2026年9月4日金曜日

「偶然の発見」が論文に 博士1年・大見川遥さんがフグノクチヤドリの北限記録更新と新宿主を報告

 

大学院博士後期課程1年(D1)の大見川 遥さんが修士課程在籍時に執筆した論文が、日本甲殻類学会が発行する「Cancer」に掲載されました。

本研究では、フグ類の口内に寄生する等脚類「フグノクチヤドリ」の北限記録の更新に加え、クサフグと雑種フグを新たな宿主として初めて報告。干潟でのフィールド調査から始まった「偶然の発見→SNSでのバズり→論文執筆」のストーリーを紹介します。

クサフグの口内から顔をのぞかせるウオノエ類
 

偶然の発見 

フグノクチヤドリは、フグ類の口内に寄生するウオノエ類として2021年に国内から新種記載された等脚類です。

2025年5月に気仙沼の舞根湾で行った調査の際に採集されたクサフグを飼育していたところ、口内にウオノエ類が寄生していることに気が付きました。

2023年5月の舞根湾調査の様子
大学院修士課程を修了した小林真緒さん(写真左)が
泥に埋まっているクサフグを採集


この時に偶然の産物として誕生した「フグ人間」は
SNSにて4万いいねを獲得しました
ベントス研Xを見る
 

SNSでのバズりから論文執筆へ 

SNSでこの投稿が広まったことで、有識者の方から2021年に記載されたばかりのフグノクチヤドリではないかという情報が寄せられました。

魚類の口内に寄生するウオノエ類のほとんどは舌側に寄生するのに対し、フグノクチヤドリなど一部の種では口蓋側(口の中の上側)にさかさまに寄生すること、フグ類に寄生することが報告されているウオノエ類は限られていることから、候補として絞り込まれました。

そこで、 クサフグから採集されたウオノエ類の形態を精査し、DNAの解析も行ったところ、フグノクチヤドリの特徴と一致することが確認されました。

実態顕微鏡を用いてフグノクチヤドリの形態観察を行う大見川さん


その後、気仙沼市の舞根湾や石巻市の鮫浦湾から幼生、幼体、雄成体、雌成体の様々なステージの追加標本が採集され、クサフグだけではなくゴマフグとショウサイフグの雑種個体(雑種フグ)も宿主として利用していることや、これまで報告されていなかった形態の種内変異や成長に伴う形態的特徴の変化が確認されました。

論文では、これらの研究成果がまとめられ、この報告により、フグノクチヤドリの北限記録が更新されるとともにクサフグと雑種フグがフグノクチヤドリの新宿主として記録されました。

 

 

大見川遥さんのコメント

本論文では、フグ類の口腔内に寄生する等脚類フグノクチヤドリについて、新産地や新宿主、形態変異などを報告しました。

卒業研究で等脚類の研究を始めて以降、魚類に寄生するウオノエ類に対しても関心を持っていたため、魚類を採集した際にはウオノエ類が寄生していないかを確認していました。フグ類に寄生するウオノエ類はあまり知られていなかったため、干潟調査で採集したクサフグにウオノエ類が寄生しているのを見つけたときには興奮したのを憶えています。

卒業研究や大学院の研究と並行して調べていくうちに、そのウオノエ類がフグノクチヤドリであること、クサフグが本種の新宿主に当たること、宮城県からの採集記録は本種の新産地記録であり北限記録の更新になることが分かり、論文執筆に着手しました。

その後、追加個体が相次いで得られたことで、新宿主や新産地の報告にとどまらず、形態の種内変異や成長段階に伴う形態変化についても議論することができました。その結果、当初予定していたよりも内容を充実させた形で論文化することができました。

フグノクチヤドリの初めての発見から投稿までに2年間温めた論文です。ぜひご一読いただけると嬉しいです。

日本生態学会東北地区大会で
優秀賞を受賞したときの様子

「行動観察による海産等脚類の球体化の
捕食回避機能および乾燥耐性機能の評価」 

 

石巻専修大学・生物科学科では、フィールド調査を行っている研究室が多くあります。今後も、本学だからこその「偶然の発見」を期待しています。

 


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  • 海洋ベントス学研究室(阿部博和准教授)  HP   X  Instagram

 

 

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