卒業生の尾張奈々子さんと4年生の加藤ちあきさん(いずれも植物発生遺伝学研究室)らの論文が、国際学術誌Acta Oecologicaに2025年11月14日付でオンライン公開されました。
論文の概要と、尾張さん・加藤さんによるコメントを紹介します。
Nanako Owari, Akihiro Ono, Chiaki Kato, Mayu Nakagawa, Yamato Tsuji (2025) Long-term variation in aspects of endozoochorous seed dispersal by wild Japanese martens (Martes melampus) in northern Japan. Acta Oecologica 129: 104136
論文の概要
宮城県石巻市の森林に生息する野生ニホンテン(Martes melampus)の種子散布特性を4年間(2021-2024年)調査し、その長期的変動を評価しました。
調査期間中に収集した399個の糞から、少なくとも24種の植物の種子が検出されましたが、頻繁に出てくる樹種はヒサカキ、サクラ属、ヤマグワ、サルナシ、エノキの5樹種に限られていました。種子のほとんどは無傷の状態でした。
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| 清崎で採集されたテンの糞に含まれていた種子植物の構成 高木・低木・つる植物と多様な植物の種子を散布していることが分かった |
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| 牡鹿半島で採集したテンの糞 |
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| 種子が多く含まれている |
糞一個あたりの種子数の平均(±SD)は87 ± 133(レンジ:1-734個)でした。種子の出現率、糞一個当たりの種子数は顕著な年次変動を示し、これは果実生産の年次変動と、果実以外の食物(昆虫・哺乳類)への依存の程度の変化に起因すると考えられました。
対照的に、単一の糞便サンプル中に種子が検出された植物種の平均(±SD)数は1.3 ± 0.5(レンジ:1-4)で、年変動は見られませんでした。これは、テンが摂取した食物の腸内通過時間の短さ(平均で12時間程度)に起因すると考えられます。
補足:SDはバラツキの指標である標準偏差(Standard Deviation)、レンジは範囲(range)の意味。
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| テンの糞からの種子の a) 出現率、b) 糞一個あたりの植物種数、c) 種子数の年変化 (*は有意差ありを意味する) 年により、種子散布者としての働きが変化した |
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| テンの糞から出てきた a) ヒサカキ、b) サクラ類、c) ヤマザクラ、 d) サルナシ、e) エノキの 種子の個数の年変化(2021年~2024年) サルナシの個数は、年により大きく変化した |
私たちの研究の結果は、テンによる種子散布の量的要素が固定的ではなく、状況に依存して変化することを意味しています。種子散布の有効性をより正確に評価するには長期的なデータ収集が必要といえます。
本論文で分析を担当した尾張奈々子さんと加藤ちあきさんに、この研究を振り返ってもらいました。
季節によって糞から出てくる種子の種類が違うため、糞の見た目や洗う過程で内容物を比較するのが楽しかったです。昆虫や哺乳類の毛が多い時期と、植物の種子が多い時期があった事も面白いなと思いました。無事論文になって、1年間うんち沢山洗った甲斐がありました!

私は卒業研究でテンとハクビシンの糞から出てきた種子の発芽実験を行なっています。その一環として、糞から出てくる種子の同定も行いました。論文に自分のデータが使われるということで、研究作業に大きな責任があることを実感しました。最初は一つ一つの作業に苦戦し、辛い日々でしたが、回数を重ねる度に効率が良くなり、種子を見ただけで種名が分かるようになる等の自身の成長をが感じました。また、新しい種子が糞から出てきた時は、この果実を食べるのかっとテンの新しい一面を発見したように思えて嬉しかったです。まだ研究は続行中なので、最後までめげずに頑張っていきたいと思います!
石巻かほく紙で連載中の『いしのまき動物記』にも、加藤さんと中川先生(植物発生遺伝学)が登場しています!
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