大学院生の論文2本が、みちのくベントス研究所が発行する雑誌「みちのくベントス」に掲載されました。
みちのくベントス第8号は、 株式会社エコリスのWebサイト から閲覧できます |
小林真緒・佐藤宏樹・阿部博和(2024)宮城県における後鰓類4種(軟体動物門:腹足綱)の記録.みちのくベントス (8): 52–60.
小田晴翔・畠山紘一・阿部拓三・鈴木将太・赤池貴大・阿部博和(2024)宮城県と岩手県から得られた標本および写真に基づく北限記録のウシエビとクマエビ.みちのくベントス (8): 61–69.
後鰓類(こうさいるい)とはいわゆるウミウシ類のことで、ウミウシ類は貝殻が退化した巻貝の仲間です。
ウミウシ類は「海の宝石」とも呼ばれ、色や形は実にさまざま。美しい色彩や模様をもつ種も多く、人気があります。
海洋ベントス学研究室所属の大学院生 小林真緒さんは、2023年11月から2024年2月にかけて宮城県石巻市の雄勝湾で調査を行ったところ、これまで宮城県から記録されたことの無い以下の3種の後鰓類を発見しました。
ジャノメアメフラシ |
ゾウアメフラシ |
クモガタウミウシ |
その後、これらの種の同定や過去の採集記録の文献調査について相談していた共著者の佐藤宏樹さん(東京大学大気海洋研究所の大学院生)から、同じ場所で2023年12月にカメノコフシエラガイを採集したという報告がありました。
カメノコフシエラガイ |
さらに、本学科の海洋浮遊生物学研究室所属の大学院生 畠山紘一さんから、2023年12月に宮城県気仙沼市の唐桑町でジャノメアメフラシが発見されたという情報が寄せられました。
小林真緒さんは、これらの標本に基づく記録と写真記録の情報をまとめ、論文として報告することで、4種を宮城県から初めて正式に記録するとともに、クモガタウミウシの北限記録を宮城県の雄勝湾に更新しました。
干潟調査中の小林真緒さん |
また、ジャノメアメフラシとカメノコフシエラガイは秋田県の男鹿半島、ゾウアメフラシは青森県の陸奥湾が分布の北限となりますが、気仙沼市唐桑町からのジャノメアメフラシの記録と雄勝湾からのゾウアメフラシとカメノコフシエラガイの記録は、それぞれの種の太平洋側における北限記録を更新するものとなりました。
夜の漁港で生き物を探す |
今回宮城県から記録された4種のウミウシ類は、これまでも宮城県に生息していながらも見つかっていなかった可能性もありますが、近年の海水温上昇により太平洋側で分布が北上してきた可能性も考えられます。
生物の分布や地域の生物相の変化を把握するためには、地道なモニタリング調査が不可欠です。
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