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2025年4月16日水曜日

採択率11%の狭き門を突破! ベントス研の大学院生の研究が水産無脊椎動物研究所の研究助成課題に選ばれました

 

海洋ベントス学研究室に所属する大学院修士課程1年の高橋 陽大さんが、公益財団法人 水産無脊椎動物研究所の「2025年度育成研究助成」の助成対象者に選ばれました。

 

水産無脊椎動物研究所の育成研究助成は、昆虫類を除く水棲無脊椎動物の形態・発生・生理・分類・系統・生態・行動・水産などに関するフィールドでの生物学的な調査研究を行っている大学院生の研究を2年間継続して支援する研究助成制度です。

大学院生が応募できる研究助成制度は限られていますが、その中でも、水産無脊椎動物研究所の育成研究助成は大学院生の研究を2年間継続して支援するという数少ない研究助成制度です。

今回の育成研究助成の申請件数は27件で、そのうち3件が採択されています。採択率は11%であり、高橋さんは狭き門を突破して採択に至りました。2025年度の研究助成課題一覧


昨年度はベントス研の大学院生2名(小田さん、大見川さん)が公益財団法人日本科学協会の笹川科学研究助成に採択され、研究助成に応募した経緯について紹介しました。

 

 


研究室配属から採択に至るまでの活動

202310月:研究室配属直後の授業でクロベンケイ探し
身近なキャンパス周辺にもクロベンケイガニが
たくさん生息していることを学びました

3年後期

  • 2023年10月 研究室に配属
  • 2023年11月 研究に対する熱意と大学院への進学を表明
  • 2023年12月 卒業研究のテーマが決定、ベントス研で2ヶ月に1回実施している金華山調査に初参加
  • 2024年1月 松島湾コケゴカイ調査を開始(これ以降毎月、7・8月は月2回実施)

4年前期

  • 2024年5月 東京港野鳥公園(東京都)や宮城県レッドリストの干潟調査に参加
  • 2024年6月 環境省モニタリングサイト1000干潟調査の松川浦サイト(福島県)の調査に参加
  • 2024年7月 大学院修士課程の学内推薦入学試験を受験し合格
  • 2024年8月 牡鹿半島ビジターセンターの夏休み自由研究企画「縁の下のちからもち、ふしぎな海のいきもの ベントスのヒミツを探ろう」にスタッフとして参加、仙台うみの杜水族館で学芸員実習
  • 2024年9月 島根で行われたベントス学会でポスター発表。久々子湖(福井県)で調査を行う

4年後期

  • 2024年10月 2026大学案内の巻頭特集のモデルに選出される
  • 2024年11月 大学院で活発な研究活動を実施するために研究助成の申請を決断
  • 2024年12月 1ヶ月かけて水産無脊椎動物研究所 育成研究助成の申請書を作成し、提出
  • 2025年1月 卒業研究の追い込み
  • 2025年2月 卒業研究口頭発表会、ポスター発表会で卒業研究の成果を発表
  • 2025年3月 有珠湾(北海道)でコケゴカイ調査を行う。札幌で行われた生態学会でポスター発表。水産無脊椎動物研究所 育成研究助成の採択決定
  • 2025年4月 大学院進学


2024年1月から松島湾のコケゴカイ調査を開始。

大学院進学の意向があったため、一足先に卒業研究に着手しました。初回の調査は吹雪に見舞われ大苦戦。雨の日も雪の日も夏の暑い日も毎月地道に調査を継続しました。

 

2024年5月:ベントスの同定作業中の様子
南三陸高校 自然科学部との合同の
志津川湾松原干潟の調査に参加

2024年8月:イベントスタッフとして参加
牡鹿半島ビジターセンターの夏休み自由研究企画
「縁の下のちからもち、ふしぎな海のいきもの ベントスのヒミツを探ろう」


2024年5月以降、毎月の松島湾コケゴカイ調査だけではなく、様々な調査に参加して干潟の環境や生態系に関する見識を深めました。

2025年3月には北海道有珠湾のコケゴカイ北限個体群の調査も行い、研究テーマの幅を広げました。

 

2024年9月:ベントス学会(島根)でポスター発表

2025年3月:生態学会(札幌)でポスター発表


大学案内の表紙に!
巻頭特集のインタビュー記事にも登場しています

大学案内はこちら(デジタルパンフレット)



採択された研究課題の内容も簡単にご紹介します。

 

「干潟の普通種コケゴカイの謎に迫る:生活史・繁殖生態・分類の再検討」
コケゴカイのサイズを測定する高橋さん
コケゴカイは日本に広く分布する多毛類(ゴカイの仲間)で、各地の干潟で優占して出現することから、日本の干潟の代表種ともいえます。

しかし、干潟という身近な環境に数多く生息していながらも、これまで研究対象として扱われることが少なく、まだまだ分からないことの多い生物でもあります。このような干潟の代表種に関する知見の不足は、干潟の生態系を理解する上で大きなピースが欠けている状態だといえるでしょう。
コケゴカイ
今回の研究課題では、文献調査と情報収集、そして観察によって得た知識をもとに、コケゴカイの生活史・繁殖生態・分類に従来の知見とは異なる「謎」の部分があることを提示し、これらの再検討を行う研究計画を立案しました。

これから実施する研究ですので詳細は伏せますが、コケゴカイのような普通種の中にまだこれほど大きな「未知」が残っていたのかという部分には意外性があり、独自の着想に基づく仮説を見出したこと、そしてその真相を確かめようとしていることに今回の研究の意義と新規性があるといえます。



指導教員:阿部博和准教授のコメント

高橋陽大さんは日本三景の一つとして有名な海沿いの町 松島で生まれ育ち、幼少のころから地元の海で海洋生物とふれあってきたそうです。そんな高橋さんでも松島湾にコケゴカイがたくさん生息していることは知らなかったようで(知っていたらびっくりですが)、研究室に配属されてコケゴカイの話をするとすぐに興味を示してくれました。

コケゴカイの研究は地元の海を知ることにもつながるということで卒業研究のテーマとして選択し、まだ3年生の時期である2024年1月から調査を開始しました。毎月の定期的な調査とその後のサンプル処理にはかなりの労力が求められますが、研究室のメンバーの力も借りながら根気強く研究に取り組んでくれています。

地道な努力から得られた成果は、4年生のうちに2度も学会で発表を行っており、強い熱意と意思で自ら進んで研究に取り組む姿が印象的な学生です。今回の水産無脊椎動物研究所 育成研究助成の採択は、これまでの高橋さんの努力が認められたようで、そばで見てきた私としても大変嬉しく思っております。

高橋さんはもともとおとなしい性格の学生でしたが、これまでの研究活動や学会発表を通して、自己表現やコミュニケーションをはじめとした様々な力を大きく成長させてくれました。2年間の育成研究助成の支援を受け、今後はますます研究の幅を広げて自分の思い描いた研究を納得のいくものに仕上げてくれることを期待するとともに、また大きな成長を見せてくれることを楽しみにしていたいと思います。



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#大学院 #海洋ベントス学研究室 #海洋生物・環境コース