2025年11月28日金曜日

11月の記事まとめ

2027年4月、生物科学科に「生物資源コース」が誕生!

学内での養蜂、未利用魚の有効活用など、
生物資源の応用に取り組んでいます


生物科学科ブログでは、学生・教員の様子から授業・研究の内容まで、学部と大学院の日常風景をお伝えしています。

11月は1年次の動物実習、3年次の潜水実習、大学院生による学会参加レポート(ポスター賞受賞!)、卒業生の論文紹介などの記事をアップしました。

 


 




ヒヨケザルのトイレ動画がバズっているようです

 

 

【河北新報オンライン】 

  

    記事をまとめたページはこちら(タグごと、月ごとで記事をピックアップしています。月ごとの一覧は #記事まとめ) 

 































































 

大学ホームページ記事からのピックアップ

 




地域水産利用学研究室(鈴木英勝教授)関連

 
 

動物生態学研究室(辻大和教授)関連 

骨格標本愛好会のメンバーがワークショップで解説

 

  • ニュース専修2025年11月号[PDF] 大学祭での生物科学科サイエンスフェス、海洋ベントス学研究室のブース、わくわくチャレンジ(算数トライアスロン+サイエンスフェス・ツアー)が取り上げられています。また、専修大学で行われた「いしのまき祭り」に参加した生物科学科の学生の様子も掲載。

 


大学案内パンフレット撮影中!

調査風景だったり

海洋生物ラボでの観察の様子だったり

研究の様子を撮影
少しフィールドに出ての撮影
撮影協力:佐藤造船所
佐藤造船所は、1年次の実習地のすぐ近く
大きな設備があり、見ごたえがありました


皆さま、ご協力ありがとうございます!

 

2025年11月25日火曜日

卒業生が糞虫類によるタネの二次散布機能を解明! サル・糞虫・植物がつなぐ生命のバトン

「サルと糞虫の二次散布と生態学」より
(成田あむ)

生物科学科の卒業生で、現在、本学理工学部の助手を務めている成田歩さんの論文が、国際学術誌 Acta Oecologica 2025101日付でオンライン公開されました。

サルのフンに集まってきた糞虫類


掲載サイトはこちら

Ayumu Narita, Tsubasa Yamaguchi, Maisa Sekizawa, Yamato Tsuji (2025) Evaluation of secondary seed dispersal by dung beetles in a temperate region. Acta Oecologica 129: 10412

筆頭著者の成田歩さん(2024. 2. 24
 

 

論文の概要

糞食性の甲虫(糞虫類)は、動物のフンが排泄されるとその匂いを嗅ぎつけて集まってきます。

彼らはフンを食料にするために、穴を掘って埋めます。糞虫類の活動で、フンがすみやかに処理されるので、不快なにおいが長時間漂うことはありません。糞虫類には「自然界の分解者」としての役割があるのです。


多くの動物は果実を好んで食べます。採食の際、果肉と同時にタネも飲み込み、移動先でフンとともに排泄します(飲み込み型の種子散布)。植物にとって、動物は自分のタネを離れた場所に運んでくれる、ありがたい存在です。

ニホンザルが採食する多様な果実
 

成田さんは、糞虫類がフンを埋めるとき、フンの中にあるタネも一緒に埋めることにより、一次散布者である動物とともに植物の生育に貢献しているのではないか、と考えました。

この点を明らかにするため、宮城県石巻市金華山島のニホンザル (Macaca fuscata) の糞に集まる糞虫類を対象に、タネの埋め込み能力を評価することにしました。

ニホンザル (Macaca fuscata

2022年10月から23年9月にかけて、サルのフンに含まれるタネを分析するとともに、落とし穴トラップで糞虫類を捕獲して各月の活動性を評価しました。さらに、野外・室内実験により糞虫類がフンをどれだけの深さに埋めるのかも評価しました。

ニホンザルのフンと、フンから出てきたタネ 

実験の結果、センチコガネ類 (Phelotrupes spp.) やゴホンダイコクコガネ (Copris acutidens) といった大型の糞虫類は、タネを0.5~5cmの深さに埋めていることが分かりました。

室内実験で評価した、糞虫類によるタネの埋め込みの深さ
多くの月で、0.5-5 cmの埋め込みの割合が高い


埋められることで、タネは捕食者(げっ歯類、ニホンジカ)や地表面の乾燥などを避けることができ、発芽直後の生育に好適な条件を獲得できます。ゆえに、金華山の大型糞虫類は、サルによって運ばれたタネの二次的な散布に貢献していると考えられます。

室内実験用の装置


従来の種子散布研究では、一次散布者である果実食者の機能に注目が集まっていましたが、本研究は、温帯地域における種子散布において、糞虫類も深く関与していることを明らかにしました。今後、他地域でのデータの蓄積が望まれます。

 金華山島で捕獲された糞虫類の個体数
春から夏にかけてはセンチコガネ類とエンマコガネ類が、
秋はダイコクコガネの捕獲個体数が多い


オオセンチコガネ(2025)
イラスト:成田歩さん



成田歩さんのコメント
私はかつてから生物多様性や動物生態学(ある動物とその他の生物または環境とのかかわり・つながり)に強い関心を持っていました。

中でもサルの仲間が大好きで、所属研究室が決まる三年生の夏頃、「金華山でニホンザルに関する生態学的な研究がしたい!」と辻先生に相談したところ、「それなら、サルの糞を食べる糞虫の研究してみたら?」との提案を受けました。

「"フンチュウ"って……フンコロガシとかですか?」そんな糞虫についての知識がほとんどゼロの状態で私の卒業研究はスタートしましたが、図鑑や論文を読み、彼らのことを知れば知るほど「糞虫×サル×植物」の関係性に夢中になり、自分の研究テーマが一番面白い!とまで思うようになりました。

そんな私の研究が、今回国際誌に掲載され、種子散布研究の発展にささやかな貢献をしたことにこと大きな喜びを感じています。
イラストレーター「成田あむ」としても活躍!
石巻かほくの「いしのまき動物記」のイラストを担当中
 
 
 サルと糞虫の二次散布と生態学
 
 ミヤマダイコクコガネ発見小話
 

2025年11月18日火曜日

生理学合同セミナーを開催中! 菌類、動物、植物の視点で、生物科学の基礎から応用をつなぐ

 

今年度の後期より研究対象を超えて、生理学的研究を行っている3つの研究室で合同セミナーを始めました。

 

参加教員は宮嵜先生、中川先生、そして私、奈良の3名です。

ヒゲカビの研究でのこれまでの実績はもちろん、講義で「植物生理学」「菌類学」を担当されている宮嵜先生にはこの会の代表になって頂いております。

それぞれ菌類、植物、動物と研究対象は異なりますが、生物科学の基礎から応用をつなぐ領域を研究している同志でもあります。

一歩踏み込んだ内容を熱心に聞いています

 

1回目、2回目は奈良が担当し、今後、論文を読んでいくために必要となる哺乳類の免疫機構の基本を「免疫記憶」を中心に解説しました。

特に2回目は今年のノーベル生理学・医学賞の発表の3日後ということもあり、受賞した研究内容である「制御性T細胞」の働きなどについて(当然、奈良の説明できるレベルで、です)話をしました。

 

3回目の宮嵜先生は「菌類を知るところから始めよう!」というタイトルで、菌類に特有の細胞構造や生活環、人間生活との関わりなど広く解説してくれました。

 

4回目の中川先生は「モデル生物とは モデル植物シロイヌナズナの紹介」と言うタイトルで何故シロイヌナズナが植物のモデル生物として使われているのか、など熱く語ってくれました。

最初は座って話をする中川先生

終了直前には前に出て語る

聴衆からの質問に対話形式でやり取りできるのも授業と違った良い点かと思います。時には半分くらい質疑応答のやり取りになることも。

 

参加者のコメント 
加藤乃愛さん:3年、微生物資源学研究室(武藤清明助教)

普段の講義と比べ一歩踏み込んだ専門的な内容が多いですが、分からない前提で話を進めてくださるので難しい内容でも理解できます。

ノーベル生理学・医学賞の制御性T細胞とは何か、モデル植物についてなどを解説して頂きましたが、テレビの教育番組のようなので気軽に参加できます。

様々な分野に興味がある人には非常に楽しく、貴重な時間になるかと思います。

 

今後、教員がこれまでに出した論文の内容紹介などもしていきます。

それぞれの分野で担当者が「なぜ?」と思い、それをどのように解決して行ったのか、私、奈良も探究学習を楽しんでいます。

静かに耳を傾ける宮嵜先生

参加は自由です。

興味ある学生の皆さんは、時間があれば木曜日の3限に2212教室に足を運んでみて下さい。

 
 

【関連ブログ記事】 

#学生の声 #動物・植物コース #微生物・生命分子コース 

#動物機能組織学研究室 #植物発生遺伝学研究室 #菌類発生生理学研究室

         

2025年11月13日木曜日

2025年日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会参加レポート 海洋ベントス学研究室 大山雄太郎

海洋ベントス学研究室の大学院修士2年の大山雄太郎です。

私は、9/9~9/12に東北大学の青葉山新キャンパスで開催された「2025年日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会」に参加してきました。また、大会初日の「ベントス学会若手の会」の企画・運営も行いましたので、大会の様子について報告いたします。

ベントス学会はベントスに関する知識・情報の交換を通じて、研究者間の交流を深め、ベントス研究の総合的発展に寄与することを目的とする学会で、毎年、日本プランクトン学会と合同で大会を開催しています。

石巻専修大学からは海洋ベントス学研究室の大学院生5名と4年生4名,海洋浮遊生物学研究室の大学院生1名と研究室配属前の生物科学科3年生1名の計11名が参加し、大学院生6名と4年生1名が研究発表を行いました。



初日 「若手の会」を企画・運営

初日(9/9)は公開シンポジウム「日本の海産外来種の現在~アンケート調査結果と最新研究から」が開催されました。公開シンポジウムでは本学教員の阿部博和准教授が「多毛類の外来種の現状」という題で講演を行いました。

阿部博和准教授の講演「多毛類の外来種の現状」

公開シンポジウムのあとは、ベントス学会とプランクトン学会のそれぞれで若手の会が開催されました。

ベントス学会の若手の会はベントス研の学生が世話人を務め、会の企画と運営を行いました。学会が始まる何か月も前からどんな若手の会にしたいのか、開催場所やプログラムなどを一から話し合い、参加した方々に楽しんでもらえるような会にできるように試行錯誤しながら検討を進めました。

当日は会場の設営から食事・飲み物の準備、司会進行など様々な業務あり大変な部分もありましたが、参加者の方々から「とても楽しかった」と笑顔で言ってもらえ、世話人として大満足の若手の会となりました。

若手の会の様子
50名以上の方が参加してくれました




2日目 ポスター発表・懇親会で交流

2日目(9/10)は学生会員の発表日で、ベントス学会側では3名がポスター発表を、プランクトン学会側では1名が口頭発表を行いました。

発表初日ということで、自分たちのポスター発表をどれだけ聞きに来てくれるか不安でしたが、いざ始まるとどの発表も絶えず人が集まっていました。口頭発表はポスター発表のわいわいとしたお祭りのような雰囲気とは対照的に落ち着いた雰囲気で行われましたが、雰囲気にのまれることなく研究成果を発表することができました。

また、自分の研究発表を行うだけではなく、他大学の学生の発表を聞いたり積極的に質問をしたりすることで、意見交換や交流を深めることもできました。

小田晴翔(ベントス研 修士2年)
「室内および野外におけるクロベンケイガニの
社会行動の観察」(ポスター発表)

大山雄太郎(ベントス研 修士2年)
「金華山島のニホンザルにおける海岸利用頻度と
海藻類の利用可能性の関係」(ポスター発表)

小林真緒(ベントス研 修士2年)
「Heteromasutus属多毛類における
主要系統の分類学的検討」(ポスター発表)

畠山紘一(プランクトン研 修士2年)
「宮城県北部沿岸域における
下痢性貝毒原因藻Dinophysis属の消長原因
―特にMesodiniumとの量的関係について―」(口頭発表)

夜には仙台のアーカンジェル迎賓館で懇親会が開かれました。

宮城のおいしいお酒や食事をとりながら、学生・教員の垣根を越え、ベントスとプランクトンの学会員が入り混じって交流を深めることが出来ました。発表中とは打って変わってリラックスした雰囲気で会話ができ、楽しい時間を過ごすことが出来ました。

懇親会会場のアーカンジェル迎賓館


ベントス学会員によるバンド演奏
特別研究員としてベントス研に
在籍していたことのある小林元樹さんがドラムを担当
演奏の様子はこちら(YouTube)




3日目 初めての学会発表をする学部生も

3日目(9/11)は前日に引き続き学生会員の発表がありました。懇親会の翌日ということで、会場の緊張感もやわらいだ雰囲気があり、2日目よりも活発な意見交換が行われていたように感じました。

この日、石巻専修大学からはベントス学会側で2名が口頭発表、1名がポスター発表を行いました。学会初参加の学部生はもちろん、何度も学会での発表を経験している大学院生も発表直前まで練習と修正を繰り返し、研究内容がはっきりと伝わるような発表を心がけました。

大見川遥(ベントス研 修士2年)
「イソコツブムシ類の球体化機能および
刺激に対する反応性の検証」(口頭発表)

高橋陽大(ベントス研 修士1年)
初めての学会口頭発表
「干潟の普通種が未記載種?
コケゴカイの分類学的再検討」(口頭発表)


甲地由樹(ベントス研 学部4年)
初めての学会発表
「汽水性多毛類ヤマトスピオ隠蔽種2種の
地理的分布の検討」(ポスター発表)



4日目 学生優秀発表賞!

4日目(9/12)は一般会員による口頭発表と学生優秀発表賞の授賞式がありました。

ベテラン研究者たちの発表は内容もさることながら、どの発表も貫禄と余裕があり、これから自分たちが目指すべき発表のお手本として良い目標となりました。この日は石巻専修大学からは太田尚志教授が発表を行いました。

太田尚志教授
「ミズクラゲAurelia coeruleaの
各生活史ステージにおける刺胞組成の比較」(口頭発表)



学生優秀発表賞の授賞式では、なんと私のポスター発表が選出されました。

名前を呼ばれたときはうれしさよりも驚きが強く、壇上でも呆然としてしまいましたが、発表を聞いてくれた方や懇親会で話した方などにお祝いの言葉をいただくうちに徐々に賞をいただいた実感がわきました。

うれしさと同時に私の研究にご協力いただいた研究室のメンバーや、調査地である金華山島で様々な便宜を図ってくれた船会社や黄金山神社の職員の方々など、研究に携わっていただいた方々への感謝の気持ちがあふれてきました。

今回いただいた賞に恥じないよう、今後も研究活動に励んでいきたいと強く思いました。


学会と聞くと、敷居が高く、学生のうちから参加なんかできないと考えてしまうかもしれません。ですが、実際は学生こそ参加することに大きな価値があるように感じました。

学会では自分の研究を発表するだけでなく、多分野の専門家の方と交流を深めることが出来ます。様々な意見を聞くことで、物事に関する解釈を広げ、柔軟な対応や多角的な視点を身に着けることができます。これらの能力は今後の大学生活や研究活動に生かせるだけでなく、就職後にも役に立ってくれると私は考えています。

今年は研究室配属前の学部3年生の参加もあり、徐々に学会には誰だって参加していいんだという意識が浸透してきたように感じます。この流れに乗って、ぜひ皆さんも学会に積極的に参加してみてください!

受賞の喜びを表現する大山(私)
看板のベントスイラストは
4年生の甲地由樹さんが作成


ベントス研の甲地由樹さん(4年生)は今回が初の学会発表でした。初めて学会で発表を行った経験についてコメントをいただきました。



甲地さんのコメント

今回の日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会は私が発表者として初めて参加した学会であり、自分の研究を向上させていくための貴重な機会となりました。

この学会では様々なグループの生物を扱っている研究者が集まり、中には私の知らなかった生物の研究発表もありました。いろいろな生物の不思議な生態や面白い研究成果に驚くことばかりでしたが、内容が難しく理解が追い付かない発表もありました。

短時間で情報を処理する力に加え、「発表者が伝えたいことは何なのか」に着目して話の本質を捉えられるような聞き方を身に着ける必要があると感じ、普段のゼミや授業でも心がけたいと思いました。

今回私はポスター発表に申し込み、これまでの研究成果を分かりやすく伝えたいという思いでポスターデザインの改善や発表練習を重ねました。

当日は多くの方に発表を聞いていただき、研究を発展させるためのアドバイスをいただくことができました。今後はいただいたアドバイスを整理し、研究方法や考察を深めていきたいです。

今回の学会を通して学んだことは、人との繋がりの大切さです。研究というのは個人での実験や解析が多いですが、サンプルを提供していただいたり、情報共有をしたりと複数人の力が結集して成果になっていると改めて気づきました。

私の研究は、サンプルを提供いただいたり、調査にご協力いただいたりと多くの方に支えられて進めることができています。今回の学会では、まだサンプルが得られていない地域で採集できそうな場所を教えていただくなど、ありがたい情報を多数いただくことができました。

年齢に関係なく研究相談をできたり、近況報告をしたりと、ベントス研究に携わる人達が全員でベントス研究を盛り上げていこうという雰囲気を感じました。また、若手の会や発表終了後の毎日の集いでは、他大学の学生の方々と進路や趣味など研究以外のこともお話ができ、とても恵まれている環境だと感じました。

この学会期間中に様々な方とお会いし、これまでにない環境に身を置いたことで、研究に対する新しいエネルギーを得ることができました。学会でのご縁を今後も大事にしていきたいです。

無事に発表を終えることができたのは、ご指導いただいた阿部先生や研究室の先輩方、そしてサンプルを提供してくださった方々のおかげです。

学会発表に向けて、ポスター作成やデータ解析など経験のないことに苦労したこともありました。しかし、興味深い研究結果に辿り着いた時や、結果から得られる考察を導いた時に、研究の面白さを知ることができました。

学会は準備の段階から始まっていて、学会の終了後は発表を振り返って自分の研究と向き合える特別な機会となりました。今後も研究の意義を考えながら前向きな姿勢で研究を進めていきたいと思います。




【大学ホームページ関連記事】

調査の様子

 

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