2026年6月24日水曜日

タヌキのしたたかな生き残り戦略を世界で初めて解明!―国際誌に研究成果を掲載―

 

卒業生の伊藤孝亮さんは、身近な野生動物であるタヌキの採食戦略を世界で初めて明らかにしました。今回は、論文の概要と伊藤さんからのメッセージを紹介します。 

イラスト:成田歩さん(本学の助手)
 

人里に暮らすタヌキは、漢字では「けものへん」に「里」と書く「狸」で表されるくらい、私たち日本人にとって身近な存在です。しかし、その一方で野生動物としてのタヌキの生態、とくに採食行動には未解明な点が多いのが現状です。

伊藤さんの研究はタヌキの採食行動を詳細に分析し、食物環境と関連づけることにより、彼らの柔軟で戦略的な採食行動を明らかにしました。

 

研究成果は、国際学術誌 European Journal of Wildlife Research において2026年3月10日付で オンライン公開 されています。



【論文の概要】

  1. タヌキの食性と食物の現存量との関連性を分析して、彼らの採食戦略を明らかにしようと試みました。
  2. 2020年から2024年の間に宮城県石巻市で採取したタヌキの糞(n = 138)を分析し、食物構成を評価しました。いっぽう、フェノロジー調査とトラップ調査を実施して、各月の果実と昆虫の現存量を評価しました。
  3. タヌキの食性は、主に果実(面積比60%)、昆虫(22%)、葉(11%)の3カテゴリで構成されていました(図1)。①果実の採食割合は春・秋・冬に高い、②昆虫の採食割合は夏に高い、③セキツイ動物(哺乳類・鳥類)と人工物の採食割合は冬・春に高い、という季節性がみられました。
  4. 果実の現存量とセキツイ動物の採食割合および食物多様性との間には、負の相関関係がみられました(図2)。
    → 果実が少ない季節にはネズミ・鳥を含む多様な食物を利用する!
  5. 昆虫の現存量と昆虫類の採食割合には、正の相関関係がみられました(図3)。
    → 昆虫が多い季節には昆虫を食べる!
  6. 昆虫の現存量と人工物の採食割合には、負の相関関係がみられました(図4)。
    → 昆虫が少ない季節にはゴミ漁りをする!
  7. タヌキは周囲の環境に応じて自分の食べ物を切り替える、日和見的な摂食戦略を採っていました。


【この研究の意義】

1. タヌキが自らの食物環境に応じて主食を切り替えている仕組みを世界で初めて明らかにした点。

「食物に対する柔軟性」を持ったことが、タヌキが都市環境を含む多様な生息環境で生き延びることができた理由と考えられます。



2. タヌキの採食行動が、多様な生物(動物・植物)と結びついていることを明らかにした点。

この点は、タヌキの生態学的役割(例:種子散布など)や同所的な動物や植物との種間相互作用(捕食者と被食者の関係など)を理解する上でも重要です。


 

図1. 糞分析に基づく、宮城県石巻市のタヌキの食性の月変化(平均値±標準偏差)。

a) 果実、b) 昆虫、c) 人工物、d) 葉、e) 哺乳類、f) 鳥類、g) その他。果実の採食割合は春・秋・冬に、昆虫の採食割合は夏、セキツイ動物と人工物の採食割合は冬・春に高い。

 

図2. 果実の現存量(フェノロジー点数)と哺乳類の採食割合の関係。果実が少ない季節に、哺乳類の採食割合が増加する。


図3. 昆虫の現存量(トラップの平均捕獲個体数)と昆虫の採食割合の関係。昆虫が多い季節に、昆虫の採食割合が増加する。


図4. 昆虫の現存量(トラップの平均捕獲個体数)と人工物(ゴミ)の採食割合の関係。昆虫が少ない季節に、ゴミの採食割合が増加する。




伊藤さんからのメッセージ


  論文公開に当たって

まさか自分の卒業研究がこのような形で、しかもこんなにも早く公開されることになるとは思ってもいなかったのでとても嬉しいです!

卒業後に辻先生から度々論文公開への進捗のメッセージが来るたびに、とても待ち遠しく感じていました(笑)。

論文公開に当たり研究に協力してくださった辻先生をはじめ、当時の研究室のメンバーに感謝しています。

 

  学生時代の思い出は?

やはり3年生後期から大学卒業までの研究室での出来事全てが一番の思い出です。

当時は最低でも週に1回は演習林へ行きサンプルを集め、研究室に帰ったら分析・解析等を行うという作業をひたすら繰り返していました。今思うとこんな作業よく1年も続けられたなあと思います..。

ただ、この作業を継続できたのも当時の研究室メンバーとの日常会話やしょうもない雑談が良い息抜きになっていたんだと思います。

時には雑談だけで1日過ぎたこともありましたが、おかげで仕事と遊びのメリハリが身につきました(笑)!

 

  現在の仕事は?大学での学びが今の仕事にどう役立っている?

現在はペットショップで働いています。

野生動物とは真逆で無関係に思うかもしれませんが、研究室で培ってきた、「報告・連絡・相談」や「コミュニケーション能力」といった力が接客業である今の仕事にすごく役に立っています。

就職して約1年が経ち、それでもまだまだ覚えることが多くて大変ですが、研究室で鍛えた能力を発揮して今後も頑張ります!

 

  後輩へのメッセージ

これからの大学生活や将来何かをしようとするときに一番重要なのは「準備」と「コミュニケーション」だと思っています。

就職活動も内定をもらうために試験勉強・資料作成などの準備が必要ですし、面接では試験官とのコミュニケーションが必要です。

卒業研究も自分のやりたい研究を行うにあたって何が必要か、分析はどのように行うのかなどの準備や、研究室のメンバーとのコミュニケーションを通して研究のクオリティが上がっていくと思います。

もちろん残りの大学生活を悔いの残らないように遊び尽くすためにもこの2点は必須です!

これから様々な出来事があると思いますが、この2点を頭に入れて生活してみてください。皆さんのこれからの活躍を期待しています!

 
 

【リンク】

  • 参考映像1 参考映像2 石巻専修大学演習林で撮影されたタヌキ(動物生態学研究室インスタグラム)

 

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#卒業生   

伊藤さんは「卒業研究ポスター発表会」においてポスター賞を受賞