2024年5月16日木曜日

生物科学科の卒業生が、牡鹿半島の動物相を報告しました

動物生態学研究室では、2021年より牡鹿半島清崎にある「清崎いこいの森」で哺乳類の生態に関する調査を行っています。

 


調査エリア内に散策路が整備されており、
調査は非常に容易です。



調査エリア内にはため池もあります。
夏になるとイモリがたくさん。


調査中に見つけたニホンテンの糞。
テンは道の真ん中に糞をする習性があるので
(なわばり行動だと考えられています)
サンプリングはとても簡単です。


こちらはキツネの糞。
テンの糞に比べて太く、また表面が白っぽいのが特徴。

ニホンリスが採食したマツ類の果実。
先端だけ齧らずに落とすので、
通称「エビフライ」と呼ばれています。

 
 
センサーカメラで調査

私たちは、動物たちの活動時間を評価するために、この地区の林内にセンサーカメラをセットしています。

カメラに保存された映像をチェックしてみると、お目当ての動物以外にも多くの動物が撮影されることが分かってきました。


森林内にセットしたセンサーカメラ。動物がカメラの前を横切ると、画像や映像を記録できます。カメラの上についているのは雨除けです。



卒業生の成果が論文に

八木澤凌君・阿部聡太君(令和4年度卒業)、そして高橋佑太朗 君(令和5年度卒業)の3人は、2021年から2022年の間に記録されたカメラの映像データに基づいて、清崎の哺乳類相と鳥類相を整理しました。このたび、その成果が博物館の紀要に掲載されました。

八木澤凌君

阿部聡太君

高橋佑太朗君
 

  • 八木澤凌, 高橋佑太朗, 阿部聡太, 太田吉厚, 辻大和 (2024) センサーカメラを用いた宮城県石巻市清崎の哺乳動物相と鳥類相の評価. Humans and Nature 34: 111–117

    *この報告は、兵庫県立博物館のサイトから閲覧できます。

 

記録された動物

調査期間中、私たちはこの地区で24種の動物 (哺乳類: 9種、鳥類: 15種) を記録しました。

ただ、記録された映像の80%以上はニホンジカ (Cervus nippon) のもので、多様度の点では東北地方の他の森林よりも低めでした。

牡鹿半島ではシカの増加が問題になっており、宮城県は積極的な個体数管理を進めています。シカの画像が極端に多い清崎の調査結果は、牡鹿半島のシカ問題を反映したものと言えます。


センサーカメラがとらえた動物たちの一部を紹介しましょう。


ニホンジカ (Cervus nippon) 


ニホンアナグマ (Meles anakuma) 


ニホンテン (Martes melampus) 


ハシボソガラス (Corvus macrorhynchos)


ヒヨドリ (Hypsipetes amaurotis)

 

 

牡鹿半島の動物相

高密度で生息するシカの採食圧は、植物の量や種多様性の低下をもたらし、それが植物に食べ物や生活場所を依存する昆虫・齧歯類(げっ歯類)の密度や多様性を低下させると考えられます。私たちは、シカの影響が

①シカ → ②植物 → ③昆虫/げっ歯類 → ④鳥類/肉食獣

という流れで森林内の動物相に影響したのではないか、と予想しています。この可能性を検証するために、今後より詳細な調査を続けていきます。 

 

 

シカが増加すると、車との接触事故も増加します。
こちらは調査地に向かう途中に発見した轢死体。


牡鹿半島で植生調査を行う学生たち。
動物生態学研究室では、
牡鹿半島のシカ問題にチャレンジする学生を募集しています。



「地元の大学の学生が主役になり、地域の問題に主体的に取り組む」

これこそが、私たちが望む研究のあり方です。 研究室HPはこちら

 

 

 

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#動物生態学研究室 #卒業生 #動物・植物コース