ニホンテン(動物園の飼育個体) |
動物生態学研究室の阿部聡太さん(R4年度卒業生)は、在学中に牡鹿半島に生息するニホンテン(Martes melampus)の食べ物について調査しました。
テンは雑食性・果食性の中型肉食獣で、季節により食べ物の構成が変わることは報告されていましたが、食物選択性のメカニズムは不明瞭でした。
- Abe S., Tsuji Y. (accepted) Feeding strategy of wild Japanese martens (Martes melampus) in northern Japan. Zool. Sci.
テンの糞 鉛筆くらいの太さの長細い形状をしています テンは道の真ん中に糞をする習性があるため、 サンプリングは比較的簡単(『見せ糞』と言います) |
牡鹿半島でサンプリングする阿部さん 月に一度の頻度で現地を訪問しました |
阿部さんは、牡鹿半島のニホンテンの食物構成の時間的変化を、主要食物(果物・哺乳類・節足動物)の現存量と関連づけて評価しました。
研究室で保管していた過去の糞と合わせ、3年分のデータを分析した結果、
- テンの食物が果実・節足動物・哺乳類の3つで構成されていること
- 糞中の果実の割合が、節足動物と哺乳類の現存量が少ない時期に増えること
がわかりました。このことから、テンは代替食物の多寡に合わせて果実への依存度を柔軟に変える戦略(dietaery-switching strategy)をとっていることが明らかになりました。
人間で例えて言うと、「今日の夕飯のおかず、肉がないなら魚でもいい」という感じです。
本研究で明らかになったテンの食性の長期変化は、ネズミなど被食者の個体群サイズや、テンに利用される果実の種子散布など、テンが果たす生態学的な役割にも関係します。
森林生態系における種間相互作用を評価するためには、単にテンの食性を調べるだけでなく、それに影響する森林環境を定量的に評価することが大切です。
阿部さんに、在学中の思い出を聞きました
シアトルへの留学や学生団体の広報活動、そして卒業研究が思い出に残っています。卒業研究は大変でしたが、今ではいい思い出です。僕は厳しくも優しい辻先生の下で研究を行った事により、【考える力・まとめる力・伝える力】が身につきました。研究をした経験のおかげで、今の広告の仕事に活かせています。
【リンク】
- 【国際交流】シアトル滞在レポート(3)(大学HP) 阿部さんのレポートが掲載されています
- 動物生態学研究室のホームページ
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