、必要に応じて誰かに協力を仰ぎながら研究周りのことを調整しなくてはなりません。

今やっている調査の多くは他大学との共同研究になりますので、調査が円滑に進むように共同研究者間(学生も含む)での情報共有も必須です。

つまり、フィールドは大学内の狭いコミュニティーだけではなく、もっと幅の広いコミュニケ―ションの場を提供してくれます。残念ながら現在は石巻にフィールドを持っていないのですが、これから新しい「先生(フィールド)」を見つけたいと思っています。



  卒業研究ではどのようなものを想定していますか?

ニホンウナギやイトヨの野外生態調査と水槽実験を考えています。

今後、対象となる魚種を増やしていきたいと思っています。本年度の卒論生は以下のテーマで研究を行っています。

  • 河川生活期のニホンウナギにおける移動と成長
  • 潮止堰がニホンウナギの遡上に与える影響
  • 淡水性イトヨの繁殖期と水温との関係


 

 

  最後に、学生へのメッセージをお願いします

大学は一方的に教わるところではなく、「自分で学び、考える力を身につけるところ」だと私は思っています。

これは、学業だけではなく、私生活も含めてです。これは高校生までと違うところです。

また、大学生だからこそできる「遊び」も必要です。「遊び」の内容は人それぞれ、旅行という人もいれば、釣りという人もいるでしょう。

自分の中で夢中になれる遊びをぜひ見つけてください。人生、死ぬまでの暇つぶし。

学業も遊びも本気で徹底的に取り組んでこそ、楽しいものになると個人的には思っています。

学業と遊びのメリハリをつけて取り組むことで、皆さんの学生生活が充実したものになることを願っています。


 

 

 

久米研究室のホームページ

 

 

過去に取材された「ウナギ調査」の様子(田中三次郎商店のページ)

※垂直な壁を登るウナギの様子を捉えた動画も掲載

 

 

【関連ブログ記事】 

#海洋生物・環境コース




石巻専修大学パンフレットはこちら

 

 

  多 頂 点 に 尖 る 。

 

海洋生物に尖る。動物に尖る。植物に尖る。

微生物に尖る。数理に尖る。化学に尖る。・・・

 

自分の「 尖 り 」を見つけよう